なんでもありなのがヴィジュアル系

──メンバーの皆さんはハヤトさんの曲を演奏することについて、どんなふうに感じていますか？

meN-meN　道を切り開いているのはハヤトくんなので、俺らはそれに全力でついていくだけですね。

ゆめ　僕が聴いてきたハードロックは、ギターがけっこう強く前に出る音楽だけど、ヴィジュアル系は歌がメインだから、たまに間奏とかで前に出られるときは「よっしゃ！」という感じになります（笑）。

──なるほど。華那さんとチャムさんはどうですか？

華那　ハヤト氏がデモを持ってきた時点で、そのデモはフレーズがしっかり決まっていてほぼ完成してるんですよ。デモをもらう＝そのたびに新しい課題をもらうって感じなんですよね。ハヤト氏は僕が持っていないものをすべて持っていて、いつも「うわ、こういうフレーズは弾いたことがないな」って感じる。昔の曲を聴き直したときも、「やっぱりすごいことをやってるな」って思うことが多いです。

チャム　完成した曲を何度演奏しても全然飽きないです。普通は新しいCDが出て、「前とあんまり変わらないな」みたいに感じるリスナーも多いだろうし、演者側からしたら“そのバンドらしい”曲を続けてしまうこともあるのかなって思う。でもコドモドラゴンの楽曲に関してはそういうことは全然なくて毎回新鮮なはずです。リリースのたびに衣装も毎回違うテイストにしてますし。

──バンドのイメージを固定せず、意図的に変化させているわけですね。

チャム　最初にこのメンバーが集まったときにそういう話をしていたんですよね。「なんでもやれるのがヴィジュアル系のいいところじゃないの？」って。それができてるのは楽しいし、いろいろやって変化すること自体がバンドのイメージになったらいいなと。「次はどんな感じになるんだろう？」っていうワクワク感は、僕らが学生のときに好きだったバンドに求めていた楽しみでもあったので。

──新曲を少しずつライブで披露しているそうですが、お客さんの反応はどうですか？ 楽曲の変化に戸惑う人もいそうな気がしますが……。

meN-meN　「これはノリづらいかもな」と思う曲でも、1、2回ライブでやればお客さんはすぐに盛り上がってくれますね。僕たち自身に「ライブをみんなで楽しみたい」という気持ちがありますし、お客さん自体に対応力や順応力があるからこそ生まれる一体感もあると思います。

──ライブの盛り上げ方に関しても独自のスタンスがあると思うのですがどうでしょうか。

ハヤト　確かにこだわってはいますけど、曲と同じで複雑なことをしようとは思ってないです。一時期、お客さんと一緒に踊りを踊るバンドがいましたけど、俺、ああいうのは気持ち悪いなって。あれって、お客さんの自己満足に付き合ってるだけだと思うんですよ。俺らはライブに関してはあくまでも“アーティストありき”だと思っているし、マニアックな動きや踊りがあると、それがわからない人にとっては仲間はずれにつながっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、初めて観た人、初めて聴いた人でも自然に体が反応できるライブにしたいと考えています。あとは「楽しければいい」ということだけ忘れなければいいんじゃないかな、と。

──今回のアルバム「下剋上。」は前作「Children's Dope.」（2014年4月発売の1stアルバム）とまったくテイストが違いますね。

ハヤト　そうですね、やはり同じものは作りたくないので。前回は1stアルバムにして半分くらいはシングル曲が占めてました。そうなるとどうしてもキャッチーな成分が多くて、ベスト盤っぽく聞こえてしまう節があったんですが、2ndに関してはシングル曲が3曲だけだから、コンセプトを絞りやすかったです。あと、このアルバムを引っさげたワンマンツアーが控えていることを考えると、過去の曲と同じような曲を作ってもつまらないな、と。なので「2枚のアルバムをあわせてコドモドラゴン」という感じもあります。

meN-meN　今回のアルバムに入る新曲は今までに比べるとテンポを全体的に落としていて、大きなノリなんだけど、タルくないというか。でも今作に入るシングル曲はアップテンポのものが中心だから、アルバム全体でいい具合に緩急が付いてるんですよね。そういう意味でも飽きないアルバムになってると思います。

ゆめ、デモを持ち込むも一蹴される

──「下剋上。」にはハヤトさん以外のメンバーも作曲に参加していますね。まず「キレイゴト」の作曲はハヤトさん、ゆめさんの共作。

ゆめ　僕はワンコーラス分くらいのデモをちょくちょくハヤト氏に渡してたんですよ。アルバムの制作中もスタジオで聴いてもらったんですけど、「つまんない、次！」みたいな感じでボツになって（笑）。「でも、このサビは自信あるんだけどな」という曲を聴いてもらったら、ハヤト氏の中でヒットしたみたいで。

ハヤト　最初に聴いたときは、イントロがつまらなすぎて、伝わらなかったんですよ。最初からサビを聴かせてくれればよかったのに。プレゼンが下手過ぎる。

──厳しいですね（笑）。そして「ゲバルト」の作曲は華那さんとハヤトさんによるものですね。

華那　僕も同じような感じですね。数打ちゃ当たる的な感じで制作期間中にデモをけっこう作っていて、それを聴いてもらってました。レコーディング期間が終わるギリギリで採用になったデモが「ゲバルト」につながってます。ドラムのトラックはチャムに打ち込んでもらって、ベースはmeN-meNに弾いてもらって、ギターのアレンジはゆめに相談して。ハヤト氏には構成を練り上げてもらったし、みんなの力でできた曲になってます。

──「ゲバルト」はシンプルでポップなロックチューン。当然、ハヤトさんが1人で完結させる曲とは違うテイストが入ってきますよね。

ハヤト　そうですね。アルバムの最後の2曲「ゲバルト」「halo.」は制作の最後の最後にできた曲なんです。それまでは「今回のアルバムは大人っぽい感じになりそうだな」と思ってたんですけど、この2曲でコドモドラゴンらしくまとまったので、完成したとき華那にも「助かったよ」って言いましたね。俺は性格的に「つまんない」ってハッキリ言うことも多いんですけど、最近はメンバーも曲をたくさん作ってくれるようになったし、ありがたいと思ってます。

──せっかくデモを作ったのに「つまんない」なんて言われるとショックを受けませんか？

華那　ないですね。逆に「使ってもらえるようにがんばろう」って思います。自分で曲を作ることで、ハヤト氏のすごさもわかりますし。

ゆめ　そうだね。勉強になりますね。

──すごい信頼感ですね！

ハヤト　ははは（笑）。一緒に曲を作るのって、1人で作る以上に大変だったりするんですよ。でもそれが新しさにもつながるので、みんなで作っていきたいという気持ちは強くなりましたね。