ナタリー PowerPush - 童子-T

俺のリアル

童子-Tと“フィーチャリング”

──今回も若手との共演が多いですね。

童子-T

俺、新人のエネルギーに満ちあふれてる感じが好きなんですよ。俺と曲をやるっていうことをチャンスととらえて「モノにしてやる!」とか、もうなんだったら「童子-Tを踏み台にしてのし上がってやる」っていうそのパワーが。だから、俺はそういう子たちの精神的なケアも含めてプロデュースしてる感じなんです。

──それはまさにヒップホップのフックアップ文化を体現してると言えるのでは?

そうかもね。でもそれはBENIとかテルマとかとやりたくないということじゃなくて、もう俺の出る幕ではないというか。だって彼女たちはすでにホールツアーとかできちゃうアーティストだからさ。その意味で今はTOKINEやみれいのようなもっと下の世代とやりたいと思ってるんですよ。あと俺自身、フックアップしてるんだかされてるんだか、よくわかんないところもあってさ(笑)。そういう感じも面白いんだよね。だから「俺は若手をフックアップしてんだ!」みたいな堅苦しい考えはないよ。

──では、中島美嘉さんをフィーチャーしたのはどういった理由なんですか?

中島美嘉さんはずーっと好きで、10年くらい前から1回一緒にやりたいと思ってたんです。公の場でもその思いを表明してたら、ふとしたつながりで今回ご一緒できることになって。

──童子-Tさんは楽曲制作前に共演相手のことを深く知るために取材すると聞きました。今回、中島さんからはどんな取材結果が得られましたか?

実は今回はそんなに深くお話を聞けなかったんですよ。彼女も忙しい人だから、なかなかタイミングが合わなくて。でも、俺自身、彼女の曲は本当にたくさん聴いてきてるし、中島さん自身が「中島美嘉」っていうものに対してすごくこだわりを持っているんです。だから、今回はボーカルディレクションもしてませんし、俺が彼女の世界観に俺が飛び込んで行ったようなイメージでしたね。結果としてありきたりなポップスではない曲ができあがったと思います。

──中島さんのボーカルはすごくソウルフルで、ブラックミュージックの要素を感じました。

彼女は「NANA」とかやってたからロックのイメージが強いけど、ケツメイシのRYOJIや大沢伸一さんがプロデューサーとして参加してる曲もあってさ。だから中島さんにはブラックミュージックの素養もあるんだと思うんだ。

──作詞はどのように進めたんですか?

「12 Love Stories」以降、わりと若い男女の淡い恋愛を歌ってきたんですが、この曲では大人の恋愛という部分を意識しました。それはやっぱり中島さんと一緒にやるという部分が大きいですね。俺が彼女と話していく中で感じた彼女の個性的な部分、それを俺なりに膨らませていって。かなり俺の勝手な解釈で書いたんですけど、彼女もOKしてくれました(笑)。

盟友Mummy-Dとの信頼関係

──童子-T作品ではおなじみのMummy-D(RHYMESTER)さんですが、今回は遊助さんとの共演ということでかなり意外な組み合わせだと思いました。

「Runner」は当初、Dのトラックで俺と遊助くんがラップするという曲だったんです。でもなんとなく作業の中で「Dもラップ入れてよ」みたいな流れになって。Dも「それもいいかもね。なんかちょっと隙間あったら考えとくわ」くらいのノリだったんです。でも、いざレコーディングになったらDはちゃんとリリックを考えてきてくれてて。今回はいい感じになったのでこの三つどもえ共演が実現したんです。

童子-T

──そのあたりの逸話はヒップホップ的な“ノリ文化”ですね。

まさに。ホントにその場のノリだったからね。ビジネスありきのフィーチャリングじゃこうはいかないよ。しかもDのパートは当初アウトロだけだったんだけど、結局流れでイントロもやってもらったんだ。スタジオ入ってから録ってみて「あー、これいいじゃん。こことここ入れちゃおうよ」みたいな(笑)。

──Dさんとはすごくいい信頼関係が結ばれてるんですね。

俺とDはもう戦友というか。ちょっと言い過ぎかもしれないけど、ほぼ唯一と言っていいくらい深い関係の友人なんです。そんな感じだから、俺がアルバムを作るときはDがどんなに忙しくても絶対に何かしらで参加してもらってますね。今回の「Runner」のオファーも超適当で「和な感じで、ちょっとEDMな、でもお祭りっぽい感じのトラック」とか言った気がする(笑)。他の人では絶対こんな頼み方できない。

──逆に言えば、それだけDさんのトラックメイキングの腕を信頼してるということでもありますね。

うん。

ニューアルバム「T's MUSIC」 / 2014年3月19日発売 / 3150円 / EMI RECORDS / UPCH-20342
「T's MUSIC」
収録曲
  1. T's MUSIC
  2. Runner feat. 遊助, Mummy-D
  3. ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)feat. 北乃きい
  4. 誰よりも feat. 中島美嘉
  5. Turn Me On feat. ダイアナ・ガーネット
  6. HOLE!feat. KOHEI JAPAN, LITTLE, hy4_4yh
  7. Tonight feat. Alice
  8. 真夏の夢
  9. My Favorite Song feat. UNIST
  10. さよなら
  11. あなたがいたから feat. TOKINE
  12. Sorry
  13. 未来へと feat. 當山みれい
童子-T(どうじてぃー)
童子-T

日本のヒップホップ黎明期から活躍するラッパー / プロデューサー。MC仁義が中心となって結成されたヒップホップグループZINGIのメンバーとして活躍した。DOHZI-T&DJ BASSというユニットを経て、2001年にソロデビュー。1stシングル「少年A」はMummy-D(RHYMESTER)がプロデュースを手がけた。当時は無名だったJUJUや清水翔太といったニューカマーたちを客演シンガーとして積極的にフックアップし、ラップ+シンガーというスタイルを作り上げた。2008年にリリースしたシングル「もう一度…feat.BENI」が約30万枚を超えるセールスを記録し、同曲を収録したアルバム「12 Love Stories」は約50万枚を売り上げた。その後もCHEMISTRYなどさまざまなアーティストとの共演曲を発表し、2014年3月に6thアルバム「T's MUSIC」をリリースした。