ナタリー PowerPush - COMEBACK MY DAUGHTERS
NYレコーディング一発録り ニューアルバム「OUTTA HERE」
「ロックは座って演奏しないでしょ」と言われて納得
──ただ、日本のスタジオの常識と今回行ったアメリカのスタジオの常識は大きく違ったりもすると思うんですが、そんな中での作業はいかがでした?
高本 まあ、スタジオによってやり方は違うと思うんですけど、僕たちがレコーディングしたスタジオとエンジニアの方はロックというものに対する考え方が古風というか、本物というか、「ロックなんでしょ?」ってことをよく口にする人だったんですよ。彼は僕たちが尊敬するアーティストの録音を担当したり、そういうアーティストのセッションをいっぱい見てきているんですけど、彼が考えるロックというのは、「ロックって、座って演奏しないでしょ」とか「ギターソロは音をデカくするでしょ」とか「曲名が入ってる歌詞のパートはもっとはっきり歌ったほうがいいでしょ」とか、そういう単純明快なことだったんですよ(笑)。僕はそれを冷静に聞きながら、「面白いな!」って思いましたね。でも、同時に、「確かにそうだな」って思いましたし、1個1個を妙に納得しながらレコーディングしていたのを思い出しますね。
CHUN2 僕なんか、座った状態でちっちゃくなりながら弾いてたギターソロが何回やってもうまくいかなくて、そうしたら、「立ってやれ」って言われたんですよ。で、そのとおりにやったら、自分としては「わ、これ、ヒドいプレイだな」って思ったんですけど、「それが一番いい!」って言われて(笑)。
高本 だから、「背中を丸めてギターのチョーキングをすることはないでしょ。もっと、体を反るものだし、顔で弾くでしょ」っていう考え方。当たり前すぎたので、教えてもらったってことではないかもしれないけど、妙に納得したんですよね(笑)。
今までの作品で一番自由なアルバムになった
──そうした作業を経て完成した今回のアルバムは、ルーツミュージックに対しての愛情を明確に打ち出した前作の前提を踏まえた上で、もっとナチュラルにそれを実践した作品であるように思いました。
高本 10年以上活動してきて、今回4枚目のアルバムを作るにあたって、僕はこの先、このバンドは自分たちに正直に、レコーディングを海外で行うということも含め、楽しい夢をひとつひとつ叶えていけるようなバンドでありたいなと思ったんです。だからあえて頭の中は空っぽの状態のまま、今の自分たちにとっての楽しいこと、5人各々がそれぞれの活動を背負った中で今一番素直に出せることを実践したつもりですね。だから、「ルーツミュージックが……」とか「インディーロックが……」っていう意識は特になかったし、過去の作品のことも考えず、結果として今までの作品で一番自由なアルバムになっているんじゃないかと思いますね。大体、レコーディングにあたっては、アルバム1枚の曲の統一感すら考えなかったですから(笑)。
中津川 今回のアルバムは、前作を出した後、前のベースの(稗田)淳ちゃんが脱退することになって、新しく、たっくん(戸川)をベーシストとして迎えた初めての作品だったこともあって、4人がフレッシュな気持ちに戻れたし、音楽性や選択肢の広がりを感じたんですね。だから、自分たちの欲求をそのまま形にしていって、それが曲になった感じは今までとは違う気がしますね。
CD収録曲
- Secret Castle
- Why
- Yours Truly
- Mona Lisa
- Slow Down
- Henji ha iranai
- Lavender
- Carpenteria
- Strange Boy
- Always On Your Side
- See You Later Alligator
COMEBACK MY DAUGHTERS(かむばっくまいどーたーず)
1998年結成。メンバーは高本和英(Vo, G)、CHUN2(G)、戸川琢磨(B)、中津川吾郎 (Dr)、小坂裕亮(Key)の5名。2000年8月に初音源となるアナログ盤「HOME OF THE SUN」を自主レーベルからリリースし、自主企画イベントも積極的に開催。2004年4月発売の1stアルバム「SPITTING KISSES」で、琴線に触れるメロディと強固なアンサンブルが幅広い層の支持を集める。その後もマイペースに音源を発表。2011年7月、4thアルバム「OUTTA HERE」をリリース。