ナタリー PowerPush - COMEBACK MY DAUGHTERS

NYレコーディング一発録り ニューアルバム「OUTTA HERE」

古き良きルーツミュージックの歌心と現代的なリズムセンスがオルタナティブなマナーで溶かし込まれた前作「EXPerience」から2年8カ月。稗田淳の脱退を受け、新たなベーシスト、戸川琢磨を迎えた新生COMEBACK MY DAUGHTERSがニューアルバム「OUTTA HERE」を完成させた。

BEASTIE BOYSやシェリル・クロウなど、名だたるアーティストがレコーディングを行ったニューヨークのスタジオでの録音は、ナチュラルに、そして着実に前進するたくましいバンドの歩みが滋味深く、味わい深いグッドミュージックに結実。ここではないどこかへ向かうバンドの今について、前日の痛飲のため(?)欠席したキーボードの小坂裕亮を除いたメンバー4人に話を訊いた。

取材・文/小野田雄

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ルーツミュージックを自分なりに消化していきたい

──ここ日本において、ハードコアパンクをルーツに、ポストロックに変化していったバンドは数多く存在していますが、フォークやカントリーの要素を渋くならない形で消化したCOMEBACK MY DAUGHTERSのようなバンドは珍しいですよね。

高本(Vo, G) 僕らは90年代のUSインディーズ好きが高じて、このバンドを結成したんですけど、その頃は音楽を掘り下げていくのが趣味だったというか、当時のバンドが何気なくやったカバーの原曲を聴いたことで、「もしかして、自分の好きな音楽って、ひょっとしたら……」って思うようになって。その頃、ルーツミュージックっていっても、せいぜい、ニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」くらいしか持ってなかったのに、掘り下げてみたら、いい音楽がいっぱいあって。今聴いても色褪せてない素晴らしいサビを含んだ70年代の歌モノのフォークや、シンガーソングライターの曲なんかを皮切りに、それが60年代、50年代、40年代と時代を巡っていって、気付いたら、アメリカの“みんなのうた”みたいな音楽を聴くようになっていったんです。

──そこに気付くと、アメリカのルーツミュージックには素晴らしい作品がホント山のようにありますからね。

高本 そうですよねー。そんな中、僕はやっぱりシンプルな歌モノがすごく好きなんですけど、それをいろんな趣味や自分の引き出しを持ったミュージシャンとバンドを続けていくことで面白い方向に向かっていけたらいいなって。まあ、そういうルーツミュージックを毎日聴いたりはしないんですけど、いつもそばにあるものだし、いつ聴いてもいいんですよ。やっぱり、僕らも変わってないようで変わっていってる、そんなバンドでいたいなと思っているんですけどね。

NYレコーディングは無駄をそぎ落とした一発録り

──そんなバンドのスタンスを色濃く打ち出した2008年の前作「EXPerience」から2年8カ月を経て、今回の新作「OUTTA HERE」で敢行したニューヨークレコーディングのアイデアは以前からあたためていたものだったんですか?

高本 そうですね。アメリカレコーディングのことは頭の片隅に収めていたんですけど、いつかやりたいなとはずっと思っていて。純粋なファン心理というか、アメリカの音楽が好きなので、実際に同じような現場に行って、同じような空気で録音してみたいなって。それまで僕はアメリカへ行ったことがなかったんですけど、それ以前に想像していたのは西部劇みたいなところ(笑)。バーのドアをバーンと開けるような、そんなイメージが強くあったので、実際、到着したときは「あれ? すごい都会じゃん」って思いましたね。

──はははは。皆さんが出掛けていったのは、ルーツミュージックの街、ナッシュビルではなく、「ゴシップガール」の舞台、ニューヨークですからね。

高本 でも、音楽的なところでいえば、街のあちこちで自分が好きなアーティストがライブをやっていたり、実際にレコーディングスタジオへ行ってみても、そこはビンテージ機材がたくさん揃ってるところだったんですけど、それらがぞんざいに積み上げられてる感じとか、すごくいいミキシング卓の延長コードが100円ショップで売ってるようなものだったり(笑)。日本では考えられないようなことがいっぱいあって、その点は僕のイメージどおりでした(笑)。

──渡米するにあたって、事前に曲やバンドアレンジを固めておいたんですか?

高本 そうですね。今回は日数が限られていたし、一発録りが最大の目標だったので、いいグルーヴが出せる状態までの準備はしていったつもりです。場合によっては、海外で作品を完成することができずに、日本に帰ってきてフィニッシュするっていうケースもよくある話だと思うんですけど、アメリカですべてを仕上げることが今回のレコーディングにおけるテーマだったので、やり残しだけは絶対に避けたかったんですよね。

戸川(B) 一発録りを提案したのは僕だったんですけど、そのやり方だったら、単純に手間が省けますしね(笑)。僕は今回のアルバムから新しくメンバーに加入したんですけど、それ以前も立ち会ってきた彼らのレコーディングは無駄が多いなって思っていたんですよね。もちろん、その無駄がいい結果につながることもあったんですけど、今のバンドの状態なら、そういう無駄をそぎ落としても十分やれるんじゃないかなって。今までのCOMEBACKのレコーディングは週末に2日間やって、そのあとまた普段の生活に戻って、その中でアイデアを考えていたんですけど、今回のニューヨークではぶっ続けてスタジオに入ったので、それ以前にある程度固めておけば、その場の発想も余裕をもってできるんじゃないかなって思ったんですよ。それに今はハードディスクのデジタルレコーディングが全盛ですけど、僕らがバンドを始めた頃はまだオープンリールやハーフインチのテープを用いたアナログレコーディングでやってたので、その頃に近い感覚でやってみるのもきっと楽しいはずだし、これまでアイデアを考えてこなかった人も「この期日までに考えてこなきゃ」って感じで臨んでくれるんじゃないかなって(笑)。

──無言の追い込みをかけた、と(笑)。そして、一発録りでは、1人ずつ楽器を入れていくスタイルのレコーディングでは出せない、その部屋の空間的な鳴りが演奏の臨場感につながりますし、実際、今回の作品はいい音で鳴っていますもんね。

CHUN2(G) そう、一発録りって、部屋の空気感をどーんと作品に入れる感じですし、力強く聞こえますからね。

中津川(Dr) 今までのレコーディングではみんなで作業していても、演奏するときは自分と向き合って、いかに自分のテイクがいいものになるかってことを考えるんですけど、今回はみんなが一緒に演奏しているわけで、自分が良くても、ほかのメンバーが良くなかったらテイクとしてはダメだし、逆に自分としては「うーん……」って感じの演奏だったとしても、トータルで聴いたら、いい場合もあるし、メンバー5人が一斉に演奏して、全員が満足できるポイントで一体になる瞬間が最高に楽しいんですよね。そのぶん、向こうに行く前に努力はしたので、それが報われて良かったなって(笑)。

ニューアルバム「OUTTA HERE」 / 2011年7月6日発売 / 2300円(税込) / PIZZA OF DEATH / PZCA-50

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6月15日よりiTunes Storeにて先行配信開始

CD収録曲
  1. Secret Castle
  2. Why
  3. Yours Truly
  4. Mona Lisa
  5. Slow Down
  6. Henji ha iranai
  7. Lavender
  8. Carpenteria
  9. Strange Boy
  10. Always On Your Side
  11. See You Later Alligator
COMEBACK MY DAUGHTERS(かむばっくまいどーたーず)

1998年結成。メンバーは高本和英(Vo, G)、CHUN2(G)、戸川琢磨(B)、中津川吾郎 (Dr)、小坂裕亮(Key)の5名。2000年8月に初音源となるアナログ盤「HOME OF THE SUN」を自主レーベルからリリースし、自主企画イベントも積極的に開催。2004年4月発売の1stアルバム「SPITTING KISSES」で、琴線に触れるメロディと強固なアンサンブルが幅広い層の支持を集める。その後もマイペースに音源を発表。2011年7月、4thアルバム「OUTTA HERE」をリリース。