映画「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」Creepy Nutsインタビュー|主題歌を担って見えてきたそれぞれの“帰る場所”

Creepy Nutsの逃げる演技

「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」よりCreepy Nuts。©テレビ東京©「バイプレイヤーズ 2021」製作委員会
「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」よりCreepy Nuts。©テレビ東京©「バイプレイヤーズ 2021」製作委員会

──ドラマ「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」第10話には2人そろって出演されましたね(参照:Creepy Nutsが「バイプレイヤーズ」でラップバトル、菅田俊は般若心経ラップで応戦)。

DJ 松永 そろって出るのは初めてでしたね。僕らが菅田俊さんと本宮泰風さんに銃を向けられて命からがら部屋から抜け出すっていうシーンがあったんですけど、Rはちゃんと転んだり滑ったり、ドタバタしながら時間をかけて逃げていくんですよ。でも僕は演技のことなんて何もわかってないから、何度やっても普通に部屋から出ちゃう(笑)。

──ただ帰りたい人だ(笑)。

DJ 松永 そうそう。僕だけ逃げるシーンにならないし、僕とRの逃げる時間差がすごい(笑)。

R-指定 でも俺も演じてるっていう感じでもなかったんですよ。菅田さんはタッパがでかくて、本宮さんはさらに体格もすごいから、その迫力に圧倒されて、普通にビビってしまってましたね(笑)。

増える役者仕事

R-指定
DJ 松永

──菅田さんの“般若心経ラップ”は、EVISBEATS「般若心経RAP」(2008年12月発売のアルバム「AMIDA」収録)を彷彿とさせる内容で最高でしたね。Rくんは「東京怪奇酒」や「危険なビーナス」「閻魔堂沙羅の推理奇譚」、松永くんも4月から放送の「生きるとか死ぬとか父親とか」への出演と、お芝居の仕事も増えてきていて。

R-指定 ありがたい話で。僕らMVの演技でも照れとったのに。

DJ 松永 オファーする側も相当チャレンジングだよね。Rはまだしも、俺の何を見て演技させようと思ったのか(笑)。やっぱり俳優業もするアーティストって基本フロントマンじゃないですか。だからRは前から演技には向いてると思ってたんだけど、なんでDJの俺に!?って(笑)。

──ウィル・スミスを例に上げるまでもなく、ラッパーが俳優業に関わるのはまったく珍しくはないけど、専業のDJが俳優をやるって言うのは相当珍しいですね。

R-指定 DJキャレドが何本か映画出てるけど。

DJ 松永 そうなんだ! でもキャラが強いじゃん。

R-指定 でかいし、煽る系のDJやし。でもスキル系のDJでは……。

DJ 松永 聞いたことないよね。

R-指定 「生きるとか死ぬとか父親とか」ではどんな役なん?(参照:DJ 松永とオカモト“MOBY”タクヤ、ジェーン・スー原作ドラマに出演

DJ 松永 ジェーン・スーさんのエッセイが原作のドラマなんだけど、スーさんを吉田羊さんが演じてて、その担当編集っていう役だね。けっこう俺っぽい役柄だったし、普通に吉田さんと会話する感じだったので、そんなに無理はなくて。あと、吉田羊さんが現場の雰囲気を作ってくださったんで、それに自然に合わせるだけだったのもありがたかった。

ラッパーの俳優業進出

──Rくん含めて、ラッパー陣の俳優進出も目覚ましいですね。特に般若くんはかなりコンスタントに俳優業をされていて。

R-指定 ホントに、般若さんやRHYMESTERのMummy-Dさんに続いて、ラッパーはかなりドラマに呼ばれてますね。「レッドアイズ 監視捜査班」には毎週ラッパーが出て……。

Creepy Nuts

──毎週悪役で……。

DJ 松永 だいたい死ぬっていう(笑)。

R-指定 梅田サイファーのKZさんにもオファーがあったのもマジでビックリして。あとKEN THE 390さんが悪役で呼ばれるなんて、日本語ラップシーンでは誰も思いつかない(笑)。

DJ 松永 思いつかないねー。日本語ラップ界でも指折りの人格者だからね。

R-指定 早稲田卒でリクルート社員だったのに悪役ですよ。しかもサクッと死ぬタイプの悪役(笑)。

DJ 松永 そう考えると本当にラッパーのイメージって悪いね(笑)。

──「閻魔堂沙羅の推理奇譚」でのRくんの役もなかなか愛しにくい役柄でしたね。

R-指定 ゆすり屋ですよ。しかも反省しないっていう。

DJ 松永 あと「危険なビーナス」では父親役だもんね。異常な振れ幅(笑)。

役者を経てスケールアップ

──演技の経験はアーティスト活動にエフェクトしそうですか?

R-指定 確実にフィードバックしそうですね。現状でも、そこで得たものがステージングや楽曲に生かされてるのかなって。般若さんが役者業を始めた頃、ライブを2人で観に行ったら、立居振る舞いやステージングが確実にスケールアップしてたんですよね。そういうふうに自分もなれたらいいなと。

──なぜラッパーが俳優に起用されると思いますか?

R-指定 ラッパーはアクが強いし、そこにいるだけで圧を感じさせる人が多いからじゃないですかね。般若さんが役者としてブレイクしまくったのは、そういう理由やと思います。「なんじゃこいつは!?」って惹き付ける力が、顔面から伝わってくるというか。

DJ 松永 フェスでバンド界隈ともつながれるようになって感じるのは、ラッパーの楽屋はやっぱりストリート(笑)。だから僕らが普通だと思ってた状況は、世間にとってはよっぽど異物なんだなって。

R-指定 バンドの人らから、ラッパーとレゲエディージェイが一番変人が多いって言われるもんな。

DJ 松永 段違いに変な人が多い(笑)。尖った素材であることがよしとされる世界だから、必然的に全員変なままだよね。

左から田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一。

R-指定 だから一番楽しい。それが俳優になったときに際立つのかなって。

──陣内孝則さんやユースケ・サンタマリアさん、そもそも「バイプレイヤーズ」でいえば、田口トモロヲさんはバンド・ばちかぶりのボーカルだったわけで、ミュージシャン出身の俳優は多いですが、そのラインは狙ってますか?

R-指定 嫌な質問(笑)。専業の俳優は狙ってませんけど、楽しいことではありますね。

DJ 松永 だからオファーがあればやります……って発言はけっこうヤバいよね。どの立場で言ってんだっていう(笑)。

Creepy Nuts