ナタリー PowerPush - 童子-T
俺のリアル
童子-Tが通算6枚目のフルアルバム「T's MUSIC」をリリースした。約3年3カ月ぶりのフルアルバムとなる本作には中島美嘉、Mummy-D、北乃きい、遊助といった有名アーティストから新人まで、さまざまなフィーチャリングアーティストを迎えたナンバーが多数収録されている。
ナタリーではアルバムの発売を記念して童子-Tへのインタビューを実施。アルバムについてはもちろん、彼がフィーチャリングにこだわる理由、さらに彼から見た日本のヒップホップシーンについて深く語ってもらった。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 小原啓樹
童子-Tの音楽史を詰め込んだ「T's MUSIC」
──今回のアルバムタイトル「T's MUSIC」はどんな意味なんですか?
端的に言ってしまえば童子-Tの音楽ということかな。でも、今回はなかなかタイトルが決められなかったんです。
──それはなぜ?
俺はもともとガチガチにコンセプトを決めてアルバムを作るほうで。だからこれまでの作品って、特に考えなくてもタイトルはおのずと決まっていったんです。でも、今回は適当に作ったからなかなかタイトルが決められなくて。
──適当……ですか?
あははは(笑)。いや適当というか肩肘張らずに作ったと言ったほうが語弊がないかな。今までそういうふうにアルバムを作ったことがなかったから、タイトルをどうすればいいかのかすごく困っちゃったんですよ。それで「タイトル、どうしようかな?」って考えながらアルバム用の曲を聴いてるうちに、今回の作品には自分の音楽的ルーツが反映されているということに気付いて。
──具体的には?
意外かもしれないけど、実は小学生の頃、俺はCHAGE and ASKAやオフコースをカバーするフォーク少年だったんです。それから歌謡曲を通過して、マイケル・ジャクソンに出会い、ディスコとダンスに目覚めました。その後にブレイクダンスにハマって、ヒップホップの世界に入ってZINGIに加入した。今回のアルバムにはそういう俺自身の音楽的な歴史が詰め込まれていたんです。だから童子-Tの音楽、つまり「T's MUSIC」というタイトルになりました。
小難しい時代を意識したアルバム作り
──今回のアルバムをこれまでの作品のようにコンセプトありきで制作しなかったのはなぜですか?
緻密なアルバム作りというのが「4ever」「GOLD」「12 Love Stories 2」の3作品で極まった感じがしたんですよ。アルバム全体の構成はもちろん、サウンドや歌詞のバランスなんかにもすごく気を配りました。その反動なのかわからないけど、今回はだいぶリラックスした状態で制作に臨めて、それが自分的にはすごくイイ感じだったんです。だから「今回はこのままあんまなんも考えないで作ろう」ってことになったんです。
──では制作自体、いつもより楽しめたんじゃないですか?
うん、楽しかったですよ(笑)。だけど途中で「何か言うべきなのかな?」とも思いました。これまでのアルバムでは1曲くらいストレートにメッセージ性のある曲を必ず入れてきたし。でも、今は頭で考えなきゃいけないことが多すぎる時代じゃない? だから「T's MUSIC」はそういう小難しい要素を排除して、腰で感じられる音楽にしようと思って作りました。
──「HOLE!feat. KOHEI JAPAN, LITTLE, hy4_4yh」は客演も含め、腰で感じられる楽曲ですね。
コーヘイとLITTLEは同じ事務所なんで、3人で一緒にやりたいなっていうのがこの曲の始まりだったんです。この2人とやるんだったら、パーティチューンみたいな感じがいいよってことになったんだけど、俺はそういう曲が得意じゃない。だからLITTLEにプロデューサー的な立ち位置になってもらって、いろいろ相談しながら作っていきました。
──hy4_4yhの起用はどのように決まったんですか? これまでの童子-Tさんの共演者リストを見てもかなり意外な人選のように思えましたが。
彼女たちに関してはレーベルサイドから提案してもらったんですよ。で、聴いてみたら完全にイカれてるじゃないですか(笑)。今回はこういうリラックスした楽しいアルバムだから「なんだったらもう童子-Tの世界観をぶっ壊してもらおう」みたいなノリで一緒にやってみることにしたんです。そんな彼女たちにおじさん3人がどう立ち向かってるかが聴きどころですね(笑)。
収録曲
- T's MUSIC
- Runner feat. 遊助, Mummy-D
- ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)feat. 北乃きい
- 誰よりも feat. 中島美嘉
- Turn Me On feat. ダイアナ・ガーネット
- HOLE!feat. KOHEI JAPAN, LITTLE, hy4_4yh
- Tonight feat. Alice
- 真夏の夢
- My Favorite Song feat. UNIST
- さよなら
- あなたがいたから feat. TOKINE
- Sorry
- 未来へと feat. 當山みれい
童子-T(どうじてぃー)
日本のヒップホップ黎明期から活躍するラッパー / プロデューサー。MC仁義が中心となって結成されたヒップホップグループZINGIのメンバーとして活躍した。DOHZI-T&DJ BASSというユニットを経て、2001年にソロデビュー。1stシングル「少年A」はMummy-D(RHYMESTER)がプロデュースを手がけた。当時は無名だったJUJUや清水翔太といったニューカマーたちを客演シンガーとして積極的にフックアップし、ラップ+シンガーというスタイルを作り上げた。2008年にリリースしたシングル「もう一度…feat.BENI」が約30万枚を超えるセールスを記録し、同曲を収録したアルバム「12 Love Stories」は約50万枚を売り上げた。その後もCHEMISTRYなどさまざまなアーティストとの共演曲を発表し、2014年3月に6thアルバム「T's MUSIC」をリリースした。