chay|青春時代を彩るチャレンジングな春ソング

28歳になった今のchayが青春時代の自分に向けて

──サウンドは明るくポップで、疾走感のある仕上がりですね。

chay

今までにないくらいBPMが速かったし、シャッフルというリズムも実は初めてだったので、自分としてはかなり挑戦的なレコーディングでした。オケはバンドの皆さんが「せーの」で録ってくださったので、そこで生まれる疾走感を大事にしながら歌いましたね。

──歌も同時に録ったんですか?

いや、歌は別で録りました。ただオケ録りの際にも練習としてバンドの皆さんと一緒に歌わせていただいたんですよ。その結果、本番の歌録りではテクニカルなことをあまり考えすぎず、サウンドの勢いを大事にした歌い方ができたような気がしていて。フレッシュでエネルギッシュな勢いのあるテイクが録れたんじゃないかなって思いますね。

──「大切な色彩」は勢いのあるサウンドに寄り添ったエネルギッシュな歌声が確かに魅力だと思います。ただそこにはchayさんらしい繊細な表現がしっかり注ぎ込まれているようにも感じて。勢いだけに任せた荒々しい歌にはなっていないじゃないですか。

ありがとうございます! 実は私もそこは意識していたことで。例えば学生時代に戻った自分の目線で歌うこともできたとは思うんですけど、この曲はそうではなく、今の自分の目線で歌いたかったんです。28歳になった今のchayが青春時代の自分に向けて歌っているというか。そういう目線を意識したからこそ若々しくなりすぎない、荒々しすぎない歌い方になったんですよね。サウンドプロデューサーの武部(聡志)さんから「聴き手の方を包み込んであげられるような歌い方をしたほうがいいよね」とおっしゃっていただいたことも影響していると思います。

──メッセージが心地よく染みてくる素敵なボーカルだと思います。この曲のミュージックビデオは初顔合わせとなる岡川太郎さんが監督を務められていて。撮影を終えたchayさんは「今までにないMVになりそう」とSNSで発言されていましたね。

これまでの私のMVはスタジオにセットを作りこんで世界観を見せていくものが多かったんですけど、今回はロケだったんですよ。都会の街の中で歌を口ずさむ姿を撮っていただくことが意外となかったので、かなり新鮮で楽しかったです。

──今回の楽曲は、歌詞をコライトしたことや今までにないサウンド感、新たなスタイルのMVと、chayさんのさまざまなトライの結晶でもあるんですね。

そうですね。私は今デビュー7年目なんですけど、5周年を迎えるくらいまでは冒険することを素直に楽しめない自分がいたんです。よくも悪くも自分なりのこだわりが強くて頑固な部分があったから、視野が狭かったなと今振り返ると思いますね。でも活動を続けていく中で全幅の信頼を寄せられるクリエイターさんたちと出会えたことが私を変えてくれて。最近では新しい刺激を求めていろんなことにどんどんトライしていけるようになったんです。挑戦することの大事さは今回の作品でも感じることができましたね。

7年築き上げてきた信頼関係

──思えばCrystal Kayさんをフィーチャリングゲストに迎えた前作「あなたの知らない私たち」も大きなトライでしたね。

そうですね。Crystal Kayさんとのコラボは本当に大きな経験になりました。そうやって挑戦することが自分に何かをもたらしてくれることに気付けたのって、「あなたに恋をしてみました」(2015年リリースの6thシングル表題曲)で初めて多保孝一さんとご一緒させていただいたことが1つのきっかけだったかもしれないと思っていて。多保さんの引き出しの多さは本当に衝撃的で自分にはなかったものがどんどん出てくるんですよ。で、それが素敵なものになっていくのを目の当たりにして。

──しかも、あの曲はchayさんの存在を世に広める大きなきっかけにもなりましたし。

そうなんです。自分が挑戦したことをちゃんと評価していただけたので、そこで得た手応えが私の気持ちを変えてくれる大きなきっかけになったんですよね。

──とは言え、chayさんはシンガーソングライターでもあるので、自分なりの強いこだわりは今も持ち続けているわけですよね?

chay

はい。それはもちろんです。でも昔のような頑固さがなくなって、より柔軟になったと思います。今でも自分が「違うな」と思ったことに関しては、それが誰に対してであれ、ちゃんと伝えるようにはしてますけど、昔は頭ごなしに否定してたような気がするんですよね。アレンジャーさんに対して「ここはこのコードじゃなきゃダメなんです! 変えないでください!」みたいな(笑)。でも今は何か提案をいただけるということはそこに理由があるはずだって思えるようになりました。

──自分にはないアイデアに対して「じゃあ試してみよう」と思えるようになった?

そうですね。やってみてよかったと思えれば素直に取り入れられるようになったんです。

──chayさんが信頼を寄せている武部さんとの関係にも何か変化はありましたか?

武部さんに対してももちろん自分の意向はしっかりお伝えするようにはしていますけど、私のことをすごくわかってくださっているので、そこまでぶつかることはないですね。

──chayさんの制作チームに意見をしっかり伝えていますか?

昔に比べると私に判断を委ねてくださるようになった気はします。7年目なので、お互いの意見交換がしっかりできる関係になれている実感があります。理解し合えているからこそ「こんな案もありますが、どうでしょう?」みたいな話し合いがちゃんとできているというか。

──そういう変化があったからこそ、本作でコライトでの作詞に挑戦できたところもあったんでしょうね。普通に考えて、複数人で意見を出し合い、それをまとめて1つの作品に仕上げるのは本当に大変なことだと思うので。

確かにそうですね。いろんな経験をしてきた今の自分だからこそ作ることができた曲なんだと思います。