CHiCOインタビュー|多彩な表情を切り取った1st EP「PORTRAiT」を紐解く

CHiCOにとって初のEP「PORTRAiT」が2月7日にリリースされた。

ソロプロジェクト始動後、昨年からコンスタントに楽曲をリリースしてきたCHiCO。そんな彼女の1st EPには堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)、白神真志朗、熊谷和海(BURNOUT SYNDROMES)、諌山実生、福岡晃子(チャットモンチー済)、渡辺翔といったアーティスト、クリエイター陣が提供した多彩な全5曲が収録されている。EPのラストを飾る楽曲「Prelude Romance」では、CHiCOが自ら作詞を手がけた。

音楽ナタリーではCHiCO本人にインタビュー。収録曲それぞれの制作エピソードとともに、本作リリース後に行われる初ワンマンライブ「LAWSON presents CHiCO 1st Zepp Live 2024 “PORTRAiT”」への意気込みを聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 星野耕作

ソロアーティスト・CHiCOとしての名刺代わりになるような楽曲を詰め込みたかった

──ソロプロジェクト始動後のCHiCOさんは、さまざまなアーティストやクリエイターの楽曲を歌われてきていますが、1st EP「PORTRAiT」にも非常に幅広い方々が楽曲提供されていますよね。

そうなんですよ! 豪華な方々に曲を書いていただくことができまして。本当にもう幸せです。

──曲を依頼するにあたってどんな基準で人選をしていったんですか?

まずはCHiCOとして音楽活動をしていく中でつながったご縁のある方にお願いしたのが1つ。BURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんは、アニメ「ハイキュー!!」きっかけでライブに出ていただいたり、BURNOUT SYNDROMESのアルバムでフィーチャリングさせていただいたこともあったんですよ。あと堀江晶太さんは前作の「エース」(2023年11月発売の1stシングル)でベースを弾いてくださっていたというご縁がきっかけですね。

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──一方、今回が初顔合わせになる方々もいますよね。

はい。白神真志朗さんや渡辺翔さんは初めましてでしたね。諌山実生さんと福岡晃子さんも初めましてだったんですけど、このお二方は私の音楽人生に大きな影響を与えてくださった方々でもあって。

──以前のインタビューで諌山さんへの憧れを話してくださったこともありましたよね。

そうです、そうです。幼い頃に諌山さんの「月のワルツ」を何度も何度も聴いて、その歌声にすごく憧れていたんです。福岡さんに関しては、高校時代に軽音楽部で初めてカバーして、初めて人前で披露したのがチャットモンチーの「風吹けば恋」だったので、こちらもまた私にとって大きな憧れだったという。

──そんな豪華な面々が書き下ろされた楽曲はものすごく多彩で、それによって新たなCHiCOさんの表情が引き出されまくっている印象です。楽曲提供していただくにあたっては、それぞれの方と綿密に打ち合わせをされたんですか?

直接お話できなかった方もいらっしゃるんですけど、基本的にはすべての曲で打ち合わせはさせていただきました。ソロとしてはこんな方向性でやっていきたいとか、今後はソロライブもどんどんやっていくので、そのうえでこういった楽曲が欲しいんですとか、そういったことは事前にお伝えしました。

──1枚のEPにまとめるにあたってのコンセプトのようなものもあったんですか?

EPとしてのテーマもありました。今回は自分にとって初めてのEPになるので、ソロアーティスト・CHiCOとしての名刺代わりになるような楽曲を詰め込みたかったんです。EPのタイトルを「PORTRAiT」にしたのもそういう理由。だからこそ、こちらからイメージを提案させていただきつつ、同時にクリエイターさんから見たCHiCOがどんなシンガー、アーティストなのかっていうのを曲に落とし込んでもらえたらいいなと思っていました。

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無理して今の自分を変えようとしなくてもいい

──1曲目の「エンパシア」は作詞を白神真志朗さんが、作曲を白神さんと堀江晶太さんが手がけた楽曲です。

この曲は制作の過程で大きな気付きを与えてくれたんです。というのも、これまでの私はクリエイターの方とコミュニケーションを取りながら、最近あったこと、思ったことを伝えれば、それを汲み取って曲にしてくださるんだろうなって、ちょっとふわっとした考えを持っていたところがあったんです。でも堀江さんと白神さんは「自分の思っていないことを歌ってほしくないから」とおっしゃってくださったうえで、日常の話はもちろん、ソロとしての活動方針や方向性を徹底的に聞いてくださって。いろんな話をさせていただいたんですけど、話をしているうちに「あれ、こんなこと言ったら矛盾してるように聞こえるかもな」とか、どんどん不安にかられて何を話せばいいのかがわからなくなってしまったんです。で、頭の中が真っ白になった状態で打ち合わせは終わり、家に帰ってガチ凹みをするっていう(笑)。

──心の中にある思いをパッと言語化するのって難しいことですもんね。

そうなんですよね。だから私は自分が何を言いたかったのかを家でしっかり考えたうえで、改めて「こういう楽曲を作ってほしいです」という思いをメールでお送りして。その結果、この歌詞が生まれたんです。

──歌詞にある「伝えたいことの意味は? その正解は?」というフレーズはまさにCHiCOさんの思いだったわけですね。

そうそう。「問いかけに窒息寸前で」とかもそうですけど、打ち合わせのときの私がそのまんま反映されているという(笑)。私は結局、この曲をどういう結末に持っていくべきなのかを打ち合わせの場でお伝えすることができなかったんですけど、それに対して白神さんは「それを悔しさと呼ぼう」「それを優しさと呼ぼう」という言葉でまとめてくださったんです。それを読んだとき、白神さんが私の背中をグッとひと押して励ましてくださった感じがしました。

──そういう意味では、まず最初にCHiCOさんを導いてくれた曲でもあるわけですね。

はい。これを聴くたびにちょっとホロリとする感覚がありますね。自分が抱えている言葉にできないような感情を表に出せる曲にしたかったんですよ。性格的に否定されることが怖いので、自分の意見を押し殺すことがけっこう多くて。でも、そういうところが嫌いだから直したいし、人間としてもアーティストとしてももっと成長していきたい。それを最高の形で汲み取っていただいたので、本当によかったなと思います。

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──サビ頭で「わかるよ」と歌っていることで、CHiCOさんと同じ悩みを抱えている人にしっかりと寄り添っているのも素敵ですよね。

人の顔色をうかがって、いろんなことをネガティブに無限ループさせていくことを自分の中にある優しさだと捉えればいい、別に無理して今の自分を変えようとしなくてもいいというメッセージは自分にとってものすごく大きな救いになったので、私と同じ気持ちを持っている人には絶対に届いてほしいですね。全体的に刺さらなかったとしても、節々で「あ、ちょっとわかるな」と共感してくれる人がいたらすごくうれしいです。

──疾走感のあるサウンドも気持ちを後押ししてくれますしね。

そうですね。案外、こういうサウンド感ってチコハニ(CHiCO with HoneyWorks)にはない雰囲気なので、自分としてはすごく新鮮な気持ちで歌えました。メロディの運びや譜割りはけっこう難しいんですけど、白神さんや堀江さんと意見をキャッチボールしながら歌えたのがすごく楽しかったです。