edda×沙田瑞紀(ねごと)│物語で見せる揺るぎない世界観

最初から自分の世界観を持てるのはすごい

──歌詞の話が出ましたが、サウンド面についてはお互いにどのような印象を抱いていますか?

edda 私、ねごとさんのサウンドがすごく好きで。

沙田 えー、うれしい!

edda すごくバンドらしいサウンド感だし、曲ごとに色が立っていてキラキラした音があって。聴いているとワクワクすると言うか、テーマパークに連れて行かれて勝手に歩かされているような気分になります(笑)。そういう、聴く人をソワソワさせるようなアーティストを私も目指しています。

沙田 ねごとは私がメインでアレンジを担当しているんですけど、ボーカル(蒼山幸子)が書いてきた詞とメロディに音を置くパターンや、自分でメロディも作るパターンがあって。あと、ほかのメンバーが私の作ったオケにメロディを乗っけることもあるし、曲の作り方がすごくいびつで毎回時間がかかるんです。でも、もらった詞やメロディにはそのメンバーのカラーが必ずあって、それを追いかけることを大事にしています。eddaさんは編曲にも自分の思いや意見を反映させているんですか?

edda

edda 使う楽器や物語に合わせた音の展開について、アレンジャーさんとしっかりお話しさせていただいています。途中経過の音源も送ってもらって、さらにそれに対して意見を伝えて曲を作っていくんです。

沙田 原型のメロディはどうやって作るんですか?

edda 原型は弾き語りで作って。そのデモと一緒に、参考としてほかのアーティストの音源などをアレンジャーさんに送ります。

沙田 ちゃんと完成形の絵が見えているんですね。1stアルバムは曲によってアレンジャーが違うのに、ちゃんと統一感があってすごいと思います。どれもeddaさんの曲だと一聴してわかって。

edda アレンジャーさんはみんな「うるさいな」と思いつつも、私の話をしっかり聞いてくれているんだと思います(笑)。

沙田 ねごとが1stアルバム(2011年7月発表の「ex Negoto」)を出したとき、私は20歳で。アレンジについては「これでよくない?」という感じでした(笑)。結果的にはそのときの方向性がよかったんだと思うけど、eddaさんのように最初からちゃんと自分の世界観を持てるのはすごいですね。

1stアルバムは名刺代わりの1枚

──アーティストにとって、1stアルバムをリリースするときの心境ってどんなものなんでしょう?

沙田瑞紀

沙田 当時、私たちはメンバーみんな演奏が下手くそだったし、「こんな好き放題やったものが世に出てしまうんだ」という気持ちでした(笑)。なんだかテンパってるような感覚があって。衝動でできてしまった曲たちに意味なんてなかったし、インタビューでもいかに意味深げに話すかっていう(笑)。

edda あはははは!(笑)

──一方のeddaさんにはテンパってるようなイメージはなく、満を持して1stアルバムをリリースしたという印象です。

edda ありがたいことにこれまでのシングルはタイアップ曲が多くて、5月に出したミニアルバム(「ねごとの森のキマイラ」)もいろんなアーティストさんとコラボして作った1枚で、自分の色だけを込めた作品というわけではなくて。なので、今回初めて自分がやりたいことをたくさん詰めた作品を出せると思いでした。まだ私の音楽を聴いたことがない人にもアルバムを届けるために、自分ができることを最大限に表現しなきゃいけないなという気持ちもあって、ジャケットやブックレット、DVDの映像特典まで自分で考えて、名刺代わりの1枚になったと思います。

沙田 作曲はいつ頃に始めたんですか?

edda 22、3歳のときですね。福岡の音楽塾ヴォイスというところに通っていて、そこの宿題として作曲を始めました。実は1stアルバムにも宿題で作った曲が入っているんです(笑)。

沙田 へー! そうなんだ。

edda でも、ちゃんと世界観を持って音楽を作り始めたのはもっと最近ですね。eddaと名乗り始めてからは、自分とeddaという人物像を切り離して考えてます。

沙田 eddaという名前にはどういう意味が込められているんですか?

edda 昔の北欧の神話や物語を伝えるための伝記、書物のことをeddaって言うんです。私も音楽を作るときに物語を本みたいにつづっていきたいので、“人間版edda”という意味を込めてこの名前にしました。

基本的に1人でやりたい人

──アルバムの中で、沙田さんが特に気になった曲はありますか?

沙田 前半にもいい曲がいっぱんあるんですけど、7曲目以降の流れがすごく好きで。言葉選びが独特で、10曲目の「カイバノネイロ」の「がらんどうな身を引きずって」という歌詞とか、「がらんどうって何!?」と思って意味を調べちゃいました(笑)。「チクタクチクタク」や「リンドンリンドン」とか繰り返すような擬音も多くて、耳触りがいいですよね。どれも情景が浮かぶような曲ばかりで、「リンドン」とかはこの曲で1冊絵本を出せるんじゃないかってくらいです。

edda ありがとうございます。

沙田 メロディもすごく面白いですよね。なんて言うんだろう……ダダダダダッ!っていう感じで。伝わります?(笑)

edda わかります(笑)。ドラムをやっていたのもあって、リズム重視なところがあるんです。「カイバノネイロ」はリズムで遊びまくった曲で、うまく歌えないくらいで(笑)。

左からedda、沙田瑞紀。

沙田 とても不思議なことをやっているなと思いました。一番好きなのは11曲目の「merry」で、サビの半音ずつ下がっていくコード展開が印象的です。これを出し惜しみなくやれるのはすごいなと。

edda 「merry」はビッケブランカさんに作曲していただいたんです。私はギターで曲を作るので、こういう半音ずつ下がるコードは自分から出てこないんですよ。ピアノならではのコード展開がすごく新鮮でした。

沙田 なるほど! ほかのアーティストとコラボすると新たな発見があっていいですよね。そういう場合は自分から一緒にやりたい人を言うんですか? それとも提案されて?

edda 私は基本的に1人でやりたい人なので、放って置かれると誰とも一緒にやらないんですよ(笑)。なのでスタッフさんに提案していただいて、ビッケさんのときもCDをもらって「すごい音楽を作られる方だな」と思ったんです。「merry」はウエディングドレスブランド「b.b.duo」のテレビCMソングなんですけど、歌詞を書くのにすごく苦労して。「ハッピーで幸せなラブソングを書いてください」と言われて、スケジュールもあまりなくてどうしようと思いました。好き放題書いたら怒られちゃうし、結局自分なりの物語を書いて、きれいに見えるところを切り取りました。

沙田 そうだったんですね。確かにハッピーな感じを曲で表現するのって難しいですよね。

edda あと、ビッケさんの仮歌が英語だったんですよ。英語って日本語よりも言葉の音数が多いじゃないですか。そのリズムを残しつつ、日本語に落とし込むのが難しかったです。