今年4月のライブをもって一時活動休止となったCHiCO with HoneyWorks。そのボーカリストであるCHiCOがソロプロジェクトを始動させた。7月15日にリリースした配信シングル第1弾「光のありか」に続き、早くも8月6日には配信シングル第2弾「TRUE BLUE SKY」をリリース。本格的な作詞にも挑戦し、チコハニでは見られなかったパーソナルな心情もリアルに発信しながら、ソロシンガーとして新たな魅力を存分に発揮している。
音楽ナタリーではソロデビュー後初登場となるCHiCO本人にインタビュー。ソロプロジェクトを始動させた経緯から、自身の音楽的ルーツや最近の音楽嗜好、そしてリリースされたばかりの2曲の制作エピソードまでたっぷりと聞いていく。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 星野耕作
「より成長したい」という思いからソロ始動
──CHiCOさんがソロプロジェクトを始めるに至った気持ちの動きを改めて教えていただけますか?
はい。CHiCO with HoneyWorksとしてデビューしてから去年で8年が経ったんですけど、その中で1人のシンガーとしてもっとできることを増やしたいという思いが強くなってきたんです。昨年10月にリリースしたチコハニのアルバム「iは自由で、縛れない。」では、シンガーとしてまたひとつ成長できた実感がすごくあったんですけど、一方では「自分はまだまだ子供なのかもしれない」「まだまだ視野が狭いのかもしれない」と思ってしまう面もあって。より成長したいという思いから、「ソロ活動をやってみたいです」という話をチーム内でさせてもらうようになったんです。もちろんチコハニとしての活動を通して成長していくこともできるんですけど、自分はあまり器用なタイプではないので、チコハニを一旦お休みさせていただき、まずはソロに専念することにしました。
──ソロでの成長をチコハニに還元したいという思いもあったわけですよね。
もちろんです。今まで以上にパワーアップしたボーカリストとしてチコハニに戻ることが大前提というか。そのためのソロプロジェクトです。
──その決断に至るまでに迷いはなかったですか?
迷いはもちろんありました。活動休止中はチコハニの新曲が出なくなってしまうわけなので、ファンの方への申し訳ない気持ちもありましたし、今まで応援してくれていた方々から「チコハニのほうがよかった」って言われちゃったらどうしようという不安もありました。とは言え、自分で決めたことなので、ソロという今まで経験したことのない世界に飛び込むことへの楽しみな気持ちのほうが大きかったです。
──周囲の方々は何かおっしゃっていましたか?
バンドメンバーのみんなはめちゃくちゃ背中を押してくれました。「俺もがんばるから、一緒にがんばろうね」と言ってくれたり、「さらなる成長を楽しみにしてるよ。しっかりパワーアップしたら、もう1回チコハニでぶっ飛ばしていこうぜ!」って力強い言葉をかけてもらえて。
──頼もしいし、より気合いも入りますよね。
そうそう。成長しなかったら間違いなく怒られるよなあっていう(笑)。絶対に成長してチコハニに帰るぞという気持ちに改めてなりましたね。
──チコハニとして活動休止前ラストとなった今春のZeppツアーでは、約8年間の活動を噛み締める瞬間もあったんじゃないですか?
ありましたね。右も左もわからない中、がむしゃらに走っていたデビュー当時を思い出したり、それぞれの曲に対してレコーディング時とは違った感情で歌えている自分に気付いたりもしました。その時々でいろんな悩みがあったけど、ファンの方々との温かいコミュニケーションによって支えてもらえた8年間だったなって思います。セットリスト的には、いつかやりたいとずっと思い続けていた「ハートの主張」と「ハートの誓い」を並べて歌えたのもすごくうれしいことでした。
等身大って何?
──ソロプロジェクトを始動させるにあたって、具体的にどんな動きをしていったんですか?
まず、ソロとしてどんなアーティストになりたいのかを突き詰めて考えていきました。ソロでもいろんな楽曲を歌っていきたいという大きなテーマはあるんですけど、曲に乗せるメッセージ的な部分はぼんやりしていたので、そこをチームの皆さんと話し合いながら決めていきましたね。そこで出たのが、自分の素直な思いを、自分の言葉として歌っていくこと。私は日常の中で思っていることをあまり口に出せないタイプなので、そういう部分を歌詞として書いて歌っていけたらいいなって。それが私と同じように思いを口に出せない人にとっての救いになるかもしれないし、世代の近い方には共感を抱いてもらえるんじゃないかなと思ったんですよね。
──CHiCOさんのパーソナリティを色濃く反映した楽曲というのが、ソロとしての1つの指針になるわけですね。
そうですね。ソロをきっかけに「CHiCOってどんな人間なんだろう?」と改めて自分を見つめ直しているというか。自分で作詞をすることで、そこがどんどん明確になっていくんです。今までは作詞に対してちょっと苦手意識があったんですけど、今は作詞の楽しさを知ることができました。
──チコハニでも作詞をされた楽曲がいくつかありますけど、そことはまた違った書き方をされている感じなんですかね?
まったく違いますね。チコハニのときの作詞は、自分の中で思い描くストーリーを言葉にしていく感覚だったんですよ。チコハニの曲は恋が実る、キュンキュンした曲が多かったので、だったら思い切り悲恋の歌詞にしようと思って「Love Letter」を書いたりもしました。コラボした作品のキャラクターに寄り添いながら、半分くらい自分の思いを込めて書いた「LOVE FIGHT」という曲もありますけど、完全に、全面的に自分自身のことを歌詞にするのはソロになってからが初めてです。
──「女子中高生がメインターゲットのチコハニには、崩しちゃいけない世界観がある。でも、ソロだったら等身大の自分で歌える」と、前回のインタビューでおっしゃっていましたよね(参照:CHiCO with HoneyWorks「iは自由で、縛れない。」特集)。それが今回、実現したわけですね。
そうですね。ただ……その“等身大”っていうのがまたすっごく難しくて(笑)。ソロ活動をするにあたって、「等身大ってなんなんだろうね」という話になったんですけど、まだ明確な答えは見つかっていないというか。そこは引き続き模索していきつつ(笑)、とにかく自分自身の思いを素直に楽曲へ乗せていこうと今は思っています。「あ、CHiCOってこんな人なんだ。私と一緒だ」みたいな感じで共感してくれる人が少しでも増えたらうれしいなっていう気持ちです。
──その“等身大”というキーワードにつながる部分でもありますが、顔出しして活動されるのもソロプロジェクトにおける1つの大きなチャレンジですよね。
はい。ミュージックビデオでは正面も左右もバッチリ映っています(笑)。そういうビジュアル面においても、自分の個性をみんなに見てもらえるのはすごくうれしいことで。チコハニのときとは違ったアプローチでメイクとかファッションに関しても発信していこうと思っているので、みんなの反応が楽しみです。
──活動スタイルの変化は、日常生活にも影響を及ぼしそうですよね。
ソロになってそれに気付いたんです! ソロのCHiCOとしては、みんなの近くにいるお姉さん的な感覚でありつつ、ちょっと手の届かない存在として思いを伝えたい気持ちがあるんです。上からというわけではないんだけど、いろんな経験から生まれた感情を通してみんなを導いてあげたいというか。そうなると、それにふさわしいファッションとかメイクを意識することも必要なんじゃないかっていうことに最近気付きました。衣装はもちろん、私服にも気を使わなきゃいけないんじゃないか?みたいな。今までみたいに「プチプラ最高!」とか言ってる場合じゃないのかもしれない(笑)。もっとちゃんとセルフプロデュースしなきゃなって。
──これからは街で声をかけられる機会も確実に増えるでしょうし。
はっ! 確かにそうですね。この8年間はそんなこと何も気にせず外を歩いていました(笑)。これからは気を付けないと。本当に大事、セルフプロデュース!
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CHiCOを作った不動の4アーティスト