BLUE ENCOUNT「Z.E.R.O.」インタビュー|4人で前へ進むための選択と、切り開く新たな道 (2/2)

“BLUE ENCOUNT”が120%あふれた「青」

──今回のシングルのカップリング曲「青」は、辻村さん渡米の発表のタイミングで6月に配信リリースした曲ですね。

田邊 はい。もともとは「今はタイアップの話もないけど、1人で曲を作り溜めておこう」という時期に作った中の1曲だったんですよ。僕は普段メロディを先に作るタイプで、最初の時点では歌詞も仮の言葉でしかないんですけど、この曲は「そうだ 青に染まれ 青を宿せ 青に挑め」という頭の4行がパッと浮かんできて。だから「こういう曲なんだな」という全体像が最初からしっかり見えていたし、すぐに作れましたね。そのあと、ほかの新曲と一緒にメンバーに聴いてもらったんですけど、少し経ってから、辻村の発表の時期にリリースする曲はどれにしようかという話になったときにみんなが一斉にこの曲を指差して。発表したタイミングで、みんなが聴きたい曲ってこれなんじゃないかと。そこから「4人が思うBLUE ENCOUNT、みんなが思ってくれているであろうBLUE ENCOUNTを120%あふれさせようぜ」と言いながら、今年春くらいからアレンジしていきましたね。

江口 「青」のデモをもらったタイミングでは田邊から合計10曲くらいのデモが送られてきていたんですよ。

田邊 いろいろなジャンルの曲を作っていたんです。ブルエンの新しい一面が見せられそうな曲もあったよね。

江口 そうそう。そういう曲は今後作っていくことになると思うし、ほかにもいい曲が多かったんですけど、聴いたときに一番ライブが想像できたのがこの曲で。だからこそ「演奏したいな」と純粋に思えましたね。

高村 仮タイトルも「青」だったんですよ。自分たちのバンド名にもブルーというカラーが入っているから、僕は「中途半端な気持ちで『青』というワードを掲げてはいけない」と思っていたんですけど、だからこそ、辻村のことを発表するタイミングでこの曲を持ってきた田邊の男気に僕はすごく興奮して。「これを今!?」「でも確かに、今だな」と思いましたね。曲自体もすごくカッコいいし、もしも完成させられたら「HANDS」や「もっと光を」を越えられる曲になるんじゃないかとデモを聴いている段階で思って。だから僕自身、覚悟を持ってこの曲に臨みましたし、まさに「青」というタイトルにふさわしい曲になったなと思いますね。すごく自信のある曲を、今年最初の曲としてリリースできたのもうれしい。もうライブで何回かやっているんですけど、たぶんもっとよくなるだろうし、演奏中自分でもグッとくるような曲ですね。

高村佳秀(Dr)

高村佳秀(Dr)

辻村 青春という言葉もありますけど、青い=若いというイメージってあると思うんです。そんな中で「もうちょっと大人になれよ」と言う人はたくさんいても、「青に染まれ」と言う人はなかなかいないと思うので、新しい環境に行くことに決めた自分の人生のタイミングとも重なって、肯定してもらえているような気持ちになりました。“青”に挑めている自分を認めてあげたいなと思いましたし、こんなふうに歌ってくれるのはありがたいなと。

──イヤホンの向こう側にいる1人ひとりの“あなた”を勇気付けてくれる曲であると同時に、田邊さんから辻村さんへのメッセージソングとも解釈できる曲ですよね。

辻村 いや、そう言われると恥ずかしいですね(笑)。

田邊 そうだよね(笑)。

辻村 でもほかの曲でも「これは自分に言っているんじゃないか」と思うときはありますし、それがブルエンのよさな気がします。たった1人に言っているようでいて、みんなが思っていることにもリンクするというか。この曲も僕だけじゃなくて、現代社会で日々働いている皆さんに刺さるんじゃないかなと思いますね。

──先ほど田邊さんが言っていたように、ブルエンらしさがすごく感じられる曲ですよね。江口さんのギターリフなんて特に。

江口 おっしゃる通り、ザ・ブルエンという感じの曲なので、イントロのテーマ自体もそういうものを目指して作りました。「これまでの江口雄也のギターを出せばいいんだな」と思ったので、何度も弾き直したりもせず。

江口雄也(G)

江口雄也(G)

田邊 江口のギターもそうだけど、僕らはもうこのジャンルに関しては職人なので。「ブルエンを作ってください」と言われたら、僕らは職人でなければならないですから(笑)。

江口 ははは! 確かにそうだね。

田邊 だけど1つ、いつもとは違ったことがあって。今回、僕ら3人はスタジオに入ったんですけど、辻村にはアメリカにいることを想定して家にいてもらって、遠隔でデータをやりとりしながら制作していったんです。それを試せたのはよかったですね。こういう作り方でもスタジオで合わせたような勢いのある音になっているということは、結局、1つのメッセージやテーマを共有していれば、ちゃんとバンドになるんだなと改めてわかりました。

辻村 そういう方法で作った初めての曲なので、反省点もいっぱいあるんですけど、だからこそ「次はこうしたい」というアイデアもいろいろ出てきましたし、今後の制作が楽しみですね。

僕はやっぱりダークヒーローが好き

──シングルの表題曲「Z.E.R.O.」はテレビアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュR2」のエンディングテーマとして制作された曲ですね。

田邊 先方からは「主人公・ルルーシュの魂を鎮める歌をお願いします」というテーマをいただきました。最初、候補曲を2曲作っていたんですよ。だけどメンバーと話す中で「この曲を形にしていこう」と決まって、先方からまだOKをいただいたわけではないのに、ほぼ完成形の歌詞を書いて。そしたら一発でOKをいただいたんです。だからこの曲は降りてくる系でしたね。タイアップのお話をいただいたタイミングでちょうどNetflixでの配信が始まったので、一気見したんですよ。そしたら1話からかなり心をつかまれて……「いいな」と心が共鳴したからこそ、歌詞やメロディがすぐに浮かんだのかもしれないです。「ボイス」(2019年にBLUE ENCOUNTが主題歌「バッドパラドックス」を提供したドラマ)もそうですけど、僕はやっぱりダークヒーローが好きなんだと思います。

──アレンジはどのように構築していきましたか?

田邊 最初の鍵盤やアコギは僕が弾いているんですけど、これが僕の思うレクイエム感で。

高村 廃墟のような、もともときれいだったものが朽ちたような雰囲気を出したいなと思いながら、シンセやストリングスの音色もチョイスしていきましたね。DTMに関しては自分自身まだまだレベルは高くないので、試行錯誤した結果、ようやく今のポジションに落とし込めたという感じです。あれもこれもやってみようとたくさん挑戦できたので、楽しかったですね。

田邊 上モノがきれいに鳴っている分、バンドの音像に関しては「ラウドに」「汚していこう」という意識で作ったつもりだったんですけど、全体としては意外とまとまりのある感じになって。

辻村 確かに。ミックスのときもきれいにしたくなったもんね。

──バンドの音の方向性としては、例えばLinkin Parkとかアメリカのロックバンドをイメージしたのかなと想像していました。

辻村 まさしく!

江口 田邊からデモをもらった段階で「こういう感じで」とLinkin Parkやそれに近いバンドの楽曲が提示されたりしていましたね。

辻村 僕らはもともとそういうラウドな音楽も好きですし、僕がこれからアメリカに行くという背景ともリンクするので、ブルエンのメロディの中にアメリカの大地が想像できるようなサウンドを取り入れてみたいなと思いました。ギターもドラムも海外の匂いがするような音をオーダーして。

辻村勇太(B)

辻村勇太(B)

江口 ただ、サウンドやフレーズを練るときっていつもけっこう苦戦するんですよ。「もっと壮大に」とか「もっとドラマティックに」とか抽象的なことを田邊に言われるので……(笑)。

田邊 確かにいつも抽象的だよね、すみません(笑)。それが重なると「結局、誰のどの曲?」みたいな話になるんだけど。

江口 そうそう。具体的に曲名を言っちゃったほうが早い(笑)。この曲は特にそういうやりとりが多かったし、時間をかけてこだわった部分ではありますね。

──間奏も新鮮でした。田邊さんはシャウトしているんでしょうか?

田邊 あれはラジオボイスという、シャウトのような声色になるエフェクトをかけてもらっているんですよ。しかも歌録りの日に喉の調子がよかったので、いつもより高いキーを出すことができて、その結果、あのエモさになったんです。主人公のルルーシュはクールだけど、叫びたくなるほどの狂気を心の中に秘めている人だから、こういうアプローチもいいですよね。あとはほかにも「じゃああえて変なコードにしてみよう」とか、いろいろなアイデアがパッと浮かんではスッと形にできて、サッと進んだというか。

田邊駿一(Vo, G)

田邊駿一(Vo, G)

辻村 擬音がすごい(笑)。

田邊 (笑)。この間奏はいいフックになってますよね。「まさかこういう間奏が来るとは」とみんな思うだろうし、ライブでの伸びしろが与えられたような感じもあるなと。いろいろな演出と絡めてみるのも面白そうですね。

──ライブで聴ける日が楽しみです。今は全国ツアー「BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023 ~knockin' on the new door~」の最中なんですよね。手応えはいかがですか?

田邊 今回のツアー、めっちゃいいですよ。今までで一番いいと思います。セットリストを各地で変えていて、昔の曲もやっているんですよ。だけどそれは「レア曲をやってみよう」という話ではなくて、「今日のBLUE ENCOUNTにはどの曲が必要だろう」というふうにセットリストを組んでいるだけというか。だから“バンドBLUE ENCOUNT”のまま“表現者BLUE ENCOUNT”になったという感じがします。ステージ上が4人にとって一番気持ちいい場所になっているというのはもちろんですが、「ライブではザ・ブルエンというイメージの曲をやらなければならない」みたいな固定観念がなくなったので、今までより自由に、自分たちの感覚に合わせて曲を選べているんです。その中で、僕ら自身「この曲、こういうふうに化けたのか。面白いな」と思うようなこともけっこうあって。

──そしたらライブが楽しいでしょうね。

田邊 めちゃくちゃ楽しいです。ホールツアーなんですけど、深夜に4人で狭い街スタに入って、ふらふらになりながら、でも「ああ、これ気持ちいいな」と思っているときのようなグルーヴになることもあります。それをホールでやれているのはめっちゃいいし、「これ、俺らがずっとやりたかったやつじゃん」と思いますね。だからこそ、このライブをそのまま2月の日本武道館に持っていきたい。かなりいいツアーのスタートを切れているんじゃないでしょうか!

BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNT

ツアー情報

BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023 ~knockin' on the new door~

  • 2022年10月8日(土)福岡県 福岡市民会館
  • 2022年10月9日(日)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
  • 2022年10月15日(土)北海道 道新ホール
  • 2022年10月29日(土)宮城県 電力ホール
  • 2022年11月3日(木・祝)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2022年11月10日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
  • 2022年12月15日(木)大阪府 オリックス劇場 ※振替公演
  • 2022年12月16日(金)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール) ※振替公演
  • 2023年2月11日(土・祝)東京都 日本武道館

プロフィール

BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント)

田邊駿一(Vo, G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年、田邊、江口、高村によって地元熊本で結成され、2009年に3人の進学先である東京の音楽専門学校で辻村が加わり現体制となる。2010年に1stミニアルバム「the beginning of the beginning」をリリースし、この頃よりライブハウスシーンで頭角を現すように。2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」を発売した。同年9月にキューンミュージックよりEP「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。2016年10月に初の東京・日本武道館単独公演を行った。2020年11月には4thアルバム「Q.E.D」をリリース。2021年4月には神奈川・横浜アリーナ単独公演を開催した。2022年11月にテレビアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」のエンディングテーマ「Z.E.R.O.」をシングルリリース。2023年2月にライブツアー「BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023」ファイナル公演として日本武道館公演を行う。その後、辻村はアメリカに移住予定。辻村はアメリカで音楽活動をしながら、メンバーとして今まで通りに楽曲制作、レコーディングを継続していく。