- パーソナリティ
- Tom-H@ck
明るく泣かせるのがZAQの真髄
──今回のアルバムも含めて、今まで作ってきた自分の曲で一番好きなのは?
んー、あー、うわー! なんだろう……「NO RULE MY RULE」(2016年発売の2ndアルバム「NO RULE MY RULE」のリード曲)ですかね。なぜかメロが泣けるんですよ。歌詞にもすごく説得力があって、私が私自身のことを叫んでるなあって。MVを撮ってるときに監督さんが泣いたんです。バカ明るい曲なんですけどね。痛みを感じるメロディで、私は大好きです。
──作るときから自分自身を表現しようと思ってたの?
そうですね。私、ああいう強気なことを言うときは速攻で歌詞ができるんですよ、なぜか。言いたいことがありすぎて、あふれている中で、「NO RULE MY RULE」ではそれがダイレクトに表現できたから。バンドの力もすごいし、ほかの方にお願いしたブラスアレンジも素晴らしくて。みんなの力があって完成したんだと思うし、そういう曲が自分の指針になるんですよね。今回の「Zone」もそうですけど、アルバムのリード曲ってタイアップの縛りもないから、自分の言いたいことをストレートにぶつける場でもあって。3枚アルバムを出してきて3枚ともそうしてるんですけど、そのときに考えていたことがブレずにあるので、アルバムのリード曲はどれも強いと思います。ZAQの主張。
──それを書くときに、自分が解放されるんだろうね。
それだ。解放されるんだと思います。
──ZAQちゃんは自分の曲も提供曲も、アニメのタイアップが付くことが多いじゃない? タイアップ曲を書くときに一番強く意識していることは?
嘘をつかないことですね。アニメに対して。その世界の窓口になるか、その世界に生きている人々個人個人の心情を歌うか、私の場合は大きく2通りあって。曲のテーマを表現するときは世界観がめちゃめちゃデカくなるんですよ。でも例えば主人公1人の心情を歌うときは、その主人公がどこに向かって1クールを生きていくのかを、その人個人の小さい世界で考えます。原作の読み方も変わる。
──その2つでどっちが好きとかありますか?
やっぱ個人の心情を書くほうがトランスしやすいですね。世界を描いちゃうとどうしてもフワッとしてメッセージ性がなくなっちゃうので。
──アニメのシナリオってよくできてるから、個人のキャラクターに自分を投影したりされたり、それだけで人生経験、勉強になったりするよね。
そうそうそう。その世界に入り込めたら超楽しいですけど、なかなかつかめない作品もあって。「なんでこの人はこう考えるんだろう?」とか。そしたらまた別の人に視点をずらしてみたり(笑)。ファンの目線になって、原作ファンならこの作品をどう捉えるか、どんな世界を求めているのかを考えつつ原作を読み込みます。
──大事なことだよね。自分がどう感じたかも大事だけど、ファンがどういう思いでその作品を愛しているのか、そこを感じとって楽曲に落とし込んでいくのは。
それってタイアップのときだけじゃなくて、アーティストさんや声優さんへの楽曲提供のときも同じで。(内田)真礼ちゃんのアルバム(4月25日発売の2ndアルバム「Magic Hour」)は1曲目とラストを書いたんですけど……。
──すごい。扉を任されたんだ。
扉と出口を書きました。ファンが真礼のことをどう見ているか、真礼がファンのことをどう見ているかを勝手に妄想して。「真礼はこういうことを考えそうだな」と、真礼とは普段から仲がいいからこそ通じている部分で書いてみたり。
──そういうときはシンガーソングライターとしてのZAQちゃんとはモードが変わってるんだね。奉仕と言うか。真礼ちゃんも喜んでた?
はい。泣いてましたよ。TD(トラックダウン)のときに。
──よく泣かれるよね(笑)。
でも切ない曲で泣かれることは絶対ないんですよね。明るい曲ばかり泣かれるの。
──それがZAQちゃんの真髄のような気がするね。バラードで泣かせるのは簡単だけどさ、明るい曲で泣かせるのってすごいことだよ。
アニサマのテーマソング(2017年夏に開催されたアニメソングイベント「Animelo Summer Live 2017 -THE CARD-」はZAQが作詞作曲を手がけた「Playing The World」がテーマソングに採用された)もたくさんの人に「泣いた」と言ってもらえたんです。明るい曲でそう言ってもらえるのはうれしいですね。
“始まりの場所”でライブを
──じゃあ最後にいくつか。ZAQちゃんは今、このエンタメ業界をどう捉えていますか? ZAQちゃんだからこその意見が聞きたい。
んー、最近は本当にちょっとネガティブなニュースが多いので、クリエイティブとビジネスとお客さんの需要についてはいろいろ考えてしまいますね。私たちはアニメの音楽をやっているわけで、やっぱりキッズやティーンが相手だから、そこにマーケティングしなきゃいけないんだけど、お金を使ってもらわなきゃいけないことなので……そんなネガティブなことを考えつつも、私自身は音楽家であり、音楽以外は何もできないので、突き詰めていくしかない。ここで「どうせ売れないし」「どうせタダで聴かれちゃうし」と追及することを諦めてしまったら元も子もないし。私たちはクリエイトする力を持っているんだから、諦めないで本物を追及していくこと、音楽力を純粋に高めていけば、きっと「本物だ」と見てくれる人が必ずいると思うんです。
──そうだね。そこが崩れてしまっては土台も何もないからね。
私は私で、この5年間で培ってきた自信や力があるから、そこを裏切らないようまっすぐ音楽に真摯に取り組んでいこうかなと思います。
──めちゃくちゃ真面目じゃん(笑)。本当に今はすごい時代だよね。混沌としてきてる。
だからこそ面白いとも言えるんですけどね。どうやってサバイブしていくか。
──じゃあ次に。ライブとかリリースとか楽曲提供とか、今後特に力を入れていきたいことは?
ライブですね。今はライブをとにかくたくさんやりたいです。リリースについては……セルフカバーアルバムとか出したいです。新曲に関しては、アルバムを作った直後で自分が言いたいことは全部言い切っちゃったので、今は吸収したい。少なくとも1カ月ぐらいは頭を休めたいです。
──1カ月でいいの? 短くない?
1カ月でいいです。しばらく経ったら「曲作りたーい。言いたいことが溜まってきたー」って言い出すと思いますから。
──波があるんだ。わかりやすくていいね。
波があります。アーティストモードと作家モードの波もあるし。見た目も変わるんですよ、私。
──えっ?
アーティストモード、ライブモードになると目がギラつくんです。作家モードになると目の下にクマ、みたいな(笑)。ライブやりましょうよライブ。ツーマン。
──俺に言ってる? 全然いいけど。いつでも声かけて。じゃあ最後の質問。端的に、これからの夢。
夢! 夢は……パシフィコ横浜でライブがしたい。
──なんでパシフィコ横浜なの?
私にとって始まりの場所なんですよ。茅原実里さんのライブをパシフィコ横浜で観たときに「アニソンってすげえ!」って感動したんです。確か2009年の「Parade」ツアーの追加公演(参照:茅原実里の全国パレードにパシフィコ横浜追加)。たまたまテレビで聴いた茅原さんの曲が気に入ってCDを買ったら応募用紙が付いていたので、そこで生まれて初めてチケットを取りました。私、そのときバリバリのギャルで、ピンヒールを履いて行ったんですよ(笑)。隣の人に「使いますか?」ってサイリウムをもらったりして。「純白サンクチュアリィ」という曲で、会場が白いサイリウムで一色になったのを観て、そのとき初めて「ライブってこんなに楽しいんだ、こんなにすごいんだオタクの人って」って思ったんです。今やサイリウムで会場が染まるなんて当たり前に思いますけど、その文化にまったく触れたことがないギャルが初めてそれを観たときの衝撃はすごいですよ。ディズニーランドよりはるかに感動しました。そこから始まっての今なので。
──そう考えると、今はすごく幸せだよね。
超幸せですよ!
──じゃあパシフィコ横浜と言わず、もっと大きく、さいたまスーパーアリーナとか言いなよ。
だったら横浜アリーナがいいかな。だって横浜アリーナは私の一番大好きなアリシア・キーズが来たんですよ! 規模も大事だけど、ちゃんとストーリーがあるんですよ。1年目に「ANIMAX MUSIX」で横浜アリーナに立たせてもらったんですけど、あのときはシークレットゲストだったので名前は出てないんです。横浜アリーナはその一度きりなので、ちゃんとZAQとしてあのステージに立ちたいです。
- ZAQ「Z-ONE」
- 2018年5月16日発売 / Lantis
- CD収録曲
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- Zone
- カーストルーム
- 未開トオン
- Last Proof
- ロストグロウ
- -interlude-
- JOURNEY
- BRAVER
- SPEED JUNKY
- ordinary it
- Serendipity
- こころのなまえ
- 初回限定盤Blu-ray
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ZAQ LIVE TOUR 2016「NO RULE MY RULE」
2016年10月22日(土)東京・新木場STUDIO COAST- NO RULE MY RULE
- Sparkling Daydream
- ヴィヴァーチェ!
- KURUIZAQ
- hopeness
Music Video
- Zone
- Serendipity
- Last Proof
- カーストルーム
- BRAVER
- JOURNEY
- ツアー情報ZAQ LIVE TOUR 2018「Z-ONE」
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- 2018年8月18日(土)大阪府 umeda TRAD
- 2018年8月19日(日)愛知県 SPADE BOX
- 2018年9月1日(土)福岡県 DRUM Be-1
- 2018年9月7日(金)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2018年9月15日(土)東京都 新木場STUDIO COAST
- ZAQ(ザック)
- シンガーソングライター。3歳の頃からピアノを始め、音楽大学のピアノ科に進学。学生時代に触れたアニメソングに衝撃を受け、アニソンシンガーを目指すように。ニコニコ動画主催のコンテストでファイナリストとなったことを契機に、2012年、アニメ「未来日記」のキャラクターソング「正義戦隊ゴ12th!!」のサウンドプロデュースを手がけてクリエイターデビュー。また同年10月にはアニメ「中二病でも恋がしたい!」のオープニングテーマ「Sparkling Daydream」でアーティストデビューを果たし、その後もさまざまなアニメ作品に楽曲を提供している。2014年4月には初のオリジナルフルアルバム「NOISY Lab.」を発表。以来順調にリリースを重ね、デビューから5年で通算16枚のシングルを世に送り出した。2018年5月には3rdアルバム「Z-ONE」をリリース。
- Tom-H@ck(トムハック)
- サウンドクリエイター、プロデューサー。2009年に放送がスタートしたアニメ「けいおん!!」の楽曲を手がけ、注目を集める。作編曲家としてT.M.Revolution、でんぱ組.inc、ももいろクローバーZ、清 竜人25、SuG、ロッカジャポニカ、LiSA、マジカル・パンチライン、UROBOROSといったアーティストの楽曲制作に携わっているほか、映画やアニメなどの劇伴音楽なども多数手がけている。またOxT、MYTH & ROIDとして自身もアーティストとして活動している。2016年5月に総合エンタテインメント会社・TaWaRaを設立。TaWaRaではサウンドのみならずエンタテインメント事業全体のプロデューサーを務める。