音楽ナタリー Power Push - コドモドラゴン

虎視眈々と高みを目指す

ヴィジュアル系バンド、コドモドラゴンが2ndフルアルバム「下剋上。」をリリースする。シングル「【VIper】」「SODOM」「WARUAGAKI」に新曲9曲を加えた本作は、ヘヴィメタル、ハードコアパンク、オルタナティブロックなどを独特のバランスで融合させたサウンド、「死ぬまでずっと文句垂れて生きるだけなら / 全部燃えて灰になれ」(「ゲバルト」)といったあまりにも直接的なリリックを含め、このバンドの独創性を強く押し出したアルバムに仕上がっている。

今回音楽ナタリーでは、バンドのイニシアチブを握るハヤト(Vo)をはじめ、華那(G)、ゆめ(G)、meN-meN(B)、チャム(Dr)のメンバー全員にインタビューを実施。バンドの成り立ちからメンバー個々のルーツミュージック、「下剋上。」の制作過程まで、たっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

クラス内で流行っていたヴィジュアル系

──コドモドラゴンの音楽には、ヘヴィメタル、ハードコアパンク、エレクトロなどのテイストが独特のバランスで融合されてます。このサウンドの成り立ちを紐解くために、まずはメンバーの皆さんの音楽的なルーツを教えてもらえますか?

チャム(Dr) 僕がドラムを始めたのはヴィジュアル系の影響ですね。

meN-meN(B)

meN-meN(B) 僕とチャムは中学時代の同級生で、その頃ヴィジュアル系がめっちゃ流行ってたんですよ。クラスの女の子はアイドル的な目線でヴィジュアル系に興味があって、男子は音楽性に惹かれて聴いているような感じでした。いろいろ流行ってましたけど、僕は当時からずっとDIR EN GREYが好きですね。

──DIR EN GREYも幅広い音楽を内包したバンドですよね。

meN-meN そうなんですよね。今改めて聴いても勉強になります。

ゆめ(G) 僕は中学の頃からDeep PurpleとかLed Zeppelinとかを聴いていて、ハードロックやヘヴィメタルが好きでした。ギターはずっと弾いてたんですけど、今言ったようなバンドを好きな人が周りにいなかったから、当時なかなかバンドを組めなかったんですよ。で、高校に入ったときに友達から「ヴィジュアル系のバンドをやろうよ」と言われて。誘われたこと自体がうれしくて、ヴィジュアル系を聴き始めたんです。

華那(G) 兄が音楽好きで、家でGLAYとか奥田民生さんの曲を聴いてました。ヴィジュアル系はクラスメイトから聴かせてもらっていて興味はあったんですけど、地元(福井)では普通のロックバンドをやってました。周りにヴィジュアル系バンドがいなかったから、ライブハウスに出ても浮いちゃうので。

──作詞・作曲を手掛けているハヤトさんは?

ハヤト(Vo) もともとピアノを習っていて、そのあとベースを始めました。とにかくうまくなりたくて、ハードロックとかプログレとか、見境なくいろんな曲をカバーしてたんですよ。あとは曲を知らないまま、雑誌に載ってる譜面だけを頼りに弾いてみるとか。その雑誌にDIR EN GREYの楽譜があったんですけど、「譜面だけでは自分の演奏が正しいかどうかわからない」と思ってCDを聴いてみたら「うわ、なんだコレ? 怖い怖い怖い……」と思いつつもハマりました。

meN-meN ははははは(笑)。

ハヤト 今もジャンルに対する好き嫌いはないし、すごく売れてるバンドはもちろん、売れてないバンドでもいいなって思うことがけっこうあります。幅広くなんでも好きだからこそ、こういう(コドモドラゴンの)音楽が生まれるんじゃないかな。

「今のシーンはつまんねえな」

──バンドの始動は2010年ですが、当初はどんな音楽性をイメージしていたんですか?

チャム 最初に集まったのは僕とハヤト、meN-meNの3人で、「こんな活動ができたらいいね」くらいのたわいもない話だけで、音楽性についてはほぼ何も話してなかったですね。ただ「誰にも真似できない、オリジナリティのある音楽をやりたい」という気持ちだけは初めからありました。当時からハヤトは作曲に関して長けてたんですよ、バンド歴も長かったし。

──確かにハヤトさんの作る楽曲はオリジナリティの塊ですよね。楽曲の構成、リズムのアレンジ、コード進行を含め、既存のフォーマットに頼らず、1から作り出しているイメージがあります。

ハヤト(Vo)

ハヤト そうですね。複雑になってしまうことも多々あるんですけど、それを狙って作ってるわけではなくて、ただただ“今のシーンはつまんねえな”と思って、新しいことを探してるだけなんです。

meN-meN いやー、難しい曲が多いと思うよ。

ハヤト (笑)。最初に作ったCDの収録曲ですでに変調とかテンポチェンジがあったからね。そう考えると、プログレから影響を受けてるところはずっとあるかも。基本的には僕が自由に作って、メンバーがカッコいいと言えば、そこを押し出していく感じ。もっと言えば、自分の中で腑に落ちて「イケる」と思えばいいというか。

meN-meN 最近はかなりバンドらしくなってきたというか、全員が同じ方向を向いて演奏している感覚があるんですよね。最初の頃はもっとハチャメチャだったんで。

ハヤト 何が曲の縦軸になっているのかもわからない状態でやってたからね。というか、今もこの4人はわかってないと思いますよ。

一同 はははは(笑)。

──そうなんですか?

ハヤト 曲に関して言えば、メインで作ってる俺以外はわからないだろうなって。それはもう、他人のことを100パーセント理解するのは無理っていうのと同じような話ですけどね。何かの猿真似で音楽をやっているバンドがいると、バカバカしいなって思うことがあるんで、自分たちはそうなりたくない。今のコドモドラゴンに大事なのは技術的なうまい下手ではなく、とにかく個性を出すことだと思ってやっているので、ヴィジュアル系やほかのジャンルの中でも埋もれないはずです。

──なるほど。メンバー間のズレがバンドの面白さだったり、発見につながったりもしますか?

ハヤト いや、俺はそれが面白くないんですよ。だから「ちゃんとやってよ!」って強く怒ることがあるんです。それでメンバーはすごく一生懸命にやってくれるし、そのうちにちゃんとした形になるんですよ。ツアー中にその変化が一番よくわかりますね。最初はナヨナヨしてるんだけど、ツアー中盤以降は「カッコよくなったよ」って俺がメンバーに言うことが増えますね。

──その“カッコよさ”の基準もほかのバンドとは違うわけですよね?

ハヤト いや、俺はミーハーなんでその部分に関しては世間と全然ズレてないと思うんです。“俺のカッコいいは世界のカッコいい”みたいな。

──例えばGLAYのファンにもMarilyn Mansonのファンにも受け入れられるはず、みたいな?

ハヤト うん、そうですね。ちなみにその2つのバンド、両方とも好きです。

2ndフルアルバム「下剋上。」 / 2015年7月8日発売 / B.P.RECORDS
初回限定盤Atype [CD+DVD] 3780円 / BPRVD-175
通常盤Btype [CD] 3240円 / BPRVD-176
CD収録曲
  1. SODOM
  2. FACE TO FAKE.
  3. アリア
  4. 救われない世界
  5. BLACK STAR
  6. 【VIper】
  7. キレイゴト
  8. ISOLATION(※ボーナストラック)
  9. WARUAGAKI
  10. ゲバルト
  11. halo.

※ボーナストラックは通常盤Btypeのみ収録

初回限定盤Atype DVD収録内容
  • 「アリア」ミュージックビデオ / メイキング映像
コドモドラゴン「6th Oneman Tour『下剋上。』」
  • 2015年7月10日(金)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2015年7月12日(日)大阪府 BIGCAT
  • 2015年7月14日(火)岡山県 IMAGE
  • 2015年7月16日(木)広島県 CAVE-BE
  • 2015年7月18日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2015年7月21日(火)高知県 DIME
  • 2015年7月23日(木)石川県 Kanazawa AZ
  • 2015年7月26日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2015年7月28日(火)群馬県 高崎club FLEEZ
  • 2015年7月30日(木)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2015年8月8日(土)北海道 cube garden
  • 2015年8月9日(日)北海道 cube garden
  • 2015年8月12日(水)青森県 青森Quarter
  • 2015年8月15日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2015年8月17日(月)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2015年8月22日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2015年8月23日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
コドモドラゴン「『下剋上。』-Tour Final-」

2015年9月5日(土)東京都 赤坂BLITZ

コドモドラゴン

2010年に結成されたヴィジュアル系バンド。メンバーはハヤト(Vo)、華那(G)、ゆめ(G)、meN-meN(B)、チャム(Dr)の5人。カラフルなビジュアルと、ポップス、プログレ、メタル、ハードコアなどさまざまなジャンルを融合させた楽曲を武器に、全国各地で活動している。2013年6~9月に己龍の47都道府県ツアー「愛 怨 忌 焔」のオープニングアクトに抜擢。同年11月には自身初のワンマンツアー「NEPENTHES.」で全国5カ所を回る。2014年1~4月にRoyzのワンマンツアー「Red Desire『LILIA』」に参加。4月に1stアルバム「Children's Dope.」をリリースし、今作を携えてのワンマンツアーを開催した。その後「【VIper】」「SODOM」「WARUAGAKI」という3枚のシングルを発表する間にワンマンツアーなどを開催したほか、台湾、香港、韓国でのライブに出演するなど活動の幅をアジア圏に広げた。2015年7月に2ndアルバム「下剋上。」を発表。同月より新作のリリースを記念した6度目のワンマンツアーを実施する。