自分とバンドを救ってくれた曲
──インディーズ時代の代表曲「フォーエバーヤング」をアルバムタイトルに冠して、今作にも収録した理由というのは?
飯村 2015年にバンドが活動休止したことがあって、そこから復活するタイミングで出した、ひときわ思い入れの強い曲なんですよ。
冨塚 そのときは僕自身が音楽を辞めたいほど追い込まれてて、バンドを続けるのかどうか何度も話し合いました。人生に対する不安とか、曲ができなくなってきたとか、ライブがうまくいかないとか、ストレスが大きい時期だったんですよね。ストレスや歌いすぎで、声が1週間くらいまったく出なくなっちゃったり。
白澤 そうだったね。
冨塚 「声が出ない自分なんて生きてる意味ないな」とまで塞ぎ込んじゃうような状態だったよね。でも、逆にそれを経験して歌えること、自分の言葉を伝えられることの素晴らしさが身に染みてわかったんです。活動休止中にボイスメモに残したデモを聴いてたら、そこに「フォーエバーヤング」の歌詞のかけらがあって。「未来なんて将来なんて僕たちには意味がない」の部分なんですけど、いろいろうまくいかない当時の気持ちにすごくフィットしたし、限界を感じながらもがんばるしかないってことを書こうと思うきっかけになったというか。本当に自分とバンドを救ってくれた曲で、お客さんの人生にも寄り添える曲になったんですよね。なので、メジャーデビューという始まりの作品には絶対に入れたくて。
──BOYS END SWING GIRLの歩みは決して順風満帆ではなく、紆余曲折あったんですね。
飯村 そうですね。どうすれば音楽で食べていけるのかも早くから考えていて。そのためにはまず知ってもらわないといけないので、コンテストにも積極的に応募してたんですけど、もちろんすぐに結果が出たわけではなく……。
冨塚 始めの頃は地元のライブハウスSound Stream sakuraでしかライブをやってなかったけど、東京で勝負する取っかかりとしてコンテストに応募したんですよ。
白澤 コンテストでは2位止まりとか、ミュージックビデオを撮るときに監督が急にいなくなっちゃったりとか、あと一歩のところで目標をつかめなかったことが多かったバンドなんですけど、そういったすべてがあっての「ROAD TO EX 2017」優勝、今回のメジャーデビューだと思うので、本当に感慨深いです。
冨塚 バンドは100のうち99がつらいことだったりするのかなって。だけど、1のすごく華々しい瞬間があるからがんばれる。「ROAD TO EX 2017」で初代チャンピオンになれたことも、このアルバムを出せることもそうです。そんな人生を歩めることが幸せだとも思います。99の影が濃いほうが1の光を明るく感じられるし。
鍔本 自主レーベルで1stミニアルバム「KEEP ON ROLLING」(2016年)を出すときは4人でお金を集めてなんとかする感じだったし、先の見えない不安がすごかったもんね。
冨塚 あのときも「これが最後の勝負だ!」と思いながらやってたよな。「1人30万円出すぞ」みたいな必死さで。でも、必死で限界までやると何か1つ見えてくるんですよ。それはこのバンドに教えてもらいました。がんばって自主でリリースした結果、今の事務所と出会えたし、ずっとうまくいかなかったコンテストも「最後にもう1回だけ挑戦してみよう」って1年間全力でやってようやく陽の目を見たので、そういう生き方も伝えていけるバンドでありたいですね。
色褪せない青春が書けるようになった
──アルバムの曲順はストーリー性が出るようにかなり考えたんじゃないですか? 聴き進めるにつれて、色合いがわかりやすく変わっていく感じがしました。
冨塚 曲順はけっこう揉めたんだよね、メンバー間で。
白澤 そうそう。
冨塚 でも、スタッフさんとの話し合いで出たこの曲順がしっくりきて、それまで揉めてた4人がみんなスッと納得したんです(笑)。
飯村 「Alright!!~令和若者讃歌~」もアルバムの1曲目のイメージで作ってたのに、レコーディングしたあとに変えたくなったんだよね。
冨塚 なぜか「これ最後じゃね?」ってなったよね。この曲のタイトルの提出は新元号がわかるギリギリまで引っぱらせてもらったんですけど、ほかのアーティストさんたちがすごい早さで「令和」を使ってましたね。僕たちが世界初だと思ってたのに!
一同 あはははは!(笑)
鍔本 まあ、いい感じの順番にはなったと思います。
冨塚 「フォーエバーヤング」の「風を切って進んでくんだ」というフレーズでこのアルバムは始まるんですけど、まさにそれが感じられるというか。つらいことがあっても最後に明るいことが待ってるみたいな、そんな曲順になったんじゃないかと思います。あと今回の制作を通して、やっぱり僕は青春を歌ってるんだなとわかりました。昔はずっと「がんばろうぜ!」という明るい部分だけを歌ってたのが、大人になっていくにつれてうまくいかない経験もする中、暗い部分も踏まえて色褪せない青春が書けるようになったんです。
──そのあたりも聴きどころですね。
冨塚 ターゲットを絞ってみた曲もあるんですよ。「リベラル・セブンティーン」は17歳の人たちに向けた曲で、初めて「ウチら」っていう一人称を使いました。もともとは全部「僕ら」だったんですけど、17歳の人たちにもっと「自分たちの歌」と感じてもらうにはどうすればいいか悩んでたとき、「一人称を変えたらどうかな?」と作詞家のjamさんからアイデアをいただいて。こんな選択は今までなかったし、僕の歌じゃなくなるのが新鮮でしたね。
──アルバム収録曲のうち数曲はjamさんとの共作詞になっています。
冨塚 そうなんです。作詞家の先生、jamさんこと山田ひろしさんと初めてご一緒させてもらって。共作の経験なんてなかったし、不安でいっぱいだったんですけど、すごく素敵な視点を持ってる方で。僕の歌詞を「好き」と言ってくれたのもうれしくて、伝えたいことを伝えるための手助けをしていただきました。10代の自分なら反発してたと思うので、今がメジャーデビューのタイミングで本当によかったです。
白澤 とがっている頃だったらピアノやシンセも「絶対に使わない」って言っていただろうけど、今となってはピアノ大好きだもんね(笑)。
冨塚 「クライベイビー」みたいな、ギターを弾いてない曲もあるくらいだからね。
飯村 バックで鳴ってるのはピアノとバイオリンで、バンド演奏はお休みの曲です。
冨塚 そういう選択ができたことも成長だと思いますね。
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ポップなうえでどこまで攻められるか
- BOYS END SWING GIRL
「FOREVER YOUNG」 - 2019年6月5日発売 / Imperial Records
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[CD] 2800円
TECI-1644
- 収録曲
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- フォーエバーヤング
- Goodbye My Love
- 縋 -sugare-
- Boo!! Let it go!!
- 毛布の中で抱き合って
- Wonder Light
- クライベイビー
- ストライド
- MORNING SUN
- リベラル・セブンティーン
- ナニモノ
- Alright!! ~令和若者讃歌~
- BOYS END SWING GIRL
(ボーイズエンドスウィングガール) - 千葉県成田市の小学校に通っていた冨塚大地(Vo, G)と白澤直人(B)の幼なじみ2人を中心に2010年に結成されたバンド。2012年に鍔本隼(G)、翌2013年に飯村昇平(Dr)が加入し、現体制となる。10代の頃から「RO69JACK」「HOTLINE」など数々のバンドコンテストで入賞し、2016年9月に自主レーベル「NazcaRecords」から1stミニアルバム「KEEP ON ROLLING」をリリース。2017年には88Music、Village Again associationと契約し、ミニアルバム「TRANCE」「CLOCK」を発売した。また同年テレビ朝日「EXシアターTV」で放送されたコンテスト企画「ROAD TO EX 2017」にて優勝し、初代チャンピオンの座に輝く。2019年6月にImperial Recordsからメジャーデビューアルバム「FOREVER YOUNG」をリリースした。