ナタリー PowerPush - DRADNATS

横山健との出会いが生んだ「俺たちの『MAKING THE ROAD』」

3人が思う「ハイスタ」「横山健」

──今作「MY MIND IS MADE UP」は横山健さんがプロデュースしましたが、DRADNATSにとってHi-STANDARD、横山健さんはどんな存在ですか?

ヤマケン 今までは雲の上の憧れの人でした。ただただすごい人なんだと。いわゆるハイスタキッズでしたしね。今は勝手に兄貴だと思ってます。グチも言えるし、けっこう甘えちゃいますね。

──いつから兄貴的な存在に?

ヤマケン 何かのタイミングで夏に一緒に遊んだことがあったんですよ。歳は全然上だけど、健さんもフランクだし俺も言いたいことが言える。そのときにけっこう弱音を吐いたと思うんですよ。弱音吐きつつ、最終的には強気で終わる姿勢だったと思うけど。それまでは憧れの人だからこそ負けたくない、強気なところを見せつけなきゃいけないと思ってましたからね。今はさすがに構えてないですね。

──キクオさんは?

キクオ 俺の中で健さんは2人いて、話しかけられる隙間を作ってくれる“お兄さん的な健さん”と、バンドを始めた頃に憧れた“ハイスタの横山健”。その人と一緒に仕事ができるなんて夢みたいな話だけどその作業が濃密だったので、遠い存在というよりぶつかっていける人みたいな。メンバーの中でもパート的に健さんと同じギター&ボーカルなので、1人のアーティストとして勉強になることも多くて。健さんはもともとメインボーカルじゃなかったけど、今はど真ん中でギターを弾いて歌ってるし、弾き語りもやってるじゃないですか。コラムでもギター1本で歌って闘えるのがアーティストとして目指すところと書いていて、ああいう人でも日々闘っているんだなと。守るんじゃなく、新しいフィールドに積極的に攻めてる。その姿勢を見ると、同じアーティストとして尊敬できますね。

トノ(Dr)

──トノさんはどうですか?

トノ 自分は高校の頃からHi-STANDARDのビデオを観て育ちましたからね。あの頃から考えれば、健さんと一緒に作品を作れたことはすごいことだけど。当時ビデオで観てた印象の健さんって、自分がやりたいことをただ素直にやってる人なんだろうなと。飾ることもないし、これがカッコいいからやってるだけなんだよって。で、直接会って話すと自分が当時思っていた素直さ、人間臭さを超えるくらいまっすぐな人で。ビデオの印象とまったく同じだったんですよ。それを確認できたのはよかったですね。

──自分のイメージ通りだった?

トノ はい、そこが意外でした(笑)。

健さんと同じ気持ちになれてることがうれかった

──健さんが自身のコラムでDRADNATSのことを書いてましたが、あれを読んでどう思いました?

ヤマケン いやあ、うれしかったですよ。文字にして改めて読むと大事さにも気付くし。あのコラム自体ずっと読んできましたし、それこそまだインターネットじゃなくて冊子だった頃から読んでましたから。オムニバス盤の「The Best New-comer Of The Year」(2009年4月発売)のときにも一度名前を出してくれたけど、俺ら限定で密に書いてくれていたから、すごく見てくれてるんだなと。

──健さんはコラムで「これがオレの遺作になったとしてもかまわない」と書いてましたね。

ヤマケン それはレコーディング後にも直接言われました。

──そうなんですか?

ヤマケン ミックス作業の合間に札幌でBBQ CHICKENSのライブがあったんですよ。もし俺が飛行機事故で死んでもいいと思うくらいのものができたと。

──へえ、そうなんですね。

ヤマケン いやいやいやって話ですけど。

キクオ ちゃんと帰って来ないと困りますみたいな。

ヤマケン まだすべて終わってませんからって(笑)。

キクオ(Vo, G)

キクオ コラムが更新された日が僕らちょうどライブで、打ち上げ前ぐらいだったかな? コラムを読みたいと思ったけど、PIZZAのスタッフから「ちゃんとゆっくり読んだほうがいいよ」と言われて。あとで読むと、ヤマケンと同じで最初はうれしかったの一言でした。ヤマケンが曲を作って、それに対して細かいことを言ってみたいなくだりは……俺は言われたことがなかったので、こういうふうに思ってたんだ、こういうところをちゃんと見てくれてたんだなって思いました。それとメロディックパンクは衰退してるかもしれないけど、この作品が新しいきっかけになってくれたらいいという文章を読んだときに、それに等しい作品が作れたと思ったから。健さんと同じ気持ちになれてることがうれしかったです。そこが一番響きましたね。コラム自体も僕らのために書いてるというより、僕らを知ってもらうために書いてる側面もあって、ちゃんと生い立ちも書いてくれてますからね(笑)。

──結成の年もきちんと調べてる!と。

キクオ そこも踏まえて、漏らすことなく書いてくれたのもうれしくて、身が引き締まりました。

トノ 2人と同じになるけど、いろいろ見てくれてるなって。ほんとガムシャラだったので、自分たちが気付かない部分も書いて残してくれたのはうれしかったですね。

あのコラムで3rdアルバム制作期間が終了した

左からトノ(Dr)、キクオ(Vo, G)、ヤマケン(B, Cho)。

──ヤマケンさんはコラムで「鼻っ柱が強い」と書かれてましたね。あれを読んだときは、申し訳ないけど笑っちゃいました。

ヤマケン なんか、俺がすげえ生意気なやつみたいな……。

全員 ははははは(笑)。

ヤマケン でも俺はあのコラムを読んで、泣きましたよ。

──それはなぜ?

ヤマケン 別にアルバムができたからといって終わりじゃないけど、1年半アルバムの制作期間があって、あのコラムで締まった感がありました。DRADNATSの3rdアルバム制作期間終了みたいな。それでいろいろ思い返して、泣いちゃいました。なんで泣いたんだろ……つらかったから泣いたというより、やっぱりうれしかったからかな。やり切ったという気持ちが強かったかもしれない。もちろん健さんがいなければ絶対できない作品だけど、プロデュースが決まってから、あの人(横山健)の期待に応えたい、PIZZA OF DEATHというレーベルの期待に応えたいと強く思っていたから。ああいうふうにコラムに書いてもらえて、ちょっとでも期待に応えられたのかなって、ホッとして泣いたのかもしれない。売れなくてもいいやと思わないし売れてほしいですけど、やるべきことは全部やったかなと。その達成感と安心感で泣いたのかもしれない。

DRADNATS ニューアルバム「MY MIND IS MADE UP」 / 2014年3月5日発売 / 2300円 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZCA-64
DRADNATS ニューアルバム「MY MIND IS MADE UP」ジャケット
CD収録曲
  1. Bright Star
  2. Footsteps
  3. Sick Of You
  4. Good Morning And Good Night
  5. Day After Day
  6. Sign
  7. My Very First love
  8. Like Flower
  9. Get Our Future
  10. #Summer Days
  11. Way
  12. What's Justice
  13. Your Voice
  14. This Song Is For You And For Me
DRADNATS(どらっどなっつ)

キクオ(Vo, G)、ヤマケン(B, Cho)、トノ(Dr)によるメロディックパンクバンド。2005年の結成以降、精力的なライブ活動を展開し、2006年には早くもアメリカ西海岸ツアーを敢行する。2008年1月には元The Suicide Machinesのギタリスト、ダン・ルカシンスキーがプロデュースしたデビューシングル「leave nothing unsaid」をリリース。同年10月に1stアルバム「New Unseen Tomorrow」を発表し、注目を集める。翌2009年にはKen Yokoyama、ALMOND、SpecialThanks との4-WAYスプリットアルバム「The Best New-Comer Of The Year」に参加した。2011年には東北復興応援活動として磯部正文(HUSKING BEE)やoto などを招き、野外フェスティバル「LANDMARK FESTIVAL 石巻2011」をANCHOR とともに開催。さらにF.I.BとのツーマンイベントやMEANINGとの東北ツアーなどを経て、同年9月に2ndアルバム「OVERTAKE」を発表した。そして2013年1月、PIZZA OF DEATH RECORDSへの移籍を発表。同年3月に横山健プロデュースによるニューアルバム「MY MIND IS MADE UP」をリリースする。