ナタリー PowerPush - DIR EN GREY

司令塔・薫が明かす武道館2DAYSの裏側 壮絶映像が示すバンドの未来

映像では言葉にはならない意味を追求した

──武道館のライブは演出と映像も大きな要素ですよね。あのアイデアはどなたが?

メンバーとデザイナーも含めてみんなでアイデアを出しました。こちらから出す曲もあれば、デザイナーが出して、そこからやり取りしてできるものもありました。

──かなり綿密に打ち合わせた?

いえ、具体的なやり取りがあったわけではないんです。なんとなくこんな感じ、とか。言葉になるものが嫌だったりするんです。言葉にならないけど意味がある、そういう次元で決めたくなるんです。説明できてしまうと面白くない。いろんな要素を掛け合わせて、よくわからないけれどかっこいいとか、そういうのを考えていて。だからすごい時間かかるんです。実は実際に使っている映像の倍ぐらいの素材をあらかじめ作っているんですよ。全曲分の映像を作ったんですけど、1曲に対して2回ぐらい作り直したものもあります。結局、流れとか最終的なイメージを考えて、半分ぐらい没にしました。似た映像が流れていても面白くないですし。

インタビュー写真

──2日目のほうがエグい映像がいっぱいあったような気がしましたけど。

映像が流れている印象度は同じなんですけど、1日目のほうがよりメッセージ性の強い映像を流したんです。それは観た人がどう捉えるかによりますけど。あと同じ曲でも2日間で映像が違っていたりするんです。1日目は大阪城ホール(2008年12月29日開催)の匂いを出して、2日目はそこから1年が経ち、今やっている雰囲気と世界観を重視しました。

──「UROBOROS」の曲を初披露した大阪城ホールはまだ手探りだったんですか?

完全に手探りでした。初めてやる曲なので緊張していたし。

──そこで課題と反省が生まれて、その後に生かされた?

そうですね。でも大阪城ホールをやって、そのあとがライブハウスツアーだったので。大阪城ホールで表現できなかった部分を改善しながらやってはいたんですけど、なにか違う感じでしたね。

──会場の規模が違うし、大阪城ホールはひとつの会場だけだったからですか?

そうそう、単発のライブとは違いますね。ツアーの流れで大阪城ホールをやっていたら変わったと思うんですけど。あと、ここ1年ぐらいでDVD作品を結構リリースしているんですが、大きい会場で撮ったライブDVDを作るのは久しぶりで。やっぱり大きな会場になると、単発のライブになるのでバンドの脂が乗り切ってない。でも武道館の場合は、その前から海外でツアーが続いていたのでいい形でいけたかなと。

音のコンディションが生んだパフォーマンスの違い

──曲順が2日間で違いましたけど、これもみなさんでアイデアを出したんですか?

そうです。最初に叩き台を俺が作って、みんなでやり取りして。1日目の最初の曲が2日目の最後の曲になるというのも最初から決めていました。

──立て続けに観ると、それぞれ印象がかなり違いますね。1日目は完成に向けて全員が向き合っている感じですけど、2日目は逆に全員が外に向けて力を放出しているような印象でした。

そう感じてもらえるとうれしいです。実は1日目は音の問題があって、あまりやりやすくない状況だったんです。だから自分たちの中で闘いながらやっている感じがあると思います。逆に2日目はすごくやりすくて、開放感が出ているのかもしれないです。

──1日目は音が分厚くて、2日目は音の分離がいいような気がしました。

1日目は会場の音がデカかったんです。だから音が回りこんで壁のような音になっているかもしれないですね。それに1日目と2日目ではエンジニアの人が違うので印象も違うんだと思います。

終わった後は達成感よりも安堵感が大きかった

──2日目が終わった後、やりきったという感じはありました?

最後の「VINUSHKA」が終わるか終らないかのとき、このままやりきるぞって思って。音が止まったとき「よし、やった!」って思いました。でもみんなで顔を合わせたときは、やりきったというより安心したというか、安堵感のほうが強かったです。いいライブができて良かったっていう。プレイだけの話じゃなく、全員の気持ちが噛み合ったというか。普通のツアーでも浮き沈みが激しいので、がっちり決まるときもあれば崩れるときもあるんですけど。特別な会場で納得できるライブができたのが良かったですね。

インタビュー写真

──DIR EN GREYの中でもかなり大きな意味を持つライブになったと思います。

結果的にそうですね。今までは武道館自体には思い入れがなくて。過去に4回やってるんですけど、空いているなら武道館やろうか、という感じで。でも今回やってみてすごくいいな、と。武道館でしか見えない俺たちのライブができた気がします。

──近いうちにまたやりそうですか?

当分いいです、結構疲れたので(笑)。準備があるので、フラっとできないんです。演出がなかったとしても、会場が大きいとしっかり段取りが決められているので。本当は直前までライブのことを考えたくないんですよ。でも、リハーサルであれこれ考えないといけない。そういうのがなければいつでもやりたいんですけど、あまりリハーサルが好きじゃなくて。ライブが一番いいですね。まあ、でもリハーサルしないとバンドもまとまらないので(笑)。

ライブDVD「UROBOROS -with the proof in the name of living...- AT NIPPON BUDOKAN」 / 2010年5月26日発売 / FIREWALL DIV.

  • 初回生産限定盤 [DVD3枚+CD1枚] 10500円(税込) / SFBD-0022~25 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [DVD2枚組] 7140円(税込) / SFBD-0026~27 / Amazon.co.jpへ
DISC-1 収録内容

『UROBOROS -with the proof in the name of living...-2010.01.09 (Sat)
SA BIR / VINUSHKA / 凱歌、沈黙が眠る頃 / RED SOIL / STUCK MAN / GRIEF / 慟哭と去りぬ / Merciless Cult / INWARD SCREAM / 凌辱の雨 / 蜷局 / GLASS SKIN / 我、闇とて… / dead tree / INWARD SCREAM / HYDRA -666- / BUGABOO / 冷血なりせば / DOZING GREEN / INCONVENIENT IDEAL / CONCEIVED SORROW / 残 / 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇 / THE IIID EMPIRE / 羅刹国 / CLEVER SLEAZOID

DISC-2 収録内容

『UROBOROS -with the proof in the name of living...-2010.01.10 (Sun)
我、闇とて… / Deity / OBSCURE / RED SOIL / STUCK MAN / 慟哭と去りぬ / 蝕紅 / INWARD SCREAM / 蜷局 / GLASS SKIN / THE PLEDGE / DOZING GREEN / INWARD SCREAM / dead tree / BUGABOO / 冷血なりせば / 凱歌、沈黙が眠る頃 / HYDRA -666- / AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS / 朔-saku- / 残 / 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇 / THE FINAL / INCONVENIENT IDEAL / VINUSHKA / SA BIR

DISC-3 (初回生産限定盤のみ)収録内容

BONUS FOOTAGE

DISC-4 (初回生産限定盤のみ)収録内容

『UROBOROS -with the proof in the name of living...-
2010.01.09 日本武道館
2010.01.10 日本武道館
ライヴ音源
※両公演のライブ音源楽曲を15曲収録

DIR EN GREY(でぃるあんぐれい)

プロフィール写真

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)から成る5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2008年にアルバム「UROBOROS」を世界16カ国で同時期にリリース。同作はアメリカのBillboard Top 200で114位、インディーズアルバムチャートBillboard "TOP INDEPENDENT ALBUMS"で9位、新人アーティストを対象としたチャートBillboard "Heatseekers Chart"で1位という快挙を達成する。その後、2008年末から2010年にかけて「UROBOROS」を携えたライブツアーを国内外で展開。2010 年1月に日本武道館公演を2日間にわたり開催し、ロングツアーを締めくくった。

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