ナタリー PowerPush - ココロオークション

「聴き手の心の価値を高める音楽」を求めて

「今の曲、『ナゾノクサ』っぽいな」

──バンド名、アルバム名とインパクトが強いタイトルが続きますが、そんなアルバムの1曲目も「ナゾノクサ」とインパクト絶大で(笑)。

冨山吉孝(G)

粟子 ふふふ(笑)。

冨山 初めて聴いた人はどういうこっちゃってなりますよね。

粟子 僕らとしてはまったく違和感ないんですけど。

冨山 確かに(笑)。

粟子 でもインパクトを与えようと思ってやってるわけじゃないんですよ。

──それは今日お話を聞いて、よくわかりました。これらの言葉が自然に出てくるのがココロオークションならではの個性なんでしょうね。

粟子 そっか。これが個性なのか……ここで気付けてよかったです(笑)。

──この「ナゾノクサ」っていうタイトルは、ゲーム「ポケットモンスター」に登場するポケモンのことですよね?

粟子 そうです。最初、歌詞もタイトルも付く前にこの曲をメンバーに聴かせたら、井川くんが「今の曲、『ナゾノクサ』っぽいな」みたいな意味わからんことを言って。じゃあ「ナゾノクサ」っぽい感じで歌詞を書こうというのが始まりで、それからは僕がメロディをみんなに聴かせて、井川くんがタイトルを付けて、僕がそのタイトルからイメージした歌詞を書くっていうやり方でしばらく作ってました。

──ココロオークションとして歌で伝えていきたいことって、どういうことでしょう?

粟子 自分では特に意識して書いてるわけではないんですけど、「がんばれ!」と強く訴えかけるよりも「一緒にがんばろうよ」みたいに背中をポンと押すみたいな歌詞が多くて。例えば「蝉時雨」では大サビで「さあ、風向きが変わったな 夏が終わってしまう前に 僕らは今」って歌ってるんですけど、「いつ行くの? 今でしょ!」みたいな感じを遠回しに伝えてるんです。「後悔するよ? 大丈夫? 今行かなあかんよ?」っていう感じのニュアンスで。3曲目の「夢の在り処」もそんなテイストですね。

──なるほど。楽曲のトーンもあってか、力強く「ついてこいよ」「行こうぜ」というよりは、隣に立ってやさしく囁ききかけているような心地よさを感じました。

粟子 そうなんですかね。だったらいいな。ふふふ(笑)。客観的に見るとけっこう少年目線の歌詞も多いし、聴いてる人を勇気付けたり奮い立たせたりしたいのかもしれないですね。僕自身、やれなかった後悔を残すことがすごくイヤで、そういう思いを伝えたくて歌ってるっていうのもあるし。

「蝉時雨」は僕らの運命を変えた大事な曲

──アルバムの最後に収録されている「蝉時雨」を題材にした短編映画も制作したんですよね。すでに昨年の夏には撮影していたそうで。

粟子 そうなんです。やっぱり夏の曲なんで、どうしても夏に撮らないと意味ないと思って。

──すでに撮影は終わってるんですか?

粟子 映像は撮り終わっていて、PVはYouTubeで公開しています。で、短編映画のほうは今は編集を進めているところです。こっちは15分、20分くらいの作品になる予定です。

──ではPV自体はその短編映画のダイジェストというか。

井川聡(Dr)

井川 そうですね。映画のストーリーを凝縮したような内容で。

冨山 ロケーションとかめっちゃいいですよ。あと役者の方の演技もめっちゃよくて。撮影を見学させてもらったんですけど、演技が本格的でやっぱちゃいますよね。

粟子 めちゃめちゃいいものになりますよ、これは。

──なぜこの曲で短編映画を作ろうと思ったんですか?

粟子 「蝉時雨」は僕らの運命を変えた大事な曲で、先ほど話した「eo Music Try 2011」もこの曲で優勝したようなものなんです。この曲は聴いてると夏の景色が浮かぶんですよ。それでPVを撮ってみたいな、でも撮るんやったら夏に山奥でロケやなと。そんなことを去年の春ぐらいから考えてたんです。マネージャーさんとも話し合って、それやったら田舎で撮影してみようかということになって。

大野 監督は以前から知ってる馬杉雅喜さんという方にお願いしました。

粟子 馬杉さんは知り合いのバンドのPVを撮ってはって。曲を聴いてもらったらすぐに映像のアイデアをパッと出しはる人だったんで、もうこの人しかいないってことでお願いしたんです。で、話を進めていくうちにPVとは別に映画も作りませんかみたいなお話をいただいて。

──ああ、短編映画は自分たち発信というより、「蝉時雨」にインスパイアされて監督のほうから映画を作りたいと申し出があったんですね?

大野 ですね。話がどんどん大きくなっていって驚きましたけど、映画にしましょうって言ってもらえたのは正直うれしかったです。それに「蝉時雨」なら映画にピッタリやろって僕らも思ってたんで。

最強の曲を人生で1曲は書きたい

──ここまで話を聞いていて思ったんですが、ココロオークションって着実に1つひとつ階段を上がっているなと。それにつれて知名度も少しずつ高まってきたと思いますが、今回の初全国流通CDやショートムービーといったアイテムを通じて、これまで以上に広まっていくのかなという気がしました。

粟子 そうなったらうれしいですね。

──それこそ今まではライブハウスでココロオークションのライブを観て、気に入った人が会場でCDを買っていたのが、今度は何らかのきっかけでCDを手にした人や短編映画を観た人がライブハウスに足を運ぶことになるかもしれないわけですし。

大野 本当にその通りですね。そうなるように僕らもがんばらないと。

──ではバンドとして、今後どういう道を進んでいきたいという目標はありますか?

粟子 そうやなあ……やっぱり長く続けたいですね。音楽をずっとやり続けたい。もちろんライブもずっとやりたいですし。あとは……これはよく耳にする話ですけど、どんなアーティストも誰の心でも動かせるような最強の曲を人生で1曲は書けるっていうので、その1曲のためにがんばりたい。それが今のところの目標ですね。

左から大野裕司(B)、井川聡(Dr)、粟子真行(Vo, G)、冨山吉孝(G)。
ニューアルバム「七色のダイス」2014年4月2日発売 / 1728円 / CLOUD ROVER RECORDS / CRRC-1007
収録曲
  1. ナゾノクサ
  2. ワールド
  3. 夢の在り処
  4. Answer
  5. 君の魔法
  6. バタフライ
  7. 蝉時雨
ココロオークション

2010年7月、大阪在住の大学生4人で結成されたロックバンド。メンバーは粟子真行(Vo, G)、冨山吉孝(G)、大野裕司(B)、井川聡(Dr)。関西地区でのライブ活動を経て、2011年5月には過去に→Pia-no-jaC←、アシガルユース、蜜などを輩出した大阪・knaveの“GOLD MEMBERS”に選出された。同年には「MINAMI WHEEL 2011」「見放題2011」といったイベント出演を経て、関西最大の音楽コンテスト「eo Music Try 2011」でグランプリを受賞。2012年3月にはアルバム「TICKET」、翌2013年3月にはミニアルバム「深海燈」をライブ会場限定で発売する。その後も活動の幅を広げ、同年4月には同年代の仲間たちと「宇宙フェス」を実施。2014年3月、初の全国流通盤となるミニアルバム「七色のダイス」をリリースする。