音楽ナタリー Power Push - DEEMO

Miliインタビュー

海外発の音ゲーアプリで鳴らす 日本人の音

ゲーム自体がコケたらどうしよう

──初めて「DEEMO」をプレイしたとき、Kasaiさんはどんな感想を持ちましたか?

「DEEMO」のプレイ画面。

すごくできがいいと思いました。しっかり面白いし、世界観の描き方もよくて。僕らは曲でがんばるしかないわけですから、もしゲーム自体がコケたらどうしようって不安もあったんですけど、プレイしてみて「これはヒットする」って確信したんです。ピアノを弾いてる感覚を味わえるゲームなので、リズムを取るというより演奏してる感じに近いのが気持ちよくて。難易度もちょうどいいし、音ゲーに明るくない人にも入りやすくてよくできてると思います。

──Kasaiさんは普段からゲームに親しんでいるんですか?

そうですね。もともとゲームが好きでしたし、ゲーム音楽家になりたいと思っていた時期もあったんです。だから「CYTUS」や「DEEMO」で楽曲提供のクレジットが載ったときはすごくうれしかったですね。

──今回リリースされるサントラにはゲーム内の「MILI collection」に収録されている楽曲が5曲収録されています。これらの楽曲は「DEEMO」への書き下ろし曲として用意したものなんですか?

基本的にはバンドの曲として書いているものを「DEEMO」にも提供しているという感じです。「DEEMO」に入ることも想定しつつ、曲を書いているところはあります。

──Miliとしてやりたい音楽と「DEEMO」に合う音楽が近い距離にあるんですね。

本当にうまくマッチしてるんです。そんな突拍子もない曲じゃなければ、採用される曲が多いと思います。

──今回収録されているMiliの楽曲の中で思い入れの強い曲などはありますか?

V.A.「『DEEMO』SONG COLLECTION VOL.2」ブックレットより。

一番聴いてほしいと思うのは、HΔGの曲をリミックスした「Past the Stargazing Season」ですね。原曲がすごくいいんですけど、それをMili流のアレンジにしたらどうなるのかっていうのを楽しみながら作った曲なので。原曲とは違う解釈をゼロから組み立て直そうとしてますから、原曲を知っていても気付かない人がいるかもしれませんね。メロディは残しているんですけど、コード進行や構成などは何もかもいじり倒してますから(笑)。

作家のレベルが高いのが「DEEMO」の魅力

──サントラの中で気になった曲はどれですか?

M2Uさんの楽曲はダブステップの取り入れ方がホントに上手だなって思いますね。ダブステップなのに「DEEMO」らしさ、クラシカルなフレーズをうまくはめ込んでくるので、最初に聴いたときはビックリしました。あとは植松(伸夫)さんのバンド、EARTHBOUND PAPASの「Metal Hypnotized」。まさか自分の曲が植松さんの曲と同じCDに入るとは思ってもみませんでしたから。ものすごく光栄なことだと思いました。

──そう考えると「DEEMO」にはいろんな作家陣が参加していますね。

自分も含まれるので変な感じですが、作家さんのレベルが高いのが「DEEMO」の魅力だと思っています。それと、もともと台湾で出たサントラのパッケージがけっこう凝っていて、今回日本でリリースされるサントラもイラストが飛び出す仕様になっているんですよね。日本でこういうパッケージの商品は見たことがないから、ぜひ手に取ってみてほしいですね。

新作用の曲をためている

──Miliの今後についても伺えればと思います。今春にリリース予定のアプリ「ミラーズ クロッシング」では、ゲーム内の音楽をMiliが担当するんですよね?

そうですね。ゲームのBGMは全曲僕が作っています。すでに40曲以上書いてますね。ゲーム音楽家になりたいっていう夢が叶いました。

──楽曲提供がMiliの活動の主軸になりつつありますが、ライブ活動はユニットにとってどういう位置付けなんでしょうか?

僕自身がバンドマンだったこともあって、ライブはやりたいんですけど、今はライブをする準備期間かなと思っているんです。自分の技術力を高める意味でライブをたくさんすることも大事なんですけど、今は1ついいイベントを作ってそこで皆さんと一緒に楽しむ形を目指そうと思ってるんです。もともとMiliは数多くライブをやるタイプのバンドではないと思ってましたから。

Mili「Mag Mell」ジャケット

──「DEEMO」内ではMiliの新曲が続々と追加されていますが、Miliとしての新作音源の発表も近いのではないですか?

2月に「Ga1ahad and Scientific Witchery」、4月に「Bathtub Mermaid」というオリジナル曲を動画として投稿しています。アプローチの異なる2曲なんですけど、どちらも自信作です。それと、いつか2ndアルバムを作りたいんです。「DEEMO」のおかげでたくさんの人がMiliのことを知ってくれて、1stアルバム(「Mag Mell」2014年9月発売)を手に取ってくれた方が非常に多かったので、皆さんに新曲を届けたいですね。

V.A.「『DEEMO』SONG COLLECTION VOL.2」 / 2016年4月20日発売 / 3000円 / EXIT TUNES / QWCE-00578
「『DEEMO』SONG COLLECTION VOL.2」
収録曲
  1. Untitled2 / FabricFactory
  2. Walking By The Sea / Edmund Fu
  3. Beyond The Stratus / Ice
  4. Sairai / Shinichi Kobayashi
  5. Entrance (Deemo Version) / Ice
  6. Metal Hypnotized / EARTHBOUND PAPAS
  7. Rainy Memory / Rabpit
  8. Peach Lady / Yuk-cheung Chun Trevor Lin feat. Silvia Su
  9. Hey Boy / Jerry Barnes Katreese Barnes Rodger Green
  10. Pilot / Rabpit
  11. Friction / HAMO from Mili
  12. I Race the Dawn / Kevin Penkin feat. Michiyo Honda
  13. Moon Without The Stars / Jerry Barnes Quiana
  14. Sanctity / Rabpit
  15. Hua Sui Yue / V.K
  16. Fable / Mili
  17. Past the Stargazing Season / HΔG Remixed by Mili
  18. Ephemeral / Mili
  19. Rosetta / Mili
  20. Witch's Invitation / Mili

<日本盤ボーナストラック>

  1. Lune / M2U / Arranger: M2U × Nicode
Mili(ミリ)
Mili

クラシカルなサウンドを土台に幅広いジャンルの楽曲を手がけるコンポーザーYamato Kasai(G)を中心にmomocashew(Vo)、Yukihito Mitomo(B)、Shoto Yoshida(Dr)、Ame Yamaguchi(Stylist, Art Director, Designer)、Ao Fujimori(Illustrator, Animator, Videographer)の6名からなる音楽制作集団。2013年11月にリリースされた音楽ゲームアプリ「DEEMO」に多数の楽曲を提供し、人気のトラックメーカーとしてその認知度を広める。2014年9月に1stフルアルバム「Mag Mell」を発表した。