この1年半で得たものを今消化し始めてる

──1年半のアルバム制作期間を経て、バンドとして変わった部分は？

ヤマケン　制作中は作品のことしか考えてなくて、録り終えてから曲以外のことも健さんと話したりして。バンドとはどうあるべきか？みたいなことも話したし、その中で変わった部分はあるんじゃないですかね。制作中はメンバー1人ひとりのモチベーションをいかに上げるかを考えてくれたと思うんですよ。ここ1、2カ月ぐらいでウチはガラッと変わってますね。この1年半で得たものを、今消化し始めてる感じですね。まあ昔よりも背伸びしなくなったんじゃないですかね。カッコつけてもいいと思うけど、カッコつけてもカッコよくならないことを見抜かれたので。今回の歌詞もそうですけど、今自分たちが思ってることを発信することのカッコよさを教えてもらった気がします。発信するからには、その言葉や音楽に対して、責任と説得力がないとダメだということを一番教わったかもしれない。これからはカッコよくなると思うんですけどね。そうならないとマズいですよね。

──等身大で、自分らしさを出すことを学んだと。

ヤマケン　いくら生意気なことを言っても、自分よりでかいことを成し遂げてる人からしたら「ああー、はいはい」みたいな感じじゃないですか。虚勢を張るだけで、お前は何もやってねえじゃん。悔しかったら上がってこい！というふうに俺は受け取ったから。そこで腐るんじゃなくて、今の俺たちでどこまでやれるやってみようと。健さんみたいにたくさんの人を集められるわけじゃないけど、そうじゃないからといって、ブレることはなくなりました。

キクオ　ライブに関しても、ここ最近は記憶にないんですよね。昔は気が散っていたのか考えすぎていたのか、記憶はあったんですけど。今はライブ中にぶん投げたい場所が見えて、そこに向かってひたすら走って終わってみたいな。よりシンプルになったというか、肩肘張らずにやれるようになりましたね。

トノ　最近はライブでありのままを出せてるし、それもあの1年半があったからだなと。バンドでやってる以上、メンバー3人がドシッとしてないとダメだと思うから。9年バンドをやってますけど、そういう意味でもすごく大事な1年半でした。

俺たちが作らなきゃいけないのは「MAKING THE ROAD」

──今作はいろんな感想を持つ人がいるかもしれませんが、1stアルバム「New Unseen Tomorrow」の初期衝動、2ndアルバム「OVERTAKE」のメロディアスな部分、その両作品のよさを踏まえつつ、健さんのエキスが注入された仕上がりですね。

ヤマケン　PIZZAのスタッフと話してるときに、俺たちが作らなきゃいけないのは「MAKING THE ROAD」（1999年に発売されたHi-STANDARDの3rdアルバム）ですからね、と言ったんですよ。

──ヤマケンさんが？

ヤマケン　はい。それぐらいベストなものを作らなきゃいけないと。

──それは「MAKING THE ROAD」みたいな作風ということ？ あるいはあの作品がもたらした影響やセールスということ？

ヤマケン　影響やセールスに関してはそこまで考えてなかったけど、全曲名曲で普通に頭からケツまで何度も聴ける作品は、自分が持ってる音源の中でも「MAKING THE ROAD」は間違いなくトップクラスなんですよ。そういう作品を作らなきゃいけないし作りたいなと思ったし、実際それができたと思います。PIZZA OF DEATHから3ピースのメロディックパンクを出す以上は比べられて当然だし、比べてもらえるなんて願ったり叶ったりみたいなところもあるので。Hi-STANDARDみたいになれるかどうかわからないけど、新しい3ピースのメロディックパンクを作れると思ってます。

キクオ　聴いてた自分の年代もあるけど、「MAKING THE ROAD」はとにかくキラキラしてますからね。

──ああ、そういう印象なんですね。

キクオ　はい。鮮度が落ちないし何度でも聴けるし、ずっとワクワクできる。それが「MAKING THE ROAD」だとするなら、それに近い作品になったかなと。健さんと一緒に音作りをしたことも踏まえて、あの作品に近い鮮度はあるんじゃないですかね。