残り1％でイケるんじゃないかって

──話を聞いていると、2組が互いをリスペクトしている気持ちがとてもよく伝わってきます。

竹森　いやー、そうですよ。Rakeはストイックだし、本当にすごいんです！ 僕、恐らく日本一早く「Rakeが大ヒットする」って思ってました。レコード会社の人たちよりも絶対早く（笑）。

一同　あはははは！（笑）

竹森　僕はいつもRakeの音楽的な遊びというか、発想力が素晴らしいと思っていて。デビュー前に路上で観たときもカホンとバイオリンっていう編成でやってたり、すごく面白いんですよ。常に垣根のない音楽を作ってるというか、そういう特徴がデビュー後の作品にも出てるし。特に1stアルバム「First Sight」を聴いたときは、その“音の遊び”がRakeらしいなって思いました。路上で初めて会ったときのワクワク感、「なんだこいつ？」みたいなゾクゾク感、音楽を聴いてすごすぎて笑っちゃうときの感覚とかが、その1枚を聴いてすぐよみがえってきたんです。

──それこそ、古くから知っているからこその気付きですよね。

竹森　はい。ちなみに、その1年前（2010年にリリースしたミニアルバム「all you need is…」）からは楽曲がガラッと変わったけど、何か心境の変化とかあったの？

Rake　「First Sight」に関しては、メジャーデビュー1年目で自分のふがいなさを知ったり、音楽を楽しめない状況に陥ってしまったときに出会えた新たなプロデューサーの影響が大きくて。その人に「無理にメジャーとか考えず、自分のやりたい音楽でリスナーとコミュニケーションを取っていったらいいじゃない？」って言ってもらって、そこから変わっていったんだよね。今までやってきたことを無理やり俺がメジャーに寄せる必要はないんだって。やっぱり……デビューしたときはなんだかわけわかんないし（笑）、大人たちがいろんなこと話し合ってるじゃん？ 「この曲にしよう」「いや、こっちだ」とかさー（笑）。

渡辺　確かそれも昔ファミレスで長々話したよね。

Rake　うん、そうだね（笑）。

──Rakeさんは先程「カラーボトルがずっと憧れだった」とおっしゃってましたけど、具体的にどんな存在だったんですか？

Rake　すごくリスペクトはしてるんですけど、カラーボトルが先にデビューしたときは近しいバンドだからこその悔しさもめちゃくちゃあって。でも、そのおかげで「自分も絶対にデビューする」っていうモチベーションを維持できたんだと思います。ずっと先を走っててくれたから、早くそれに追いつこうと思ってがんばれたんですよね。俺以外の仙台のミュージシャンにとっても、仙台から出た人たちがテレビで歌ったり、ラジオから曲が聞こえてきたりっていうのは何よりのモチベーションにつながってたと思う。やっぱりデビューの3～4年前は「この先いつまで続けられるのか？」っていう不安とずっと闘ってたし、正直、俺、少し悩んでたし（笑）。

竹森　俺からすると、そんなに才能あるのに悩むんだ？って感じだけどね。

Rake　いやいや、悩むでしょう（笑）。当時は99％もうダメだって思いながら、それでもあと1％どこかでイケるんじゃないか？っていう気持ちで。カラーボトルの背中を見ながら必死で追いかけてましたね。

カップルが「100万回の『I love you』」を歌ってた

──大川さんは、Rakeさんとの出会いはいつになるんですか？

大川“Z”純司（Dr / カラーボトル）　僕は地元のアコースティックイベントでRakeさんを観たのが最初ですね。当時からすごくカッコいい音楽をやる人だなと思っていて、歌い方やリズムの取り方を見てると、ウチのボーカルとは対照的だなって。竹森さんは結構自由に歌う人なんで、僕が入った当初は合わせるのがすごい大変だったんですよ（笑）。だからちょっとうらやましいなって（笑）。

一同　あはははは（笑）。

竹森　（笑）。……あ！ いきなりですけど、僕、広島ですごいことがあったんです。

──なんですか？

Rake　もしかしてあれ？ 電話かけてきたやつ？（笑）

竹森　そう。ツアー先の広島でラーメンを食べて店を出たら、自転車の2人乗りをしてるカップルが「100万回の『I love you』」を歌いながら走ってて。それを見た瞬間、「ちゃんと広島にも届いてるよ」ってRakeに伝えたくてその場で電話しちゃったんです。

Rake　竹森くんが興奮気味に「今、広島にいるんだけどさあ！」って。何事かと思ったけど（笑）すごくうれしかった！

竹森　CDが何枚売れたとかダウンロードが何万回っていう数字よりも、そうやって自分が肌で感じたことのほうがゾクってくるじゃないですか？ だからもう、これはすぐ伝えなきゃ！って思って。

──まるでドラマのワンシーンみたいな光景ですね。

竹森　僕もこれは日本一幸せな画を見ちゃったなって（笑）。あと、実はさらにもうひとつすごいことがあって、僕の隣の部屋に住んでる男の人がべランダを開けて「100万回の『I love you』」のサビを延々とループで歌ってたんです。多分失恋しちゃったみたいで、周りに「うるせーぞ！」とか言われてるのにへたくそな歌でずっと歌い続けてて。これは感動というか、さすがに大笑いしちゃったんですけど（笑）、でもちょっとした悔しい気持ちにもなって。自分らがちょうど制作でもがいてる時期だったし、そんなふうにRakeの歌が誰かの日常に浸透してるのがうらやましくもあったんですよね。「俺たちも負けてられないぞ！」って。