ナタリー PowerPush - COMEBACK MY DAUGHTERS

NYレコーディング一発録り ニューアルバム「OUTTA HERE」

メンバーに多くを求めなかったことがオリジナリティを生んだ

──前作ではルーツミュージックの古き良きマナーにヒップホップ好きの中津川くんの現代的なセンスがミックスされたところに大きな特徴があったわけですが、今回、戸川くんと中津川くんのリズム隊の間ではどのようなやり取りがあったんですか?

中津川 僕個人でいえば、今言っていただいた芯はブレてないというか、やっぱりヒップホップが好きなんですけど、たっくんとの絡みで新しいノリが生まれたり、2人でスタジオに入って練習することも多かったので、そこでリズムセクションが強化されましたよね。

戸川 僕のプレイはどのバンドで演奏しているときも一緒なんですよ。ただ曲に対するアプローチとしては、COMEBACKの場合、高本がコードを持ってきたときになんとなく当てはまるポップな部分をベースで表現するのに、「これはTHE BEATLESだな」とか「これはニューオリンズかな」って適当に打ち出してましたね。僕は普段、過去の音楽からベースラインを借りてくることはしないんですけど、COMEBACKの場合、そういうアプローチが合うのかなって。(中津川)吾郎ちゃんとの絡みに関しては、高本の歌に対して、どうアプローチしていくかってことを自然な流れの中で考えることが多かったと思います。

──ニューオリンズ的なリズムということでいうと、「Labender」なんかはニューオリンズのセカンドラインのリズムですよね。

戸川 まさにそうですね。あと、「Yours Truly」なんかも、ニューオリンズのフォークソング「IKO IKO」を思わせるようなリズムなんですけど、(キーボードの小坂に対して)「このリズムに合うホンキートンクなプレイはできないの?」って言ったら、「できません」って返ってきたので、「じゃあ、いいか」って(笑)。吾郎ちゃんに対してはあれこれ求めたんですけど、ほかのメンバーにはそんなに求めなかったことが逆にオリジナリティにつながるというか、実際うまく作用したんじゃないかなって。

ハワイに行った感覚がプレイに表れているんじゃないかな

──そういうやり取りが今のCOMEBACKの音楽性の広がりにつながっているわけですね。そして、アルバムの前半、特に1曲目「Secret Castle」から4曲目の「Mona Lisa」までは変拍子のリズムを用いたりして、ルーツ寄りというより現代的なアプローチになっていますよね。

高本 まさにそのとおりです。後半の曲は、70年代のフォークだったり、ビートニクなもうちょっと古い音楽の影響から、歌のフレーズとコード進行が1つしかないパートを6回繰り返して終わるようなもの……僕のソングライティングは良ければワンフレーズでいいっていう考え方があるので、それをバンドでやってみたら面白いんじゃないかなってことで作ったんです。でも、僕らはいろんな音楽が好きだし、そういう曲ばかりになってしまうのもどうかなって思ったので、違う考え方で前半の曲を作ったんです。ここ最近はFOOLS GOLDみたいな新しい中東っぽいバンドがちょこちょこ出てきていて、そういう音楽からの影響もあったんじゃないかと思いますね。

CHUN2 僕の場合、空間的な鳴り、リバーブ感がテーマとしてあって。前々からTHE BEACH BOYSが好きだったこともあるし、最近だとTHE MORNING BENDERSだとかBEACH HOUSEみたいな、壮大で海を連想するような音楽。個人的に今年初めてハワイに行ったんですけど、海を見ながら、「こういうところはいいな」って思ったハワイ感がギタープレイに表れているんじゃないかな。

中津川 そのハワイ旅行は僕が全部アテンドしたんですけど(笑)、自分はARCADE FIREの「ザ・サバーヴス」とFEISTの「リマインダー」をなぜかずっと聴いていて、ああいうアルバムのぶっきらぼうな感じ。それからジェイ・ディーとかS.L.A.C.K.とかヒップホップの今っぽいビート感はずっと好きなんで、そういうものが自然と音に反映されていると思いますね。

戸川 僕はデスメタルからポップスまで、XTCやスティーリー・ダンからARCTIC MONKEYSやTHE MARS VOLTA、QUEENS OF THE STONE AGEまで、わりとフラットに聴きつつ、4人とはパンクとハードコアが共通点になってるというか。

高本 僕はハワイに行ったことないし、パンクとハードコアしかバンドの共通点がないっていうのもどうかと思いますけどね(笑)。ただ、今まではそういう音楽要素を自分の中で消化した上でないと衝動的に出せない、そういうジレンマがあったんですけど、今回はたっくんが加入して、彼のテイストも加わったことで、すごくフレッシュな気持ちでトライできたというか。そういう意味で頭の固さが取れて、リラックスして臨めた空気感も作品に入っているんじゃないかと。

──そんな今回のアルバムタイトルは「OUTTA HERE」、つまり、ここからどこかへ出ていくバンドの気持ちが表れていますよね。

高本 すごく素朴な意味で「いってきます!」っていう気持ちですよね(笑)。そこには皮肉も込められているというか、僕たちは飛び級なんてできないし、今までやってきたことすべてを背負ってやっていかなきゃいけないし、30代半ばだし、4枚目だし、ここから先、今までとは180度やり方を変えることは一生ないと思うんですね。でも、そういう僕たちであっても「じゃあ、次のステップへ行くよ」って気持ちは持っているし、自分たちなりに抱いているそういう思いをこのアルバムタイトルには込めたつもりです。

ニューアルバム「OUTTA HERE」 / 2011年7月6日発売 / 2300円(税込) / PIZZA OF DEATH / PZCA-50

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6月15日よりiTunes Storeにて先行配信開始

CD収録曲
  1. Secret Castle
  2. Why
  3. Yours Truly
  4. Mona Lisa
  5. Slow Down
  6. Henji ha iranai
  7. Lavender
  8. Carpenteria
  9. Strange Boy
  10. Always On Your Side
  11. See You Later Alligator
COMEBACK MY DAUGHTERS(かむばっくまいどーたーず)

1998年結成。メンバーは高本和英(Vo, G)、CHUN2(G)、戸川琢磨(B)、中津川吾郎 (Dr)、小坂裕亮(Key)の5名。2000年8月に初音源となるアナログ盤「HOME OF THE SUN」を自主レーベルからリリースし、自主企画イベントも積極的に開催。2004年4月発売の1stアルバム「SPITTING KISSES」で、琴線に触れるメロディと強固なアンサンブルが幅広い層の支持を集める。その後もマイペースに音源を発表。2011年7月、4thアルバム「OUTTA HERE」をリリース。