DEVILOOF「因習」インタビュー|浅野忠信も惚れるV系デスコアバンドによる“最凶最速”の新曲

ヴィジュアル系×デスコアという強烈な音楽性で海外でも厚い支持を集めるDEVILOOFが、2025年第1弾作品となる新曲「因習」を配信リリースした。

「因習」はフロントマンでありコンポーザーの桂佑(Vo)が、「村ホラー」をコンセプトに生み出した1曲。メンバーはバンド史上最高難度の演奏を追求するため、制作に1年をかけ、身の毛もよだつおどろおどろしく緻密な“最凶最速”のサウンドを完成させた。なお、リリースにあわせて公開された「因習」のミュージックビデオではDEVILOOFファンを公言する俳優の浅野忠信が主演を務め、おぞましい楽曲の世界観を見事な怪演で表現している。

その強烈な見た目ゆえに、さぞかし緊張感のある取材になるかと思いきや、蓋を開けてみればなんとも痛快な内容に。その音楽性からは想像できない、音楽に対して真面目なメンバーの姿が浮かび上がってきた。

取材・文 / 清家咲乃

結成10周年のDEVILOOF、一番の宝物は

──DEVILOOFは今年結成10周年を迎えるということで、まずはこれまでの活動の中で一番印象に残っている出来事を教えてください。

太輝(B) もう2年前になるんですが、渋谷CLUB QUATTROでEP「DAMNED」のリリースとメジャーデビュー記念という形でワンマンライブ「RUIN」をやらせてもらったんです。一番印象に残っている思い出と言えば、真っ先にそれが出てくるかなあ。結成してから順調に進んでいた部分もあれば、まったく自分たちの思い通りにいかなかったり、トラブル続きだったりした面もあったんですけど、あの日はたくさんのお客さんが入ってくれて。ライブ自体もすごくいいものができた。あの日の歓声とお客さんの姿ですべて報われたし、これからもがんばっていこうと思えた1日でしたね。そのときにお客さんからもらったパワーがあるからこそ今もまだDEVILOOFをやれてると思えるくらい、僕にとっては印象深い1日でした。

桂佑(Vo) ライブで言えば僕もメジャー1発目の「RUIN」かな。特別な経験で言うと、バンドとして「有吉反省会」に出たことですかね。うちのメンバーに“童の貞”である幹太がいて、そのことが放送されるという。そこから幹太マンの伝説が始まりましたね(笑)。

太輝 昨年末、渋谷ストリームホールで無料ワンマンライブ「PANDEMONIUM」を開催した前日にホテルでメンバーと今までの9年間を振り返ったんですけど、2015年のことだけで1時間くらいしゃべっちゃって、そのまま全員寝て終わりました(笑)。1年ごとにいろんな思い出がありすぎて語り切れないです。ホンマにすっごいクサいこと言っちゃうと、10年やってきて今のメンバーと知り合えて、一緒にやれてるというのが一番の宝物やなっていうのは心から思います。感謝の気持ちしかないですね。

桂佑幹太(Dr) ありがとうございます。

Ray(G) こちらこそです。

幹太 僕も「PANDEMONIUM」はけっこう印象に残っている出来事の上位に来ますね。僕がDEVILOOFに加入発表して1発目のライブが「Metal Square Vol.4」っていうイベントで。そのときの会場がストリームホールだったんですが、フロアがパンパンだった。でもメインアクトで僕らが出てるわけではなかった。その5年後、Cryptopsyっていう海外のテクニカルデスメタルバンドの来日公演に呼んでもらって、2回目のストリームホールを体験したんですけど、そのときも会場がパンパンやって。それも僕らの力で満員になったわけじゃなかったから、「いつかこんな大きい会場を埋めれたらいいな」と思ってたんです。それが去年「PANDEMONIUM」で無料とはいえワンマンを打つことができて、満員にすることができた。6年かけて、けっこう進んできたなあと感じたライブでしたね。

幹太(Dr)

幹太(Dr)

桂佑 2023年に出演した韓国のフェス「Jeonju Ultimate Music Festival 2023」とかも印象深いな。ずっと海外でライブをしたいという思いがあって、ようやくそれが実現した機会だったんです。けっこうデカいフェスだったんでお客さんもいっぱいいて。そういう中でライブができたのはすく気持ちよかったですし、思い出に残ってますね。

Ray 今まで自分たちの力でたくさんライブやってきましたけど、「RUIN」が終わってから大人の人たちに挨拶しているときに「あ、本当にメジャーデビューしたんだなあ」みたいな気持ちになりました。それ以降は本当にいろんな大人の力で……。

太輝 大人の力っていやらしいなあ(笑)。

幹太 大人の力感じすぎやろ!

Ray 改めて、いろんな人の力があってここまでこれてるんやなあと思いましたね。

新世代V系メタル三大巨頭と呼ばれて

──DEVILOOFといえば、最近はDEXCOREやJILUKAと並んで「新世代V系メタル三大巨頭」と称されていますよね。

太輝 活動が始まったタイミングもほぼ同じで、最初は「あいつらより絶対売れてやるわ」とか嫌な意味でのライバル心があったんです。でも、このご時世、メタル聴く人もヴィジュアル系聴く人もライブハウスに来る人も減ってきてる中で、おのずと「逆に一緒にやったほうがそれぞれのやりたいことをもっと広めていけるんじゃないか」という思いがコロナ前ぐらいから3バンドに芽生え始めたのかな。それでお互いのイベントに呼び、呼ばれというのを続けて、「新世代V系メタル三大巨頭」とまで言われるほど成長させることができた。この3バンドで巻き起こせる渦はどんどん大きくしていきたいなと思ってます。バブルを迎えているシーンやったらお客さんの取り合いとかしてもいいかもしれへんけど、僕らのようなバンドがそれをしちゃうと、少ないお客さんをただたらい回しにするみたいになっちゃうから。同世代のバンドでリスナーのパイ自体を広げていく思考にシフトチェンジした部分はあります。

──パイを広げるというところでは、DEVILOOFは昨年南米ツアーを回られていますし、YouTubeやSNSでも海外の方からのコメントが目立ちます。

太輝 南米、ヨーロッパ、アメリカのリスナーは、YouTubeとかサブスクのデータを見る限りでもすごく多いですね。SNSに何か投稿したら、むしろ海外の方たちからのコメントのほうが多い。南米に行ったときも、メロディのはっきりしている「Dusky-Vision」みたいな曲はサビでお客さんみんなが合唱してくれるんです。それってパイを広げる以前に、いちアーティストとしてすごくうれしいですし、ヨーロッパとアメリカに関しては待ってくれている人が大勢いると思うので、1日でも早く行きたいというのがバンドの総意です。

太輝(B)

太輝(B)

──実際、南米ツアーを回られてみていかがでしたか?

桂佑 余裕でした。

幹太 余裕すぎて、桂佑さんはライブであばら骨を折ったんですよ。

桂佑 最終日のブラジル公演で楽しくなって客席にいっぱいダイブしちゃって。そのときにちょっと打ちどころが悪くて折れちゃったんやと思うんです。最初は筋肉痛かな?くらいだったけど、帰国して病院行ったら「折れてるね」と(笑)。でもね、楽しかったんでオールOKです。

太輝 幹太マンも、初日に酸欠になったっけ。

幹太 あー、そう! 一発目がメキシコシティでのライブやったんですけど、メキシコシティって標高2500mに位置してるらしいんですよ。だから酸素濃度がすごく薄くて。「いやいや、肺活量鍛えるトレーニングもしてるから全然余裕やろ」と思って行ったんですけど、普通に3曲目くらいから記憶ないんですよね、酸欠で。

太輝 幹太マンがラストの2曲ぐらいで不自然な止まり方をしてて。「これ、このままやったら死ぬんじゃないかな」みたいな。

幹太 メキシコは標高が特に高くて、そのあとに行ったペルー、チリ、ブラジルは大丈夫でした。