ナタリー PowerPush - bloodthirsty butchers
吉村秀樹にこの思い届け!トリビュートライブ4公演完全レポ
LOSTAGE
吉村秀樹の急逝からちょうど1年経ったこの日、TSUTAYA O-EAST公演のトップを飾ったのはLOSTAGE。五味岳久(Vo, B)が「JACK NICOLSON」を歌い始め、「吉村秀樹とbloodthirsty butchersに捧げるこの歌!」とシャウトしてライブの幕を開ける。4曲プレイしたところで岳久が「ちょうど1年前に吉村さんとこの世では会うことがなくなった。寂しいなあと思いながら、事あるごとに思い出しながら1年間生きてきた」と語り始める。そしてトリビュートアルバムに収録されており、この日最初に演奏した「JACK NICOLSON」のカバーについて言及。「いい曲なのでいつも(ライブで)やると盛り上がるんです。でもいつまでも人の曲やって喜んでるわけにもいかないので、今日でやめます」と宣言した。そして夏にリリース予定のニューアルバムからスケール感のある新曲を披露。アウトロでは五味拓人(G)がギターを地面に叩きつけ、弦を引きちぎり、壮絶な余韻を残してメンバーはステージをあとにした。
セットリスト
- JACK NICOLSON
- 僕の忘れた言葉達
- SURRENDER
- 楽園
- 手紙
- GOOD LUCK
LO-LITE
続いてSIDE STAGEに現れたのはLO-LITE。登場するとまずKOBA(Vo, B)が、吉村にプロデュースしてもらっていたこと、バンドは活動休止中だったがこのトリビュートアルバムおよびライブのために8年ぶりに再結成したことを説明。そして1曲目「JACK NICOLSON」で、KOBAの伸びやかなボーカルと3人の力強いサウンドが場内を包み込んだ。MCではユルい会話を繰り広げたり、突然ラップを始めたりと和やかなムードで観客を笑わせる。そしてKOBAは、eastern youthと対バンすることが夢だったと語ると「吉村さんのおかげで夢を叶えることができました。吉村さんありがとう!」と天井を見上げて叫んだ。彼らは自分たちの楽曲の中から吉村プロデュースのナンバーを5曲披露し、満足げに8年ぶりのライブを終えた。
セットリスト
- JACK NICOLSON
- 10W感
- 時代のタイミング
- TALK OF THE PAST
- ヒストリーって?
- a suicidal act
cinema staff
cinema staffは1曲目「theme of us」から、オーディエンスのハンドクラップを煽り一体感を生み出した。MCでは飯田瑞規(Vo, G)が吉村に「男がビブラートかけてんじゃねえ」と言われたことがあると明かす。そして「今日のライブは吉村さんに捧げます」と続けると、カバー曲「僕達の疾走」を披露。辻友貴(G)は歌詞を口ずさみながら嬉しそうに演奏し、飯田はビブラートの効いた柔らかい声で歌い上げた。さらに三島想平(B)が「トリビュートアルバムには入っていないんですが、ブッチャーズとツーマンをやったときに吉村さんに許可をもらって目の前で披露させてもらった曲」「初めて僕がブッチャーズのライブで聴いた曲です」と紹介し、4人は「2月/february」のカバーもプレイ。久野洋平(Dr)の手数の多いドラムと歪んだサウンドで一気にラストまで駆け抜けた。
セットリスト
- theme of us
- borka
- 僕達の疾走
- 2月/February
- 海について
The SALOVERS
この日の出演者の中で最年少のThe SALOVERSは「サリンジャー」「文学のススメ」など自身の楽曲を投下。その後、古舘佑太郎(Vo, G)が19歳の頃に同じスタジオを使用していたことをきっかけに吉村と知り合ったと出会いを語り、吉村からプロデュースさせてほしいと話を持ちかけられていたことなどを明かした。続けて、バンドメンバーの出身高校を創立したのが福沢諭吉であること、「サラバ世界君主」の歌詞にその福沢諭吉の言葉が出てくることを理由に選曲したと話し、バンドはトリビュートアルバムにも収録されている同曲をプレイ。古舘は歌詞を噛みしめるかのように丁寧に歌い、最後の一節は4人の絶妙なユニゾンで聴かせた。
セットリスト
- サリンジャー
- 文学のススメ
- HOT HOT HOT!
- 床には君のカーディガン
- ディタラトゥエンティ
- オールド台湾
- サラバ世界君主
HUSKING BEE
続いてFRONT STAGEに登場したのはHUSKING BEE。磯部正文(Vo, G)はマイクの前に立つと「吉村さん、HUSKING BEE始めます」と口にし、演奏を開始した。そのまま彼らは「Sun Myself」「摩訶不思議テーゼ」など自身の初期曲を次々とプレイしていく。MCでは磯部が「1年経ったんですね」とつぶやき、O-EASTの楽屋でタバコを吸っていたとき、突然「半分で消すな! 根本まで吸えよ」と怒られ、シケモクを持って帰ったかもしれず、間接キス疑惑が残ったというエピソードを披露した。その後バンドは「ブッチャーズに新しい風を!」という言葉から「新利の風」をドロップし、カバー曲「ocean」へ。青と緑の強いライトに照らされたステージで4人はさわやかに楽曲を奏でる。歌い終わると磯部と平林一哉(G, Vo)は天井を見上げ、フロアに何度もお辞儀をしてステージをあとにした。
セットリスト
- Sun Myself
- New Horizon
- 摩訶不思議テーゼ
- THE SUN AND THE MOON
- 新利の風
- ocean
eastern youth
eastern youthは吉野寿(Vo, G)のシャウトまじりのボーカルと、3人による息の合った精緻なプレイで「グッドバイ」「敗者復活の歌」などをパワフルに演奏していく。MCでは二宮友和(B)が自身のアンプに貼った吉村の似顔絵をネタにオーディエンスの笑いを誘う場面も。そして吉野が「実はよーちゃんと仲良くなくて……」とゆっくり思い出を語る。「またどっかで会える気がしてるし、油断してるとぶわーって現れるんじゃないかっていう恐怖心でいっぱい(笑)」と続けた。そしてブッチャーズの初めてのライブを観たことを明かし、トリビュートでカバーした「Never Give Up」について「僕の人生が変わっちゃった歌」と説明する。さらに「今日この曲をプレイしてもう2度とやらないつもりです。さよなら、よーちゃん」と言葉を紡ぎ、バンドは同曲を演奏。軽やかなドラムに合わせて、力強い吉野のボーカルが響き渡る。3人の渾身のプレイのあと、吉野は前をじっと見据え、ギターを力いっぱいにかき鳴らしてライブを終えた。
セットリスト
- グッドバイ
- 踵鳴る
- 敗者復活の歌
- 雨曝しなら濡れるがいい
- 夜明けの歌
- Never Give Up
- V.A. 「Yes, We Love butchers ~Tribute to bloodthirsty butchers~」 / 日本クラウン / 各3086円
- トリビュートアルバム第4弾「The Last Match」/ 2014年5月28日発売 / CRCP-40369
- トリビュートアルバム第3弾「Night Walking」/ 2014年3月26日発売 / CRCP-40366
- トリビュートアルバム第2弾「Mumps」/ 2014年1月29日発売 / CRCP-40358
- トリビュートアルバム第1弾「Abandoned Puppy」/ 2014年1月29日発売 / CRCP-40357
bloodthirsty butchers
(ブラッドサースティブッチャーズ)
1986年に札幌で結成されたロックバンドで、メンバーは吉村秀樹(Vo, G)、射守矢雄(B)、小松正宏(Dr)、そして2003年に加入した田渕ひさ子(G)の4人。1991年にFugaziの来日公演に出演したことを機に上京し、2度のアメリカツアーや、オリンピアで行われたフェス「YO YO A GO GO Fes.」への出演などでUSインディーシーンにも名を知らしめる。1994年にはメジャーデビューアルバム「LUKEWARM WIND」をリリース。その後「kocorono」「未完成」といったアルバムが各方面で絶賛され、90年代のオルタナシーンで確固たる地位を築く。結成20年目となった2007年には自主レーベル・391toneを設立。2011年には彼らの姿を追った長編ドキュメンタリー映画「kocorono」が全国各地で劇場公開される。2013年5月、吉村が急性心不全のため逝去。すでにマスタリングを済ませていたアルバム「youth(青春)」と、写真集「bloodthirsty butchers『青春』」が同年11月に発売される。そして念願だった「kocorono」のアナログ盤を完全限定発売。2014年にはトリビュートアルバムを数カ月にわたって複数枚リリースする「Yes, We Love butchers ~Tribute to bloodthirsty butchers~」シリーズが企画されている。
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youth(青春)
[CD] 2013/11/14発売 3086円 キングレコード KICS-196