音楽ナタリー PowerPush - Czecho No Republic
やっと鳴らせた5人の音
“チェコ節”に縛られるのはもったいない
──ネガティブな感情から始まった制作だったかもしれないけど、作品の全体像はやっぱりポップなムードに着地していて。音楽的にまったくイジけてないじゃないですか。それがこのバンドの魅力だと思ったし。1曲目の「Amazing Parade」はシニカルな視点も見えるけど、それよりも解放的な祝祭を鳴らすことに意識が向いてるし。
武井 そうですね。やっぱり音楽が好きですからね。メンバーみんな音楽に関しては探究心とピュアに向き合いたいんで。それとフラストレーションは一致しないというか。日々落ち込むけど、曲ができたときは明るくなれるし。
──USインディ的なサウンドアプローチ云々というのももはや大前提で、このアルバムではそこも飛び越えたポップミュージックが鳴ってると思うんですよね。
武井 音楽が好きだからいろんなものを聴いていて、趣味もだんだん変わっていくにつれて曲も変わっていきますよね。チェコを始めて2、3年経ったときに「DINOSAUR」を出して、あそこである種の“チェコ節”みたいなものが型にはまっちゃったような気がして。こういうサウンドを鳴らさなきゃいけないんじゃないか、みたいな錯覚に陥った時期もあったんですけど。
──そこから抜けられてますよね、今は。
武井 そうですね。そういうのに縛られるのがもったいないなと思って。特に「NEVERLAND」以降そう思ったのかな。今回はできた曲をとりあえずすぐにメンバーに聴いてもらって。「これはちょっとバンドのイメージとは遠いんじゃないか?」みたいな曲もあるとは思うんですけど、「新しくて面白いからやろうよ」っていう雰囲気で作れたので、そこで自由度が利いてきたのかなって思うんですよね。
日本人が愛せるメロディを
──武井さんが上げてくる曲を2人はどう受け止めてたんですか?
タカハシ やっぱり新しい風を感じましたね。たとえば「Clap Your Hands」の打ち込みの感じとかも今までにはなかったテイストだったし。みんなビックリして。ギターの……なんだっけ?
武井 ミュートギターね。
タカハシ とかも、すごく新鮮で。
八木 いろんなタイプの曲があって、どれもみんなでやりたいと思えるものだったんです。アルバムに収まらないくらいの数があったし。
タカハシ 武井さんの奮い立つ感じがこの「MANTLE」というアルバムに力強さを与えてると思うし。
──自分だけが創造できる音楽を希求する姿が描かれた「Melody」という曲がありますけど、旋律におけるポピュラリティに対するこだわりも高くなってると思った。
武井 日本語詞でやってるんだけど、歌謡曲調になりすぎないような、でも日本人が愛せるようなメロディがいいなと思っていて。海外の音楽に憧れて、その血液を100%もらって鳴らせるバンドもカッコいいと思うんだけど、俺は日本人がその血液を食らってどう吐き出すかっていうことをやりたいので。そこで生じる距離感をもっと縮めていきたいんですよね。前作はちょっとどっちつかずになっていた気もして。洋楽が好きなのもわかるけど、いわゆるJ-ROCKシーンでは浮いてるみたいな。かといって完全洋楽主義の人に認められるわけでもないし。どっちも微妙だなって。そこを詰めていきたいとはすごく思ってますね。
──それはすごく感じた。
武井 まだまだ詰めていきたいんですけど。
──最初に話題が出た、ボーカリストとしてのタカハシさんの生かし方も効いてますね。
武井 もともと楽器を弾いてほしくて入ってきてもらった子ではないので。声を楽器として鳴らせる人として入ってきてもらったから。過去曲でタカハシさんの声を入れるとどうしてもオリジナルと比べられるじゃないですか。でも、今回はそれがないのでどんどん入れちゃおうと。
──タカハシさんのボーカルがより機能することで明らかにポップ度は増すし、歌詞もフラットに入ってくるなと。タカハシさんがメインボーカルを務めてる「Field Poppy」は武井さんと八木さんの共作曲ですけど、この曲は子供も口ずさめそうですよね。ちょっと「NHK みんなのうた」的な趣があって。
タカハシ そうそう、そうなんです。でも、この曲は私のために作ったという感じではなくて、最初はこの3人の中で誰が歌おうかみたいな感じでそれぞれ試したんですけど、私が歌ったときに「ハマったね」ってなって。それからアレンジも変えていって。ちゃんと歌い上げるとかではなくて、それこそ子供も楽しめるような感じで歌えたらいいなと思って。いつもとちょっと違った部分を出せてると思います。ホントに「みんなのうた」で使ってもらえたらいいなあ(笑)。
武井 どうよ、自分の娘にも聴かせたら。
タカハシ なんでやねん。
八木 隠し子だ(笑)。
武井 否定してよ(笑)。
タカハシ ホントに隠し子がいたら面白いけどね(笑)。
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- ニューアルバム「MANTLE」/ 2014年7月16日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円/ COZP-937~8
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円/ COZP-937~8
- 通常盤 [CD] 2940円 / COCP-385922
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CD収録曲
- Amazing Parade
- No Way
- Clap Your Hands
- Crazy Crazy Love
- Field Poppy
- JOB!
- Summer Love
- Arabia
- Hello, My Friend Sophie
- Melody
- Changing My Life
- Maridabu
- 2014年宇宙の旅
初回限定盤 DVD収録内容
- “ENJOY! NEVERLAND Release Tour LIVE AND DOCUMENTARY”
- 2014.02.02 Live at Ebisu LIQUIDROOM(ネバーランド / レインボー / トリッパー / Clap Your Hands / MIKA / 国境 / MUSIC / Festival / ダイナソー / ショートバケーション)
- Czecho No Republic
「MANTLE TOUR ~2014年宇宙の旅~」 -
2014年8月19日(火)埼玉県 Livehouse KYARA
<出演者>
Czecho No Republic / Kidori Kidori -
2014年8月21日(木)千葉県 千葉LOOK
<出演者>
Czecho No Republic / go!go!vanillas -
2014年8月22日(金)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
<出演者>
Czecho No Republic / The Flickers -
- 2014年9月19日(金)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2014年9月22日(月)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2014年9月23日(火・祝)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2014年9月27日(土)広島県 ナミキジャンクション
- 2014年9月28日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2014年10月3日(金)大阪府 BIGCAT
- 2014年10月4日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2014年10月10日(金)東京都 赤坂BLITZ
Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)
武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加えた4人編成となり、2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリースする。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表。2012年8月に吉田がバンドを脱退し、2013年1月にサポートメンバーだったタカハシマイ(Cho, Syn, Per)、砂川一黄(G, Cho)が正式メンバーとして加入した。同年10月、2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たす。2014年7月にはセルフプロデュースのニューアルバム「MANTLE」をリリース。