- パーソナリティ
- 菅野結以
「ウララ」の歌詞はダサくて深い
──新曲「ウララ」についても話を聞かせてください。「ウララ」は別れを歌った曲だけど、曲調も歌詞もどこか明るくて。シリアスなテーマを歌うときでも誰もが楽しめるエンタテインメントな作品にするっていうのは、ビッケさんの持ち味なんだろうなって、この曲を聴いて感じました。
おっしゃる通りで「悲しいと思ったことをそのまま歌って、誰に聴いてもらえるの?」と考えちゃうんです。自分が歌にしたい感情を見つけたとき、僕はその感情に対してどう立ち向かっていくかを考えるんですよね。感情をそのまま出すのではなくて、必ず自分なりに料理をして作品として出すようにはしています。自分で言うのもなんなんですけど、実は「ウララ」の歌詞ってすごくダサいと思ってるんです。
──ダサい?
うん。自分で作ってて今の時代に合ってないし、ダサいとは思ってるんですけど、それと同時に大好きだとも思っているからこういう歌詞を書いてみたんです。僕は現代の日本のポップスって、歌詞の中身がないと思っていて。ふわっとしていて意味あり気な、でもハッキリとは何も言ってない。そういう曲があふれているんですけど、僕が好きだった昭和歌謡ではもっとわかりやすい言葉で、しっかり聴き手の胸を打つ歌詞が付けられていた。昭和の頃にやってたテレビ番組って音楽番組でも歌詞の字幕が出てなくて。それでも聴けばわかる言葉の強さが歌にあったんだと僕は思うんです。
──「ウララ」ではビッケさんが敬愛する昭和歌謡のスタイルを取り入れている?
そうなんです。例えば「おもひでひとつ大人になって 去年のことは忘れませんか」ってところ、現代の感覚から言ったら歌詞というより広告のキャッチコピーみたに捉えられるかもしれないんですけど、人の心に届ける歌詞は本来こういうものなんじゃないかって僕は思いながら、「ウララ」の歌詞を書いてみました。
──確かに「ウララ」の歌詞はちょっと阿久悠さんの歌詞の感じに近いような気もします。
作詞家が活躍していたあの時代の音楽をすごく意識したのが「ウララ」なんです。僕は1987年生まれだから世代じゃないんですけど、今振り返って聴いてみても昭和歌謡ってすぐに意味がわかってそれが深いと感じさせる力を持っているんですよね。今回「ウララ」の歌詞を書いてみて、聴き手の耳に引っかけることができる曲になったと思っているんです。願わくば、僕の書いた歌詞が心に落ちるところまでいってほしい、そう思ってます。
失敗しないと人間は変われない
──ビッケさんの歌詞論、面白かったです。時代に合っていないと思いながらも胸を張って作品を発表できるところ、すごくタフですよね。
自信を持って作品を生み出せている自負はあります。自分でも「よくこんなに自信持って生きてるな」と思うときはありますけど。
──(笑)。
「1回くらいブレとかないと、このままじゃただの天狗になってしまうな」って思ったときもあったんですよ。前の事務所にいたときにCDデビューの準備をしていたんですけど、なんだかうまくいってない感じがして。そのときに「そろそろ俺にも挫折するときが来たぞ」「春を待つ冬の時期が来るぞ」と思いつつ、「きっとこの先に来る挫折が自分の糧になるぞ」ってワクワクしてる自分もいたんです。
──めちゃくちゃポジティブですね(笑)。
案の定、事務所との契約が切れちゃって、半年くらい何もない時期があったんです。
──その挫折からはどうやって立ち直ったんですか?
幸いなことに僕に対してなんでも言ってくれる人が1人だけいて。その人が「才能があるのにデビューできなかった理由は、お前の人間性だ」ってしっかり言ってくれたんです。確かに自分の人間性が歌詞にも出てたと言うか、当時の僕が書いてた歌詞はあまりにも軽かったと思いますし。挫折とは言わないかもしれませんが、もう1つ転換期になったのは27歳のときの失恋。この失恋があって、初めて僕は自分の経験を歌にするってことができたんです。
──人間、どれだけ失敗したかが大事かってことがわかりますね。
やっぱり失敗しないと人間って変われないんです。僕も挫折しなかったらきっと今話した歌詞論に全然当てはまらないような軽い歌詞を書き続けていたと思いますから。
目標はない
──前にお会いしたときも目標とかを聞いたと思うんですけど、確か「ない」って言われた気がして。今でも目標は?
ないですね(笑)。ないと言うより、僕はなんでもやってみたい人間だから、目標とか自分のビジョンを明確に示してしまって、ほかの道を閉ざしてしまいたくないんです。例えば僕が「こういう存在になりたいです」って言ったら、それ以外のことは「きっと合ってないから、声をかけるのはやめておこう」ってなっちゃうんですよ。だから僕は自分がどうなりたいとか、あまり言わないんです。
──これから先の可能性はできる限り広げておきたいんですね。
この間初めてやってみた舞台役者も面白かったし、これから先音楽だけで生きていきたいとも思ってないんですよね。すべての物事に対してオープンな存在でありたいから、目標とかはいつも「ありません」って答えているんです。
- ビッケブランカ「ウララ」
- 2018年4月18日発売 / avex trax
- CD収録曲
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- ウララ
- Get Physical
- Black Rover
- 今ここで逢えたら
- 初回限定盤DVD収録内容
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「FEARLESS TOUR 2017 at Akasaka BLITZ」
- OPENING
- Take me Take out
- アシカダンス
- Broken
- 追うBOY
- Want You Back
- さよならに来ました
- Stray Cat
- THUDERBOLT
- Moon Ride
- Slave of Love
- ビッケブランカ
- 愛知県出身の男性シンガーソングライター。高校卒業と同時に上京しピアノを習得した後、本名の山池純矢としてソロ活動を開始する。2012年にビッケブランカに改名。その後はライブを中心に活動を続け、美麗なファルセットボイスとピアノが紡ぎ出すポップチューンを武器に各地のイベントなどに出場し話題を集めている。2014年7月に先行配信シングル「追うBOY」をリリース。同年10月に1stミニアルバム「ツベルクリン」を発売した。2015年8月には2ndミニアルバム「GOOD LUCK」を発表。2016年10月にミニアルバム「Slave of Love」でavex traxよりメジャーデビューを果たす。2017年1月にワンマンツアー、5月にツーマンツアーを行い、各公演のチケットはソールドアウトを記録。7月に1stフルアルバム「FEARLESS」をリリースし、8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」といった大型フェスに出演。9月から行われたワンマンツアー「FEARLESS TOUR 2017」は、10月の東京・赤坂BLITZ(現:マイナビBLITZ赤坂)でのツアーファイナルを含め満員御礼となった。2018年4月にメジャー1stシングル「ウララ」を発表。6月に全国6カ所を回るライブツアー「ビッケブランカ ULALA TOUR 2018」を開催する。
- 菅野結以(カンノユイ)
- 雑誌「LARME」「with」などで活躍するファッションモデル。10代の頃から「Popteen」「PopSister」の専属モデルを務め、カリスマモデルと称される。2010年8月に初の著書「(C)かんの」を出版し、その後最新スタイルブック「yuitopia」まで6冊の書籍を発売。アパレルブランド「Crayme,」、コスメブランド「baby+A」のプロデュースおよびディレクションを行っているほか、TOKYO FM「RADIO DRAGON -NEXT- 」、@FM「LiveFans」では豊富な音楽知識を生かしてパーソナリティを担当している。TwitterやInstagramなどSNSの総フォロワー数は約100万人におよぶ。2017年11月に初の写真集「Halation」を刊行した。