ナタリー PowerPush - チャラン・ポ・ランタン
こういうわけでエイベックス契約&たらふくシングル
押し入れは工作室っていう名前だった
──そして4曲目が「私の宇宙」。押し入れという狭くて孤独な空間が“私の宇宙”、という歌ですね。去年の青山円形劇場で初めて聴いたときは胸が詰まりました。小春さんが子供の頃いつも押し入れにこもってたという話を前に聞いていたので、余計に。(参照:チャラン・ポ・ランタン「たがいの鍵穴」インタビュー)
小春 好きだったんだよね、押し入れにいるのが。お母さんが押し入れの中に壁紙とか張って、ドラえもんの部屋以上にちゃんとした部屋にしてくれて。ハサミとかカッターとか画用紙とか、工作の道具もいっぱい置いてくれてて、カチッと電気もつけられる。だから工作室っていう名前だったの。
──何歳からいたんですか?
小春 2歳ぐらいからかな。そこでいろんなものを作ってた。狭いところが好きだからね。本読むのもそこだったし、高校生のときも押し入れでテナーサックス吹いて練習してた。全然防音されてないんだけどね。
──「誰かお話聞いて 人形たちにそっと 話しかける」という歌詞がありますが、そうやって遊んだりも?
小春 うん。自分で人形を縫ったりしてたの。裁縫箱も押し入れにあったから。で、話しかけたりして。ずっとそんな感じ。で、あまりにも1人でいるから、小学生のある日、お母さんに「友達連れてきていいんだよ」って言われてね。それまで呼んだりしたことなかったから。で、「はーい」って返事して、次の日、8人くらい家に連れてきた。極端でしょ?(笑) たぶん、そんなに仲良しでもなかったんだけどね。お母さんに言われたから連れてきただけで。それでお母さんがお菓子を用意したりしてて、パッて見たら小春だけそこにいなかったんだって。押し入れで1人で本読んでたんだって。
──小春さんらしい。
小春 うん。いまだにそういうところがあるからね、小春。中身はそう簡単に変わらないものですねー。
──この曲のメロディは温かさと切なさが混ざった感じで進みながら、間奏のアコーディオンソロではマイナーになるでしょ。そのあたりも小春さんらしいですよね。
小春 ホントだね。どうしてもそういうのを入れないと落ち着かないんだよね。
もも ちなみに歌詞は、円形劇場で歌ったときのとちょっと違うんですよ。最後のところが。
小春 そう。もうちょっと悲しい歌詞だったの。「一番星は光る 胸の中で」ってところが、「一番星は消えた あの部屋で」ってなってたんだけど、光らせてみた。
もも レコーディングしてるときに、歌ってみて、こういうふうに変えようってなったんですけど。最後の歌詞が変わっただけで、私の中ではガラッと変わりましたね。
──どういうふうに?
もも やっぱり「消えた」っていうとネガティブというか、寂しいイメージじゃないですか。だから円形劇場のときはそういう気持ちで歌ってたと思うんですけど、レコーディングのときは最後が変わったことによってそこに至るまでの気持ちも変わったというか。前半と後半で少しずつ気持ちが動いていく感じがありました。それによって曲全体の捉え方も全然変わりましたね。
しっかりラインに沿ってやる人がいない崩壊バンド
──それにしてもCDで続けて聴くと、「スーダラ節」から「私の宇宙」っていう振り幅がすごい(笑)。
小春 そうそう(笑)。だからちゃんと何秒か間あけたから。5分くらい間あけようかって言ってたぐらいなんだけど。
──同じアーティストとは思えないぐらい、この4曲でいろんな側面が出てますよね。
小春 ホントだよね。
もも 多重人格だね(笑)。
──ということで、また早くも次のツアーが楽しみになってくるというものですが、予定はありますか?
もも あ、11月に崩壊バンドでツアーやりますよ! 2人だけのツアーを去年やって、この前カンカンバルカンとフルメンバーでのツアーをやって、で、崩壊バンドのツアーもすごいやりたかったので。去年キネマ倶楽部でパフォーマーの人たちと一緒に崩壊バンドのライブを終えて、すぐ「またこのメンバーでツアーやりたいね」って言ってたんですよ。まあ、この前のカンカンバルカンとのツアーは構成も含めてけっこうカチッとしたものだったんですけど、崩壊バンドはね、メンバーがメンバーなので……(笑)。
小春 そうだねー。ウワモノが変わるだけでこんなに崩壊するんだって感じだからね。崩壊バンドはベースのさくらんちゃんぐらいしか、曲が外れてったときに線路に戻そうとしてくれるメンバーがいないから。
──ああ、即興でどんどん突き進んじゃうタイプのメンバーが多いから。
小春 うん。とっちらかっちゃってもいいんじゃない?って思うような人しか集まってないっていう(笑)。
もも 基本的に覚えてないよね、自分でやったプレイも(笑)。
小春 そう。「あのときのあそこがよかったよ」って言っても、「え? どんなんだっけ?」っていう感じだから。
──ある意味でアーティスト的なんですかね。ジャズ的というか。
小春 とんちゃんはそうだね。舞子たんもそう。二度と同じことを弾けないから(笑)。
──そもそもそういう即興的な面白さを追求しようということで、崩壊バンドが結成されたわけですか?
小春 まあ、そういう感じを狙ってたんだけどね。しっかりラインに沿ってやる人がいないから。だから「崩壊バンドって名前でよくない?」って。
もも 私の歌もそれによって全然違うものになるんですよ、同じ曲を歌ったとしても。だから今度のツアーは前回とはまったく違う感じになるだろうし、もう早くやりたくて。今からすっごい楽しみなんです!
- メジャーデビューシングル「忘れかけてた物語」 / 2014年7月9日発売 / avex trax
- CD+DVD / 1728円 / AVCD-83037/B
- CD / 1080円 / AVCD-83038
CD収録曲
- 忘れかけてた物語
- フランスかぶれ
- スーダラ節
- 私の宇宙
DVD収録内容
- チャラン・ポ・ランタンが行く!【Profile Video】
- 忘れかけてた物語【Music Video】
チャラン・ポ・ランタン
1993年生まれのもも(Vo)と1988年生まれの小春(Accordion)による姉妹ユニット。2009年に結成。2010年8月に「チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン」名義でアルバム「ただ、それだけ。」をリリースする。2012年6月にはZAZEN BOYS、group_inouらとのカナダツアーを大盛況に収めるなど海外での活動も多数。2012年9月に、約2年ぶりの新作アルバム「つがいの歯車」を発表すると同時に、ももが20歳の誕生日を迎える2013年4月9日までに3枚のアルバムをリリースすることを公約。各作品で話題を振りまき、2014年7月にシングル「忘れかけてた物語」でエイベックスからメジャーデビューを果たす。