昔のDEVILOOFをブラッシュアップ
──ここからは新曲「因習」についてお聞きします。コンセプトはホラーになるんでしょうか?
桂佑 そうですね。僕らメジャーデビューのタイミングで、ちょっと路線を変えたんですよ。今の時代、この激しい音楽で数字を取ってるのはヘヴィミュージックというジャンルにカテゴライズされているアーティストなので、ちょっとそっちに舵を切りたいなと思って。従来のDEVILOOFの音楽はおどろおどろしくて邪悪な印象が強いと思いますが、それをちょっと軽減して、もっと一般の人でも聴きやすいような楽曲を作っていたんですよね。ただ、自分の思っている以上に“リターン”があまりなくて。もちろん曲を聴いて「カッコよかった」と言ってくれる人もいますし、自分自身ちゃんと納得したうえで出した作品なんですが、どうしても過去のイメージが強すぎるのかなと。それで自分のやりたいこととDEVILOOFに求められてることをすり合わせたのが今作。原点回帰とまではいかないですけど、昔のDEVILOOFをさらにブラッシュアップしたものと捉えていただければ。
──楽曲のテイストの変遷に対して、ほかのメンバーの皆さんはどういうふうに感じられました?
幹太 完璧だと思ってました。
桂佑 完璧か?(笑)
Ray 本当にいろいろ考えてるなあとずっと思ってます。確かに「DAMNED」(2023年リリースのEP)とか「Song For The Weak.」(2024年1月リリースのEP)は今までの曲の中で浮いてはいますけど、今でも好きな作品ですし、ライブ映えもする。
桂佑 1回一般ウケするような音楽性に方向転換したので、逆張りの考えで真逆いったろと。そうなってくると不協和音というか、ちょっと気持ち悪い旋律だったり、リズムに関しては変拍子を入れたくなったりして。曲が先かテーマが先かはちょっと忘れちゃったんですけど、「村ホラー」というキーワードが自分の中であって、それを題材に曲作りをしました。
──コーラスにはSennzaiさんを招いていますね。
桂佑 はい。だいたい自分の中でホラー感を引き立てるために「こういう歌い方で、こういう声質の声が欲しい」というのはあって、イメージを伝えて何人か候補に挙がった中でSennzaiさんが一番合っていたのでお願いしました。Sennzaiさんとは前々からどこかで一緒にやろうとは思ってたんですけど、今回たまたまそういう機会が巡ってきました。
これを歌いこなせる人は日本にどれぐらいいる?
──「因習」は特にテクニカルな演奏を求められる印象を受けましたが、レコーディングはいかがでしたか?
太輝 全パート、普通では弾けないレベルの難易度ですね。なので、最初に桂佑くんがメンバーに謝ってました。
Ray デモを聴かせる前に、まず「ゴメン」って。全部の音がヤバいですね。もちろんボーカルも。でも、なんか不思議とキャッチーという。
太輝 楽器隊にだけすごく難しい要求をしてきて、自分がシャバいペラペラの歌を歌ってるボーカリストやったら怒りの矛先が向いちゃうかもしれないけど、「因習」を歌いこなせる人は日本にどれくらいいるんだ?というレベルなんですよ。それができる人間に曲を持ってこられたら、僕らも文句は言えないです。
──桂佑さんが制作するデモというのはどのレベルまで作り込まれてるんですか?
桂佑 だいたい完パケ状態まで作ります。あとはそれぞれに持ち味があるので、細かいところはアレンジしてもらって、返ってきたのを僕がまた聴いて「あ、やっぱこれはこうしてほしいな」とかディスカッションしながら仕上げていきますね。
──「因習」のように数か月かけて曲を完成させるのは、DEVILOOFにとってはいつものタイム感ですか?
桂佑 そうですね。でも、自分的にはわりと早いほうだったかな。何カ月もかかってるんで、人から見たら短くはないと思いますが(笑)。
DEVILOOFを聴いてブチ上がる浅野忠信
──そして「因習」のミュージックビデオには浅野忠信さんが出演されているとのことで。実現に至った経緯をお聞きしたいです。
太輝 4、5年ぐらい前かな? 浅野忠信さんがInstagramでフォローしてくれて。接点がなかったから「なんでやろ?」みたいな。でも、以前からバンドミーティングで「浅野さんみたいな雰囲気のある俳優さんに自分らの映像作品に出てもらったら、すごいものになるんじゃないか」みたいな話をずっとしてて。「因習」の音源が仕上がって、MVを撮るとなったときに「オファーすればMVに出てくれるかな……?」と冗談交じりで話してたんですけど、周りのいろんな方から意見をいただいて、正式にちゃんと依頼してみようと。それでInstagramのDMを通してメッセージを送った結果、実現したという流れですね。
──ご本人とお会いして、DEVILOOFのどんなところが好きかは聞かれました?
桂佑 「自分でもよくわからないんですけど、なんか好きなんです!」とおっしゃってました(笑)。
Ray 浅野さんご自身もパンクバンドやってらっしゃるじゃないですか。それで普段から激しい音楽は聴いているけど、YouTubeでDEVILOOFを見つけて「ここまで激しい曲を聴いたことなかった」と。
幹太 「DEVILOOFを聴いてるなんて、何かつらいことでもあるんですか?」と聞いたら、「つらいときにDEVILOOFを聴いてブチ上げるんですよ!」って。浅野さんレベルでご自身を高められている方は毎日大変やと思うんですよ。大変なときこそ、DEVILOOFでバイブスをアゲるとおっしゃってましたね。何よりMV撮影で「因習」の音源を流したときのテンションの上がりようといったら。「うわあ、きましたねえ!」って。演技じゃない、素の浅野さんを見ることができました。
桂佑 僕は映画を観るのが好きで、浅野さんが出てる映画もチェックしてたし、普通にファンだったので、浅野さんより俺のほうが高まってたと思うけど。
幹太 いや、それで言ったら現場にいた人みんなそうよ。
──桂佑さんは至近距離でリップシンクをするカットもありますね。
桂佑 長めにありましたね。やらされてました(笑)。
幹太 いや、でも遠慮なくてよかったと思うっすよ、あれ!
桂佑 遠慮するほうが失礼かなと思って。唾も飛んだでしょうし髪もベンベン当たってたでしょうけど、浅野さんはずっと笑顔で。本当に飾らない人だなと思いましたね。すごくいい人なんやなって思いました。
──セットも凝っていましたが、1日で撮り切ったんでしょうか。
桂佑 セッティングとか合わせると丸1日作業になってると思いますけど、撮り自体は12時間ぐらいだったんかな。
太輝 そうですね。浅野さんの演技力のレベルがすごすぎて、もう全部「OK! OK! はい、はい」って撮影が進んでいった。
幹太 「じゃあちょっとテストしまーす! あ、これで大丈夫です!」って(笑)。一瞬で終わってましたね。
太輝 今回のMVはDIR EN GREYの映像を撮られている近藤廣行さんに撮影してもらってるんです。以前から近藤監督の作り出す世界観がいいという話をメンバー間でしていて、監督には「今までのDEVILOOFのイメージもありつつ、新しいDEVILOOFも表現してください」とお伝えしました。
まずはこの1年を全力で駆け抜けたい
──最後に2025年、そしてこれから先のDEVILOOFの活動に対する皆さんのビジョンをお聞かせください。
太輝 今年は結成10周年イヤーなんで、DEVILOOF主催のライブやワンマンを増やせればいいなあと。まだ僕らのことを知らない人に向けてもライブをやっていければと考えています。12月には渋谷ストリームホールで、正真正銘ハッタリなしの有料ワンマンライブをするので、この日に向けて動いていきたいと思っています。もちろん来年以降の展望もあるんですけど、まずはこの1年を全力で駆け抜けたい。あと、海外にも行きたいですね。
桂佑 バンドのマネジメントはリーダーがマクロな視点でやってくれているので、僕はやっぱり10周年というよりかはこれから先のDEVILOOF……一時は方向転換だとかいろいろしましたけども、「これぞDEVILOOF、これがDEVILOOF」みたいなものを示していくような制作をしていけたらなと思っています。その形が固まってきたのを自分でも感じているので、もっともっとクオリティの高い作品を作っていければなと。
Ray 憧れてたバンドさんや海外のバンドさんと競演できたり、徐々に夢が叶ってはいるんですけど、まだ好きなアーティストはたくさんいるので、そういう人たちとも交流できるような1年にしたいですし、これまでと違うDEVILOOFも見せられるような年にできればと思ってます。
幹太 自分はYouTubeをやってるので、チャンネル登録と、Xもがんばってるのでフォローお願いします。
Ray それはバンドのビジョンか?
幹太 まあバンドに還元されるやろ、なんかの形で。
Ray ウッス。
幹太 そんな感じで今年もがんばりたいと思います!
プロフィール
DEVILOOF(デビルーフ)
2015年に結成されたヘヴィミュージックバンド。バンド名は「Devil's proof=悪魔の証明」に由来し、日本の文化として根付くヴィジュアル系と、海外で浸透しているデスコアを融合させ、日本人にしかできない世界に通ずる音楽を表現すべく活動している。2015年10月に1stシングル「Ruin」を発表し、国内外のリスナーの支持を得る。2023年4月にEP「DAMNED」をリリースし、徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビュー。2024年1月に3rd EP「Song For The Weak.」、2025年1月に配信シングル「因習」をリリースした。2024年より桂佑(Vo)、Ray(G)、太輝(B)、幹太(Dr)の4人編成で活動している。