超特急「クレッシェンド」インタビュー|だんだん強く、広がり続けるために 駆け抜けた10年を抱きしめ示す、超特急の進化の証明

超特急が6月10日に新曲「クレッシェンド」を配信リリースした。

グループがCDデビュー10周年を迎えた日にリリースされたこの曲は、超特急から8号車(超特急ファンの呼称)への「ありがとう」の思いが込められた、晴れやかなナンバー。ボーカルのタカシを中心にメンバーが作詞に携わり、リリックには10年の歩みの中で築いてきた“超特急らしさ”やファンに向けた合言葉のようなメッセージが盛り込まれている。

4月に幕を開けた約3年ぶりのホールツアー「Progress」の初日公演では、新メンバー募集のためのオーディション開催という驚きの発表を行った超特急。さらなる進化を求めて10年という節目のタイミングで大きな決断をした5人は今何を思い、どんな未来を見つめているのか?

音楽ナタリーではメンバーへのロングインタビューを実施した。オーディションの話から「クレッシェンド」に関する話題に至るまで。“10年目の今”を語る5人の言葉には、これまでの自分たちの歩みへの絶対的な誇りと、「超特急」というグループへの揺らぐことのない愛情がにじんだ。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 曽我美芽

節目を迎えたことは決断の大きな理由

──まずは、開催が明らかになったばかりの新メンバーオーディションの話を。先日行われた全国ツアー「Progress」初日公演のステージ上で発表されて、今皆さんは8号車さんのさまざまな反応を受け止めている真っ最中かと思います(取材は4月下旬に実施)。

ユーキ みんなの声を聞いていると、もちろん賛否はあるんですけど、「超特急が好きだから信じて応援します」という声がめちゃくちゃ多くて。まだ全然切り替えられていないはずなのに、そういった声をかけてくれるんです。みんなそれくらい親身になって、メンバーのことも、超特急のことも考えてくれているんだなあということを再認識しました。僕らにとっては何年も話していたことだけど、8号車にとっては突然言われたことで、噛み砕くための時間はもちろん必要だと思うので。そこはツアーをしながら1つひとつをみんなに共有して、しっかり8号車を巻き込みながら進めていけたらいいなと思います。

超特急

超特急

──ツアー初日のステージで発表することに緊張感はありましたか?

カイ ある程度の反応があることは予想していたので、あの形でできてよかったなと思っています。もともとの話だと、ツアー前に生配信か何かで発表することになっていたんですよ。でも、そこは僕たちの口からちゃんと伝えようと。限られた人に向けての発表にはなってしまいますけど、そのほうがいいよねと5人で決めたことだったので。

タクヤ コロナ禍で相変わらず声出しは制限されている状況ですけど、みんなしっかり声が出ていたんで……(笑)。

リョウガ ひさしぶりにみんなの声聞いたもんなあ。

タクヤ でもホントにカイの言う通り、8号車に面と向かって伝えたかったので、ああいう形で発表できてよかったなって思います。

──新メンバーを探すという考えは、いつ頃から皆さんの選択肢にあったんですか?

タクヤ 2019年の下半期くらいですね。ユーキからそういう話が出て、そこからめちゃくちゃ話し合って。

ユーキ 僕の中では2021年12月に10周年を迎えるタイミングで新メンバーを入れた体制をスタートできたら、くらいのスピード感でプランを考えていたんです。それが一番形としてきれいかなって。だけど、そうそううまく進む話ではないですし、もちろんメンバーみんなの意見もあるので、話し合いに時間をかけて。

カイ コロナ禍に入ってしまったので、話し合いがストップした期間もあったしね。

タカシ それどころやなかったからな。

──そういった中で、都度都度話題には上がっていたという感じ?

タクヤ そうですね。メンバーだけで話すことも、スタッフを入れて話すこともありました。僕がみんなに伝えておきたいのは、これはメンバー発信で決めたオーディションだということ。誰かに言われてやっているわけではないです。それを知ってもらったほうが、8号車も安心してくれるかなと思う。

タクヤ(奥)を撮影するタカシ(手前)。

タクヤ(奥)を撮影するタカシ(手前)。

──大事なポイントかもしれないですね。かなり長い時間をかけて話し合ってこられたということですが、今ここでオーディション開催に踏み切った決定的な理由はあるのでしょうか? タイミング?

リョウガ うーん、タイミングだよなあ……。

──どうして今なんだろう?というのが気になったんです。

タクヤ 確かにそうですよね。

タカシ いろんな理由があるとはいえど、7人だったのが6人になって、5人になって……と体制が変わっていく中で、すぐに「新メンバーを入れよう」という気持ちにはなれなかったという部分はあると思います。「今の体制でやれることはもっとあるんじゃないか」という思いがあったし、個人的にも試行錯誤を繰り返す期間が必要だったよなって。そんな中で10周年を迎えて、これからどんなふうに走っていくかを考えたとき、グループが進化できるような10周年の年になればいいなと思ったんですよね。だから、10年という節目を迎えたことは決断の大きな理由になったかもしれないです。

ワクワクしますよ。飛び込んでみないとわからない景色が待っているから

──改めて、オーディション開催に際しての皆さんそれぞれの思いを聞かせてもらえますか?

リョウガ 僕は、今までに起きた体制の変化が、こう……2度ともきれいな形とは言えないものだったから、グループの形が変わることに対して8号車にトラウマみたいなものを強く残してしまったと思っているんです。そういう部分を考えると、このオーディションを発表することへの抵抗だったり躊躇、不安はかなりありました。直前までずっと悩んでいたし、発表当日にステージ上で何を話すかも「みんなの反応を受けて思いを伝えたほうがいいよな」なんてことを考えつつ。だからツアー初日は……ホントはライブに集中しなきゃいけないのにそれが難しくて、考え事がだいぶ多かったのが実際のところでしたね。

リョウガ

リョウガ

──会場の反応を受け止めながら、リョウガさんがていねいに言葉を選んでいるのはすごく伝わりました。

リョウガ ただ、実際の反応については個人的に想像していたよりも納得してくれているというか……応援してくれる人が多いなという印象を受けましたね。だからこそ、これからのツアーの中で僕たちがどれだけ「付いていっても大丈夫だな」という安心感を8号車に与えられるかが大事になってくるよなということも感じています。

──カイさんはステージ上で、自分のスタンスとして「このオーディションに賛成でも反対でもない」という思いを8号車さんに伝えていましたが、その真意について聞かせてもらえますか?

カイ 自分の中に、5人でも大丈夫だよなと思う部分と、本気で「この人とやりたい」と思える人がいるならば、確かに一緒にやってみてもいいなという部分、どちらもあるんですよね。あとは正直、5人体制になってから8号車のみんなに会えた回数が少ないっていうのが、個人的に引っかかっている部分ではあって。正式に5人になったあとすぐにコロナ禍に入り、ちゃんと8号車と対面できたのが去年の「Hoopla!」(ワンマンライブ)だったんで……。

カイ(奥)

カイ(奥)

──去年の6月なので、まだ1年経っていないですね。

カイ そう。以降のライブの数もそこまで多くはなかったから。だから、タイミング的に賛成でも反対でもないっていう部分があるかなという感じですね。でも、本当にいい人がいるのであれば。全員が「この人とやってみたい」と思える人に出会えたならば、超特急にとってプラスになることは間違いないだろうし、プラスにしていくだろうし。だから、とにかく妥協はしたくないなという感じです。

タクヤ 僕はいい意味であまり深刻に考えていないのかもしれないです。でも、なんにせよ後悔するような生き方はしたくないから。チャンスはどんどん過ぎ去って行くものだと思うし、ここで覚悟を決めて決断できたってことは、このタイミングは運命だったのかなとも思います。それと、今回のことは僕たちが長い間話し合って決めた覚悟だけど、8号車も生半可な思いで応援してくれているわけじゃないってことに改めて気付けたというか。8号車のいろんなコメントを読んで、超特急の存在を本当に人生の中心に置いてくれているんだなということを再確認したので。そういう8号車の思いも胸に刻んで進んでいきたいなと思いました。

──ユーキさんはいかがですか?

ユーキ 僕はいろいろあるんですけど……なんというか、前を向いている姿を示して「超特急は進化しているんだぞ」という証明をしたかったんです。エンタメ業界が動くスピードは速いですし、そこでただ流れていくだけの人生は嫌だなって。5人の年齢的にも、この10周年のタイミングがチャンスなんだと自分は思っています。今回の発表でいろんな方に超特急の存在を再認識していただけたことは間違いないと思っているので……ここからよりいっそうギアを上げてパワーを発揮して、「こいつら、本気でてっぺん取りに来てるな」と思わせたい。「この人たちカッコいい。けどどこかダサいよね」って、より多くの人に認知してもらいたい。野心を燃やしている姿を見せ続けることが正しいよなって思います。だから「Progress」っていう今回のツアータイトルも、すごく今の自分たちの姿に合っているなと思うんですよ。“進化”を証明し続けたいんです。

ユーキ(奥)

ユーキ(奥)

タカシ ユーキが今言ってくれたように、今回のプロジェクトは僕ら自身の強い気持ちを持ってやっているんですけど、自分は8号車の気持ちもわかるなあと思っていて。

──と言うと?

タカシ 超特急をもっと進化させるために僕らはオーディションの開催を決めたけど、「オーディション開催」という文字だけ見ると、一部の方は「今の超特急に不足を感じてるんじゃないか」と思ってしまうんじゃないかなって。でも、僕らのことをいつも考えてくれているからこそ、そう思ってしまう気持ちはわかるんですよ。だから、自分たちのこれからの活動や言動で「そうじゃないんだよ」というメッセージを伝え続けなければと思っているところです。あとはそうですね、僕的には今回のオーディションを通して、ボーカリストとしてのよき“お相手”が見つかるといいなって……。

タカシ

タカシ

カイ なんだかお見合いみたい(笑)。

タカシ でもホント、それほどの意気込みよね。僕はお見合いするくらいの気持ちで行く。だから、すごく偉そうに聞こえるかもしれないけど、新メンバーには僕の超特急への気持ちを超えてくれないとと思っています。

──それはめちゃくちゃハードル高いですね……。

カイ どんなオーディションよりもハードル高いよ(笑)。

タカシ 欲を言えば、僕が「あれ、このままじゃヤバいな」と危機感を感じるような人が来てくれたら最高ですね。というか、僕らのオーディションに応募してくれること自体、相当変人だと思うんですよ。だから、その時点ですごく買えるなと思う部分もあるし(笑)。なんだかワクワクしますよ、どういう人が来るのか、どんな編成になるのか。全部不透明ではありますけど、飛び込んでみないとわからない景色が待っているわけだから。