自分たちの作品なのにカッコよく聞こえる
──では、研究の成果とも言える「Fantasia」のアナログをターンテーブル「SL-1200G」で聴いてみましょうか(「Fantasia」をかける)。
(イントロが始まったとたんに驚いて)うわあ、すごいですね! 迫力があるというか、空間が広いというか。自分の家で聴くのと全然印象が違う。その違いを具体的に言えなくて申し訳ないんですけど。
──今回、アナログのカッティングに関してはこだわりがあったんですか?
いつもやっていただいている小鐵(徹)さんに全面的にお任せしました。小鐵さんの音が好きなので、小鐵さんが言うことなら右にならえって感じで。それ以前のミックスの段階では、いろいろお話させていただいたんですけどね。ちょっとほかのレコードも聴いてみていいですか?(持ってきたレコードをかけようとする)
──その前にネバヤンも聴きましょうよ(笑)。
すみません、自分の作品はリリースするまで100回くらい聴いたんで、ついほかのやつを聴きたくなって(笑)。
──これまでとは違って聞こえるかもしれませんよ(never young beach「STORY」をかける)。
へえー! 自分たちの作品なのにカッコよく聞こえる(笑)。各楽器にちゃんと距離があるというか、楽器と楽器の間にちゃんと空気が流れているような感じ。低音もちゃんとしっかり出ていて気持ちいいですね。
──それはレコーディングしていたときにイメージしていた音像なんでしょうか。
自分が想像してた音というより、いい意味で音をリッチにしてくれているというか。曲のポテンシャルをグッと伸ばして迫力を出してくれている感じがします。
──それだけCDとレコードの音が違うのであれば、両方聴いてほしいですね。
そうですね。音楽に興味がある人はぜひ。レコードを買って「よくなかった」っていう人もいるかもしれないですけど、それ込みで面白い体験になると思うので。(我慢できない様子で)じゃあ、ほかのレコードを聴いていいですか?
──もちろん(笑)。
安部勇磨のお気に入りアナログ4タイトル
映画「Metaphors」オリジナルサウンドトラック
うわー、いいなあ! なんでいいのかわからないけどいい(笑)。これは「Fantasia」で鍵盤を弾いてくれた香田悠真さんから誕生日のプレゼントにもらったんです。「映画のサントラなんですけど、たぶん安部さん好きだと思いますよ」って。タイの映画なんですけど、湿度の高そうなタイの森の音が聞こえてくる(1曲目はフィールドレコーディング)。森の音でもいろいろあるんですね。こういういい音で聴いたら森の中にいるような気になる。ここで寝そべりながらずっと聴いていたいです。
高田渡「ごあいさつ」
いいなあ。こういう素晴らしいスピーカーで聴くんだったら、シンプルなもののほうがいいかもしれないですね。その場で流れてる空気が伝わってくるみたいで。このアルバムは最初にCDで聴いたんですけど、やっぱりレコードで聴きたくなったんです。レコードで聴いたほうがよかったですね。
バハマス「sad hunk」
へえー! 家で聴くのと全然違いますね。キックの音とか。木造アパートとかで聴いたら響いて大変かも。家のオーディオで聴いてもタイトな印象はあるんですけど、このスピーカーで聴くとグッとくるところは来て、それでいて繊細な空気感もなくなってない。ボリュームを下げて聴いてもいいですね。ネバヤンのときは自分の作品なんで、いいリアクションできなかったんですけど、人の作品だと素直に感動できる(笑)。
今どんどんオーディオに対する興味が湧いてます
──どうでした? いろいろ聴いてみて。
いやあ、どれも最高でした。普通は1人で聴いて音のよさに気付くじゃないですか。今回は取材でこれだけ周りに人がいて、緊張してたりもするんですけど、それでも音がいいのはすぐわかる。1人でじっくり聴いたらもっと気持ちいいだろうし、もっと深いところまで行ける気がしますね。どうやったらこんないい音になるんだろう。どんな研究をしてるんですか?
(Technicsスタッフ) 弊社は50年以上ブランドを続けているので、そこで得た知識や経験の蓄積がありまして、それをもとに研究しています。
最終的には、どういう基準で「これでいこう!」と決まるんですか?
(Technicsスタッフ) Technicsディレクター小川理子という者がおりまして。彼女はプロのジャズピアニストでもあるんですが、彼女が「これでいい」と判断するまで研究を重ねています。
えーっ、みんなで決めるわけじゃないんですね。
──最後にジャッジをするのがミュージシャンの方というのが面白いですね。
(Technicsスタッフ) 珍しいかもしれませんね。オーディオ業界とミュージシャンの感覚の両方を擦り寄せて、最終的な音を決めています。
そうなんですか。楽しそうだなあ! (ターンテーブルを触りながら)すごくしっかりしたターンテーブルですよね。
(Technicsスタッフ) 20kg近くあるんです(笑)。
えーっ! そんなに。
(Technicsスタッフ) 重いほうが安定した回転になるので、余計な振動や音を拾わないんです。このターンテーブルはミドルクラスのグレードなんですけど、最上位の機種は45~46kgくらいあります。
すごい! ターンテーブルってけっこう音質に関わっているんですね。
(Technicsスタッフ) かなり関係していますね。
──今回、「SL-1200G」を操作してみていかがでした?
昔から使ってるみたいに使いやすかったです。シンプルだけどカッコいいし、音もいい。オーディオでこんなに音が違うとは思いませんでした。今どんどんオーディオに対する興味が湧いてます(笑)。
──新しい冒険が始まりそうですね。
朝起きたとき、こんな素敵なオーディオで好きなレコードを聴いて、ぼんやりできたら最高じゃないですか。僕の場合、車を買うより、こっちを買ったほうが絶対幸せになれますからね(笑)。
Technics「SL-1200G」
音楽好きにリスニング用機材として愛されている“グランドクラス”シリーズのターンテーブル。ダイレクトドライブシステムの課題を解決し安定した回転を実現する、Technicsが開発したコアレス・ダイレクト・ドライブモーターを搭載。Blu-rayディスクの制御技術が盛り込まれたことにより、回転制御がブラッシュアップされている。カラーはシルバーの1色展開。
Technics「SU-G700M2」
リファレンスクラスSU-R1000で開発された技術を継承した、Technics最新鋭のフルデジタル構成のインテグレーテッドアンプ。フルデジタルアンプ「JENO Engine」のポテンシャルをさらに引き出すため、高速応答・低ノイズ電源「Advanced Speed Silent Power Supply」が採用されている。スピーカーの特性に合わせアンプの特性を最適化する負荷適合アルゴリズム「LAPC」などにより、幅広い種類のスピーカーを理想的な振幅・位相特性で駆動できる。
Technics「SB-G90M2」
点音源・リニアフェーズ思想を受け継いだ、3ウェイ4スピーカー構成のスピーカーシステム。新開発の同軸ユニットを採用し、明瞭な音像定位と広いサウンドステージを実現した。粒立ちのよい音、立体的な音場を楽しむことができる。
レコードの日
アナログレコードの魅力を伝えることを目的として2015年より毎年11月3日に開催されているアナログレコードの祭典。東洋化成が主催、Technicsが協賛している。イベント当日は全国各地のレコード店でさまざまなイベントが行われ、この日のために用意された豊富なラインナップのアナログ作品が販売される。
- 安部勇磨(アベユウマ)
- 1990年東京生まれ。2014年に結成されたnever young beachのボーカル&ギター。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、各地のフェスやライブイベントに参加した。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。日本のみならず、上海、北京、成都、深セン、杭州、台北、ソウル、バンコクなどアジア圏内でライブ活動も行い、海外での活動の場を広げている。2021年6月に自身初となるソロアルバム「Fantasia」を自主レーベル・Thaian Recordsよりリリースした。
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