音楽ナタリー Power Push - 舞台「名なしの侍」特集 堂島孝平×菜月チョビ(劇団鹿殺し)×丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)

最高に痛快な新感覚音楽時代劇

キービジュアルの撮影で垣間見えた役者・堂島の片鱗

──公演のキービジュアルを見たとき、最初どこに堂島さんがいるのかわからなくて。

「名なしの侍」キービジュアル。左から3番目が堂島孝平。

丸尾 こういう堂島さんを作りたいっていうイメージがあったんですよ。衣装とメイクさんには一番惨めな感じにしてくれってお願いして。この撮影のときもスッとね、堂島さんはお芝居ができると思いました。

堂島 ちょっ……、この話すごくて。僕が持ってるこの木の棒あるじゃないですか?(ビジュアルを指差しながら)

──はい、ありますね。

堂島 この集合写真の前に1人ひとりの個人撮影があったんですけど、衣装着てメイクしてもらって撮影場所に行ったら、丸さんにこれを渡されたんですよ。「座頭市みたいな感じで、卑しい役です」って言われて。しかも片目見えませんって言われたから俺、体悪いんだと思って。

菜月 足に包帯みたいな白い布巻いてるし。

堂島 そう、それで木の棒を渡されたからソロショットは杖みたいにしてたんですよ。そのあと全体撮影のときにみんなで岩場を歩いてくるっていう撮影で、カメラマンの人が「堂島さんは足悪い役なんですか?」って聞いてきて、俺がぼーっとしてたら丸さんが「いや、そうじゃないんすよ」って言うから「えっ!?」って俺思って。そしたら丸さんに「この木の棒は杖じゃなくて、ここにいるメンツはみんな刀を持ってるのに、その場に落ちてた木の棒で人を殴り殺すような最悪なヤツなんです」って言われて、「早く言えよ!」って(笑)。

一同 あはははは!(笑)

堂島 俺、ずーっと杖だと思いながら持ってて! しかもソロカット撮ってるとき丸さん見てるんですよ、その場面。見てんのに、「さみー」とか言ってる間に終わっちゃって。

丸尾 でもね、それを想像してやってくれたってのがすごくて。

菜月 普通、よくわからない状態で棒を渡されたらただブラブラ持っちゃうと思うんですけど、それを設定だと思って杖にしたっていうのが「すごい、堂島さん役者じゃん!」って思って。

堂島 すげえ恥ずかしかったですよ! しかも陽が落ちかけて時間もない状況で、「これ杖じゃないんですよ」って言われたときもひと笑いも起きないんですよ。シーンって。そしたら俺の足に巻いてる白い布がめっちゃめくれてきて、「もう早くしろよ」みたいな空気になるし。

菜月 堂島さんは目が半分ふさがれてるし、布は解けてくるし、この写真だと見えないけど編み上げのわらじも履いてて、すごいハードルが高かったんですよ。めっちゃかわいそう(笑)。

堂島 で、こないだ鹿殺しの花見に僕も呼んでもらってこの話したときに、ベロンベロンに酔っ払った丸さんが「堂島さんはねえ、向いてんスよ役者に、ハハハ」とか言ってきて「腹立つわー!」って。

──あはははは!(笑)

左から菜月チョビ、堂島孝平、丸尾丸一郎。

菜月 そのあとカメラマンのエモ(江森康之)くんの家に行って写真選びをしたんですけど、「堂島さんほんとに杖ついてる!」って。申し訳ないんですけど写真見て大爆笑しちゃって(笑)。

丸尾 しかも、エモに「詩人みたいに」って言われたんですよね。

堂島 そう、俺がてっきり杖だと思って撮影に臨んでたらカメラマンが乗ってきて、「ちょっと詩人みたいな感じで目を閉じてみましょうか」とか言ってきて、全然卑しくないっていう。むしろ崇高な感じで真逆なんですよ、全体撮影のときと個人撮影のときで。しかもちょうどいい風が吹いてきて髪がふあーってなびいてるし(参照:劇団鹿殺し15周年記念・怒パンク時代劇「名なしの侍」CASTページ)。

──面白すぎます(笑)。

堂島 いやーほんとに(笑)。でもね、俺このときやっぱ役者さんってすごいなと思いましたよ。だって、この周りの人たちがなんの役なのか、俺いまだにわかってないんですよ。

菜月 本人たちもわかってないですね。

堂島 ね。だけどこうやって集合体になったときに、おのおのが感じた役柄が憑依してて、ワクワクしません、この写真?

──それぞれのストーリーがあるような気がしますね。

堂島 そう。でも実際は誰なんだろうって(笑)。それってすごくない?

菜月 劇団員はよくわからない小物を持って、なんとなく人生を感じさせるっていうのに慣れてるんで(笑)。

堂島 だからちょっと感動したんですよ、俺。ほんと人間力の賜物っていうか、集団ってすごいなと思いましたよ。いろいろ腹立ったけど(笑)。

菜月丸尾 すいません(笑)!

遅咲きだと思ったら人生楽しくなる

──今回の作品で劇団鹿殺しは総動員数1万人を目指すということで、単純にすごい数字だと思うのですが、そうやって挑戦する原動力はどこからくるのでしょう?

菜月チョビ

菜月 私たちって、現状に対していつもまだまだだ!って飢え続けてるんですね。もっとたくさんの人に観てほしいし、もっとたくさんの人に褒められたいっていう思いがあって。それが今回の過去最大規模の公演につながってますね。

丸尾 鹿殺しは順風満帆な劇団じゃなくて、最初のスタートがすごい低いところから始まってるんで、自分たちは遅咲きだと思い込ませてる部分があるんですね。20代でパッと花咲く人もいれば、力を溜めてあとで咲く人もいるけど、僕らは後者だと思っていて。まだまだ蕾の段階なので、早く咲かせたい、咲かせるためには継続して大きくなっていかなきゃという思いが強いんですよね。

堂島 自分も同じですね、遅咲きだと思ってる。大器晩成だと思ってやり続けてますね。

丸尾 遅咲きのほうが人生楽ですよね。ピークが80歳だと思ったら楽しいと思うんですよ。それまでずっと上がっていけるというか。

菜月 目の前の悔しさも耐え忍べるよね。

堂島 確かに。あと僕は、ないものを作らないと居場所がなくなるっていう思いで音楽をやってる部分もあって。遅咲きなんだけど前例がないものをなるべく多く作ってかないとなって。

──確かに、堂島さんも常に新しいことにチャレンジしている印象があります。それこそ今回の舞台も大きな挑戦だと思いますし。

堂島 好きだからやれるっていうのもあると思うんですけどそういうのは大事ですよね。いかにやりたいことを見つけるか、生み出すかを大事にして音楽をやってますけど、音楽じゃなくても表現の場が新しくあったらいいなとは常々思ってますし。そういう意味で鹿殺しの舞台に出るっていうのは僕にとっても大きいことだと思いますね。

劇団鹿殺し「名なしの侍」 / 2016年7月16日(土)~24日(日) 東京都 サンシャイン劇場 2016年7月28日(木)~31日(日) 大阪府 ナレッジシアター
劇団鹿殺し「名なしの侍」
イントロダクション

「最強は誰だ」
時は戦乱の世。幾多の武将が名を馳せる中、月見草のように闇に咲く名も無き侍たちがいた。強さとは何か? 死ぬべき時はいつか? 生きる意味とは? はぐれ雲に問い続ける刃の光。流れた血のあとに、月の涙が零れ落ちる。
合戦の騒乱を生バンドに乗せ、足軽が管楽器を吹く。嘆きのギター、進軍のベース、生きる鼓動がドラムに乗り移る。劇団鹿殺しが挑む「新世代パンク時代劇」参上!

出演者

菜月チョビ / 丸尾丸一郎 / オレノグラフィティ / 橘輝 / 鷺沼恵美子 / 浅野康之 / 近藤茶 / 峰ゆとり / 有田杏子 / 椙山さと美 / メガマスミ / 木村さそり / 玉城裕規 / 鳥越裕貴 / 谷山知宏(花組芝居) / 堂島孝平
piggy(G / ex. pocketlife)、奥泰正(B / THE WELL WELLS)、辰巳裕二郎(Dr / 花団)
池田海人 / 石川湖太朗 / 長田典之 / ちゃこ / 中島ボイル / 前川孟論 / 矢尻真温

チケット

5月14日(土)23:59まで「名なしの侍」特設サイトにて特典付き2次先行販売実施中。
5月15日(日)10:00より前売り券&学生券の一般発売がスタート。

堂島孝平(ドウジマコウヘイ)
堂島孝平

1976年2月22日大阪府生まれのシンガーソングライター。1995年2月にシングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビューを果たす。1997年には7thシングル「葛飾ラプソディー」がアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のテーマソングに起用され全国区で注目を集めた。ソングライターとしての評価も高く、KinKi Kids、藤井フミヤ、山下智久、Sexy Zone、太田裕美、THE COLLECTORS、アイドリング!!!、住岡梨奈など数多くのアーティストへ楽曲提供したりサウンドプロデュースしたりしている。また西寺郷太(NONA REEVES)と藤井隆とのアイドルユニット・Smalll Boysとして活動しているほか、佐野元春の「SOMEDAY」再現ライブのバンドメンバーとして参加するなど、多彩なミュージシャンたちとセッションワークを行っている。2014年5月末で閉館となった東京・吉祥寺バウスシアターのクロージング作品の1つとして劇場公開された「さよならケーキとふしぎなランプ」では俳優として主演を務め、フジテレビ系「オモクリ監督~O-Creator's TV show~」では映像監督として出演した。デビュー20周年を迎えた2015年2月には、東京・中野サンプラザホールにて記念公演「堂島孝平 活動20周年記念公演 オールスター大感謝祭!」を、ゆかりのゲストを多数招いて華々しく開催。同年12月には通算17枚目となるオリジナルアルバム「VERY YES」をリリースした。2016年7月、劇団鹿殺しの舞台「名なしの侍」に俳優としてゲスト出演する。

劇団鹿殺し(ゲキダンシカゴロシ)
劇団鹿殺し

2000年、関西学院大学在学中に菜月チョビと丸尾丸一郎によって旗揚げされた劇団。2005年に活動の拠点を大阪から東京に移し、当時7名だった劇団員による2年間の共同生活や年間1000回以上の路上パフォーマンスで話題を呼ぶ。あわせてコンスタントに公演を実施し、2010年発表の「スーパースター」は、第55回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされた。2014年1月にはCoccoを主演に迎え、初プロデュース作品として「ジルゼの事情」を手がける。この公演は演劇界のみならず音楽界でも話題を呼び、同年9月に東京・サンシャイン劇場で再演された。2015年6月、石崎ひゅーいを招いた「彼女の起源」では生バンドを取り入れた舞台に挑戦して成功に収める。2016年7月、堂島孝平をゲストに「名なしの侍」を東京・サンシャイン劇場と大阪・ナレッジシアターで上演。