3カ月に詰め込んだ47都道府県ツアー
金澤 1枚目のCD(2018年3月発表の1stミニアルバム「きみとわたしとメロンソーダ」)を出したのは去年のことですよね。この作品には高校生のときに作った曲も入ってるんですか?
みき はい。高校生のときから作ってきた曲のうち6曲をチョイスしました。
金澤 その後、ワンマンも含めいくつもライブをやってきたと思いますが、高校生のときに思い描いていた道と合致していますか?
みき そうなってる部分もありますね。私、手帳に「私のこれから」みたいな未来の予想図を書いてたんですよ。しかも、現実バージョンと夢見てるバージョンの2パターン。
金澤 夢見てるバージョンは、すべてがうまくいきすぎたコースを書いたパターン?
みき はい。そのバージョンだと、今の歳で有名になりすぎて外を歩けない予定だったんです(笑)。月9の主題歌を歌っていて、そのドラマの主演が岡田将生さんの予定でした。唯一叶ったのは、ワンマンライブを開催することくらいですね。
金澤 おお。ちなみに、現実バージョンはどんなコースだったんですか?
みき 「25歳、音楽を辞めそうになる」みたいなことを書いてました(笑)。
金澤 ちゃんと波があるんですね(笑)。1stミニアルバムを出したあとは47都道府県ツアーを開催していますが、これはどうしてやろうと思ったんですか?
みき 「全国を回ってお客さんに会ってみたい」という軽い気持ちだったんですけど、スタッフの皆さんを道連れにして(笑)。全国でインストアライブをやりました。
金澤 みんながテレビで音楽番組を観ていた時代と違って、今はYouTubeやSNSのおかげでアーティストが身近な存在になっているから、近くで触れ合えることが大事なのかもしれませんね。ただ、みきさんは最初の作品を出したばかりで、自分の音楽がどれくらい全国に届いてるのかわからない状態だったわけですよね。
みき それがすごく面白かったんです! 沖縄や北海道にもお客さんがいることがすごくうれしかったし、逆に「もっとがんばろう」という気持ちになることもありました。あと、地方では若い女の子のお客さんが多くてびっくりしました。まっすぐで純粋な感じの高校生もいて。地方に行けば行くほど若い女の子が多くなるんです。
金澤 それはすごいことですね。遠いところにいる高校生もみきさんの等身大感に共感するんでしょうね。47都道府県ツアーをやる前と後では、精神状態や音楽と向き合う気持ちに違いは生まれましたか?
みき ツアーの3カ月間に思い切り詰め込んだから、なんだか気が抜けた感じもありましたね。そこから制作意欲も湧いていきました。
夏の終わりの夕暮れ時に野音でライブしたい
金澤 楽曲の制作に関わっている人たちは、もともとつながりがあった人たちなんですか?
みき 2ndミニアルバムのリード曲「ボクらの叫び」ではリアクション ザ ブッタさんにアレンジしていただいたんですけど、同じ埼玉出身だったことがきっかけでお願いしたんです。埼玉縛りで曲を作ろうと思って。
金澤 埼玉出身のミュージシャンってけっこういるんですか? 例えば大阪の人たちはみんな横でつながっているイメージがあるけど、僕は茨城出身で、同郷のミュージシャンがあまりいないんですよ。
みき あー、埼玉もそうかもしれないですね。東京に出てくる人たちが多いし、埼玉出身であることを押し出している人もあまりいないんじゃないですかね(笑)。
金澤 そうかな(笑)。この会場でライブをやってみたいという夢はあるんですか?
みき 私は野音(東京・日比谷野外大音楽堂)で歌ってみたいんですよ。夏の終わりの夕暮れ時からライブを始めたいです。もちろんいつかは日本武道館や地元のさいたまスーパーアリーナでもやりたいですけど、最初は野音ですね。あそこで観るライブって全部よくないですか? 演者もお客さんも気持ちよさそうだし。あの空気感は野音でしか出せないなと思います。
金澤 確かに。野音で観るライブは思い出に残りますよね。屋外でライブをするのは好きですか?
みき 前は苦手でした。高校生のときに「イナズマロック フェス」に出て初めて屋外で歌ったんですけど、会場のザワザワした音が気になったし、お客さんが自分の歌を全然聴いていないことがわかっちゃったんですよ。どう振り向かせようかということばかり考えちゃって、気持ちよく歌えなかったんです。高校生のときは特に周りの目に敏感で。
金澤 10代の頃は1つひとつの出来事がショックなんだよね。
みき そうなんですよ! すごくショックで。大人になるのは嫌だったけど、今はそういうことを気にせずに歌えるようになってきました。
金澤 ときどき路上ライブもやってるんですよね。
みき はい。この間ひさしぶりに告知しないでやったんですけど、自分はまだまだだなと感じました。でも何人かは声をかけてくれて、「自分のことを知っている人がいるんだ」と実感できてすごくうれしかったです。
次のページ »
歌のことでめちゃくちゃ悩んだ