ナタリー PowerPush - COMEBACK MY DAUGHTERS
メンバーチェンジが引き出したバンドの本質「Mira」
メンバー2人の脱退と新メンバー加入を経て、4人組バンドとなった新生COMEBACK MY DAUGHTERS。古巣のPIZZA OF DEATHから新天地のコロムビアにレーベル移籍を果たした彼らが2年ぶりとなるフルアルバム「Mira」を完成させた。2度目となるニューヨークレコーディングで、より自由に探求したロックのルーツとそのモダンな表現、あふれる歌心の狭間で、彼らが見たバンドの理想郷とは果たして?
取材・文 / 小野田雄 撮影 / 宮腰まみこ
バンドに起こった変化
──昨年の「Back in the Summer」リリース以降、COMEBACK MY DAUGHTERSは変化の季節を迎えましたよね。
高本和英(Vo, G) 大きく変わったのは、メンバーが2人抜けたことですね。「Back in the Summer」を出したあと、ドラムの(中津川)吾郎ちゃんが抜けるという話になって。その時点で残りのメンバーも「このバンドを続けたいのかどうか」とそれぞれ考えたと思うんですけど、みんな「続けていきたい」ということになって。新たにサポートドラマーとして松原(圭甫 / Dr)が参加して、バンドがいい感じになってきたところで、新作のレコーディング2週間前にキーボードの小坂(裕亮)が逃亡して結局脱退することになったという。まあでも、その状況をポジティブに考えると、今年で結成から15年目を迎える中、10歳離れた松原がサポートメンバーから正式メンバーになったことでバンドに新たな血が加わりましたし、小坂の一件に対する僕らの大人げない対応を含めて(笑)、松原にはこの短期間でバンドのいろんな側面を見せることができたので。彼には安心してバンドに加入してもらえたんじゃないかと思います。
──活動歴の長いCOMEBACK MY DAUGHTERSと若い松原さんはどういうポイントでハモれているんだと思います?
高本 メンバーそれぞれにポイントは異なると思うんですけど、僕の場合、簡単に言ってしまえば彼の人柄ですね。それもいい奴とかそういうことではなく、同じ地方出身者として、音楽に対して夢中になる感じが田舎者っぽいというか、よくわかるというか。
CHUN2(G) 今の音楽って移り変わりが激しいじゃないですか。その点、松原はいい意味でどんくさいところがあって。1つの音楽をぐっと掘り下げて聴いたり、そのこだわり方が古風な感じなんですよね。
戸川琢磨(B) 松原は自分が何か新しく音楽をやるときに誘おうと思って目を付けていたドラマーだったんですよ。そうしたら吾郎ちゃんが辞めるという話になったので、COMEBACK MY DAUGHTERSで一度叩いてもらうのも面白いかもなって思ってお願いしてみたんです。COMEBACK MY DAUGHTERSの地方出身者は高本だけなんですけど、松原も香川出身で。しかも、音楽がやりたくて高校生のときに上京してるんですよ。今どきそんな感じで上京してくるのは珍しいというか、相当な変わり者だなって(笑)。当初、メンバーは「もしかすると性格に難があるかも……」と不安がっていた部分もあったんですけど(笑)、試してみたらみんなうまくハマってくれました。
──当の松原さんはいかがですか?
もともと僕は高校生の頃からCOMEBACK MY DAUGHTERSをずっと聴いていたので最初はガチガチに緊張してたんですけど、みんなが気を遣ってくれてたこともあって、年の差を感じずにバンドへ参加できました。僕自身みんなと同じようにルーツロックが好きなこともあるし、その後のライブだったり今回のレコーディングを経て、音楽以外の会話もできるようになって。外から見たイメージそのまんまの、人柄のいいバンドだなって今は思っていますね。
──さらに今回のニューアルバムのリリースを機に、PIZZA OF DEATHからコロムビアにレーベル移籍されましたよね。
高本 はい。そのままPIZZA OF DEATHに所属させてもらえていたかもしれないし、レーベルとはそれだけいい関係を築けていたと思うんですけど。どんなバンドでも現状に満足することはないというか、作品を作ったりツアーをやったりすれば反省点は必ず出てくるし、やりたいことやもっとやれるんじゃないかという少しの可能性を感じたりするものだと思うんですよね。とはいえ、今回のレーベル移籍を機にフィールドを広げたいという大それた考えを持っているわけではなく。今回移籍した理由は、コロムビアからのオファーの熱意が異常だったからなんですよね。ホントかどうかはわからないんですけど(笑)、僕たちのようなやりたいだけやってきたバンドに対して「今どき、こんな熱い気持ちを持ってるんだ!?」と思うような熱烈なオファーがあって。その気持ちにグッと来ちゃったっていう、ただそれだけだったんですよね。
海外レコーディングの収穫
──そして移籍も決まり、ニューアルバムの制作という流れになるわけですけど。2011年のアルバム「OUTTA HERE」以降ルーツロックの要素は残しつつ、よりナチュラルに、より自由に音楽性を変化させてきた先で、今回「OUTTA HERE」同様ニューヨークレコーディングを選択した動機というのは?
高本 大きな理由は「OUTTA HERE」のレコーディングに対する反省点だったり、あのレコーディングをやったからこそ感じた悔いですよね。「あのとき、ああしておけばよかった」という気持ちが大きかったからこそ、もしニューヨークでレコーディングできるならまたやりたいって話になったんだと思います。
──「OUTTA HERE」は渡米前に、念入りな準備とリハーサルをした上でレコーディングに臨んだ作品でしたけど、メンバー間ではどこが反省点だったんですか?
高本 作品に対しての反省点ではなくて、海外レコーディングの旨味をもっと自分たちなりに理解して生かす方法についての反省ですね。僕はアメリカ、ニューヨークのバンドにすごい影響を受けているし、憧れの地でもあるので、前回はその憧れの地でレコーディングできる喜びが先立っていたんですよ。それに対して、今回は直前にメンバーが抜けたこともあって、今までは考えないまま続けてきたバンドについて「なぜ、自分がこのバンドをやっているのか」ということを考えた。そしたら今の僕たちは当初持っていた洋楽への憧れからバンドをやっているわけではないんだなということに気付いて。だから、ニューヨークという環境に舞い上がることなく、落ち着いた気持ちでニューヨークの利点を生かそうと思ったんです。
戸川 「OUTTA HERE」は初めての海外レコーディングだったこともあって、めちゃめちゃ気合いが入ってたのでビシビシやってたんですけど、今回はメンバーが抜けてやることもいっぱいあるという状況だったので「これはどうしたものか?」と考えながらやってて。オンオフのバランス感も20日間の作業を通じて自然と意識したので、そういう意識の変化は音に表れているんじゃないかと思いますね。
CHUN2 行く前の準備が大変な上に、今回は小坂が逃亡したこともあって負担は相当に大きかったんですけど、いざ向こうに行ってしまうと「やっぱりニューヨークは面白いな」って思いましたし、さすがに10日を超えたあたりで飽きて「もういいか」と思ったり(笑)。まあでもトータルで考えるとかなり充実していたと思いますし、楽しい経験でしたね。
収録曲
- Cold Audiences
- 21 years old
- Please, Please, Please
- No One Knows
- Meatpacking
- Steal her lips
- Alone in the dark
- Tornado
- sciolism
- Just leave me be
- Cherry blossoms
- El Dorado
COMEBACK MY DAUGHTERS緊急Ust生特番「カウントダウンSP」
配信日時:2013年7月3日(水)21:00~23:00(予定)
配信URL:CBMD0703 @ Ustream.TV - . 無料ライブ配信
ハッシュタグ:#cbmd_ust
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / 加藤ひさし(THE COLLECTORS)
MC:ネルソン・バビンコイ
「Mira Tour」
- 2013年9月5日(木)東京都 東京キネマ倶楽部(ワンマン)
- 2013年9月12日(木)愛知県 名古屋APOLLO THEATER(ワンマン)
- 2013年9月13日(金)大阪府 世界館(ワンマン)
- 2013年11月1日(金)宮城県 仙台CLUB JUNK BOX
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD - 2013年11月2日(土)岩手県 盛岡CLUB CHANGE
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD - 2013年11月9日(土)栃木県 宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD
COMEBACK MY DAUGHTERS
(かむばっくまいどーたーず)
1998年結成。2000年8月に初音源となるアナログ盤「HOME OF THE SUN」を自主レーベルからリリースし、自主企画イベントも積極的に開催。2004年4月に1stアルバム「SPITTING KISSES」をリリースし、琴線に触れるメロディと強固なアンサンブルが幅広い層の支持を集める。2013年7月3日、古巣のPIZZA OF DEATH RECORDSを離れて日本コロムビアより通算5枚目のニューアルバム「Mira」を発表。メンバー脱退や加入を経て、現在は高本和英(Vo, G)、CHUN2(G)、戸川琢磨(B)、松原圭甫(Dr)の4名で活動している。