ナタリー PowerPush - DIR EN GREY
司令塔・薫が明かす武道館2DAYSの裏側 壮絶映像が示すバンドの未来
オーディエンスの合唱を聴いて「このまま終わろう」
──今振り返ってみて、薫さんが印象に残っている場面はどこですか?
2日目が全部終わって、「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」のビデオクリップが会場で流れたところが印象に残ってます。あのとき、俺らステージの袖にいたんですよ。会場の様子を見ていて、声がかかればもう1回出ようかなと思っていたんですけど。ビデオクリップが流れたときに合唱が起こって、それを聴いたら感動して。このままこれで終わろうって。
──それから現在、武道館ライブに密着した劇場版も公開されています。これはDVDと編集が異なる映像ですね。
こちらはその日の空気感に重点を置いてます。「UROBOROS」のライブというよりも、バンドの1本のライブに向けての緊張感が入ってますね。ステージ裏がわかりますよ。険しい顔もあれば、ものすごい笑顔もある。そこは自分でも観ていて面白いです。俺の顔が引きつっている場面もありますし(笑)。
海外ライブは出たとこ勝負。トラブルだらけで面白い
──ところでDIR EN GREYといえば、ツアーの本数が果てしなく多いですよね。ここまで多くなってきたのはメンバーの意向を汲んでのことなんですか?
ええ。増えてきたのは、ここ3~4年ぐらいですかね。海外公演が入りだしたので。日本でツアーをする場合、だいたい規模とか本数が決まってくるんです。動員を考えると、これぐらいかなと見えてくるので。そうすると、毎回同じ場所で同じ本数を回ることになるんです。それが面白くなくて、そういうのを1回壊して回ってみようと。基本的に日本だと規模もわかるし、スタッフも多くて贅沢なんです。当日、会場に入ってリハーサルしてライブすれば終わり。だけど、海外の場合はスタッフも少ないですし、自分たちでやらないといけない部分も多い。機材をセットしてリハーサルで音を出して。そうやってみんなで音を出して、遊んでいるような感覚なんです。日本でもそういうふうにできないかなと思って、2009年はスタッフも機材も最小限、みんなで車で回るようなツアーをしましたね。そういうのがすごく良かったです。
──しんどくはないですか?
しんどいんですけど、もともとそうやってきたし、普通ですね。それに、大阪城ホールの後ですぐライブハウスツアーだったので、自分たちでもそのギャップが面白くて。関西近辺のライブはイベンターさんが同じじゃないですか。そうすると大阪城ホールの後でここでやるの? って。そういうのが面白いなと。
──それは、数百人であろうと1万人の会場であろうと、つねに自分たちの音楽をやれるという自信の表れ?
そうですね。でも小さい会場のほうが面白いです。もともとそういうところでやり始めたわけですから。出たとこ勝負がいいんです。
──狭いステージが機材で埋まって、動けるスペースがままならなくても?
海外に行くとそうですからね。国内だと段取りがありますから、きっちりやってきっちり終わらせないとダメみたいな空気があって。海外だと、出てみて何が起こるかわからない。トラブルもしょっちゅうあるし、バンドがだんだん強くなるんですよ。
想定内に収まるようなことはやりたくない
──DIR EN GREYは海外での評価も最近ますます高まってきてますよね。
いや、まだまだ厳しいですよ。世界中にアーティストはいっぱいいるわけだし、その中で際立ったものをやるというのはかなりのことなので。なかなか難しいです。
──その難しい道を選んでいるのはなぜでしょう?
単純に観たいという人がいるなら大阪行くのもアメリカ行くのも変わらないですよ。そこで、いわゆる“成功”や“一発当てる”みたいなことを考えだすと、もう大変です。もちろん行くからにはいろんな人に観てもらいたいし、曲もたくさん聴いてほしい。でも向こうのアーティストならすぐやれることが、俺達は向こうにいないからできない。海外のアーティストは、アルバム出したら年に3~4本ツアーやってますけど、さすがにそれは無理ですから。それに次から次へ新しいアーティストが登場するので、すぐ忘れられるからずっとツアーをやっていないとだめなんです。今はそれが難しいので、まだまだですね。
──最初の話のように、現実が上がると目標も上がっていくような?
それとはまた話が違って、雲をつかむようなものです。これでいけるのかなって。音楽の文化は向こうのほうが古いわけですから、そこに追いついて新しいものを見せるというのは……。頭を使ってやる部分も大事ですけど、それだけじゃなく、自分たちから出てきたものがうまく噛み合って、何かが起きるんじゃないかなと思っているんですけど。ただ、それを待っているだけでも難しいので、どういうことをやると面白いかなっていつも考えてますね。
──そうやって常に新しいものを見せたいという気持ちがあるうちは続けられますよね。
それがなくなったら辞めようかなと思います。かといって、目標は作らないようにしているんです。これが目標って決めたら想定内じゃないですか。自分達はもっと想像のつかないところに行きたいので、目標は作らず、面白いことをやりたいと思っています。
──タフですよね。
慣れていますから。デビューして2~3年だったら、やってらんねえっていう状態になると思いますけど、今はもうそれしかやることがないので。音楽以外の趣味で1カ月時間を潰せ、って言われても、ただボケーっとして終わると思うし。それにバンドの脂が乗っている時期というのは、ずっとじゃないと思うんです。今しかないし、いつ何が起きるかわからない。今やりたいことをこの先やれる保証はないので、今は休んでいる場合じゃないと思ってます。
DISC-1 収録内容
『UROBOROS -with the proof in the name of living...-』 2010.01.09 (Sat)
SA BIR / VINUSHKA / 凱歌、沈黙が眠る頃 / RED SOIL / STUCK MAN / GRIEF / 慟哭と去りぬ / Merciless Cult / INWARD SCREAM / 凌辱の雨 / 蜷局 / GLASS SKIN / 我、闇とて… / dead tree / INWARD SCREAM / HYDRA -666- / BUGABOO / 冷血なりせば / DOZING GREEN / INCONVENIENT IDEAL / CONCEIVED SORROW / 残 / 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇 / THE IIID EMPIRE / 羅刹国 / CLEVER SLEAZOID
DISC-2 収録内容
『UROBOROS -with the proof in the name of living...-』 2010.01.10 (Sun)
我、闇とて… / Deity / OBSCURE / RED SOIL / STUCK MAN / 慟哭と去りぬ / 蝕紅 / INWARD SCREAM / 蜷局 / GLASS SKIN / THE PLEDGE / DOZING GREEN / INWARD SCREAM / dead tree / BUGABOO / 冷血なりせば / 凱歌、沈黙が眠る頃 / HYDRA -666- / AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS / 朔-saku- / 残 / 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇 / THE FINAL / INCONVENIENT IDEAL / VINUSHKA / SA BIR
DISC-3 (初回生産限定盤のみ)収録内容
BONUS FOOTAGE
DISC-4 (初回生産限定盤のみ)収録内容
『UROBOROS -with the proof in the name of living...-』
2010.01.09 日本武道館
2010.01.10 日本武道館
ライヴ音源
※両公演のライブ音源楽曲を15曲収録
DIR EN GREY(でぃるあんぐれい)
京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)から成る5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2008年にアルバム「UROBOROS」を世界16カ国で同時期にリリース。同作はアメリカのBillboard Top 200で114位、インディーズアルバムチャートBillboard "TOP INDEPENDENT ALBUMS"で9位、新人アーティストを対象としたチャートBillboard "Heatseekers Chart"で1位という快挙を達成する。その後、2008年末から2010年にかけて「UROBOROS」を携えたライブツアーを国内外で展開。2010 年1月に日本武道館公演を2日間にわたり開催し、ロングツアーを締めくくった。