BLUE ENCOUNT|「囮囚」で描く善悪の価値観や表裏一体

“バッドパラドックスⅡ”は絶対に作らない

──ニューシングルの表題曲「囮囚」は、ドラマ「ボイスII 110緊急指令室」の主題歌として現在オンエア中です。「ボイス」チームから再びオファーを受けたとき、どう思いましたか?

田邊駿一(Vo, G)

田邊 以前、撮影現場を訪問させていただいたとき、皆さんが熱量を持ってドラマを作っている姿を垣間見ることができたので、「僕たちもまたそこに戻れるんだ」といううれしさが一番にありました。タイアップというと「厳しい制約がありそう」というイメージがありますけど、今回僕らは「物語全体のテーマはこうです」「こういうメッセージがあって、ストーリーはこう進んでいきます」「なので、これをさらに盛り上げるような新曲をお願いします!」としか言われなくて。それはすごくアーティスト冥利に尽きるし、いただいた言葉から、信じてもらえていることが伝わってきました。

──信頼が伝わってきた分、プレッシャーも感じませんでしたか?

田邊 プレッシャーよりも「楽しもう」という気持ちが強かったです。制作にあたって、まず「“バッドパラドックスⅡ”は絶対に作らない」「今BLUE ENCOUNTが作りたい方向性でしっかり作る」と決めたんですよ。「○○っぽい曲を作る」という作り方をしても、結局本当に「○○のような曲」ってもう二度と作れないので。

辻村 そういう考え方をしている時点で、オリジナルは超えられないからね。

田邊 うん。超えられないし、以前完成させた作品は、その時点で最高と思えるものを作ったということでピリオドが打たれているし。だからこそ、今回僕らがやらなきゃいけないことは、ドラマのシーズン2にふさわしい曲を作ること、そしてBLUE ENCOUNTがライブシーン、今の音楽シーンにちゃんとコミットできるような作品を作ることだなと。そういう意識で取り組みました。

──実際「囮囚」は、スタイリッシュな「バッドパラドックス」とは異なり、狂気と焦燥感を掻き立てるようなアッパーチューンに仕上がっていますね。いつ頃制作されたんですか?

田邊 横アリが終わったあとぐらいのタイミングで僕が1人でスタジオにこもって曲作りして、弾き語りに近い音源をチームのみんなに投げました。確か「VIVA LA ROCK」の出番終わりの楽屋で「じゃあどの曲を主題歌に提案しましょうか?」という会議をし、そのあと、辻村の家で仮レコーディングをしましたね。そして5月19日からツアーが始まったので、ツアー中に本レコーディングして、歌詞を確定させて、歌録りもして。地方でライブをやったあと、すぐに帰ってきて、スタジオワークをやって、また次の日にツアーに行く、みたいな。我ながらすごいスケジュールで動いていました。

──バンドのグルーヴがダイレクトに伝わってくるテイクになっているのは、ツアー中にレコーディングしたからなのかもしれません。

江口雄也(G)

田邊 それと、僕らにとってはある意味リフレッシュになったところもあって。ツアー中はライブのときに使う筋肉や集中力を使っているイメージなんですけど、そこにばかり集中しすぎると、時に本質を忘れてしまうこともあるんですよ。例えば、「俺ら、なんのためにライブしに来ているんだろう?」と考えてしまったり、頭でっかちになって、それがプレイに出てしまったり。なので、ツアー生活から一度逸脱してスタジオワークをするというのは、自分たち的にはほどよいリフレッシュになりました。

──レコーディングはスムーズに進みましたか?

高村 ドラムに関しては、レコーディング中にもフレーズを変えたり、調整したりしながら、最後の最後まで練って作りました。今回、プロデューサーとして板井直樹さんに入ってもらったんですけど、僕が持っていったフレーズをもとに「こうしたほうが疾走感が出る」「じゃあ音数を1つ増やしてみよう」と会話しつつ、実際にプレイしながらグルーヴを作っていって。そこにけっこう時間をかけました。

辻村 ギターとベースはわりとやることは決まっていたので、あとはもう、どれだけ納得できるものを出せるかというところでしたね。

田邊 そういう作業って熱くなりすぎちゃうときもあるんですけど、プロデューサーさんやエンジニアさんのおかげで、ちゃんと冷静さを保ちながらやれた。だから「ものすごく大変だった」みたいなテンションではなかったよね。

辻村 うん。レコーディング前の制作とか、ミックスとか、ほかの作業のほうが時間がかかったかもしれないです。

──歌詞は、ドラマから受け取ったものを落とし込んだ感じですか?

田邊 善悪の価値観、表裏一体というのはドラマの大きなテーマではあるんですけど、ドラマの中の話に限らず、俺らの生活もそういうものに囚われていると思っていて。例えば俺も、善人でありたいと思いながら生きている一方、気持ちが疲弊しているときに、自分でもびっくりするくらい嫌なやつになっている瞬間があるんですよ。そういう闇の部分って誰でも持っているから、じゃあ自分自身を“バケモノ”と仮定して歌詞を書いてみようと思って。

高村佳秀(Dr)

──確かに、1番は抽象的な表現が続いていますが、2番では具体的な事物をイメージさせる表現が多く、「これはあなたの話でもありますよ」というメッセージを感じさせる構成になっています。

田邊 そうですね。今までは一人称で歌詞を書くことが多かったんですけど、今回は、1つの物語の中でも場面ごとに視点が変わっていて。いろいろな視点を持って1つの曲の歌詞を書くというのは、自分にとって新しいやり方でしたし、自分の中の闇、今の世の中の闇と冷静に対峙できたなという手応えがあります。

──また、歌詞の中には特殊なルビが振られた単語がたくさん登場します。

田邊 言葉を複雑にしすぎるとメロディも伝わらないので、タイアップのときは特に、聴き取りやすい言葉を使うことを大事にしているんですけど、歌詞の醍醐味って、そこからいろいろと工夫できることなんですよね。例えば英詞の曲の和訳は、訳す人によって違ってくるじゃないですか。日本語もそうであっていいと思っていて。だから、この曲では「真犯人」と書いて「こたえ」と読みますけど、ほかのルビもつけられると思いますし、歌詞というのは言葉遊びができてナンボだなあという気持ちがあります。だけど最近はこういう歌詞を書いていなかったので、自分でも楽しみながら、今回はエグいくらいに入れてみました。だからこそ、タイトルから読み方がわからない言葉にして。

──歌詞を初めて見たときに驚く人も多いでしょうね。

田邊 それこそ今は、ストリーミングアプリの「歌詞を表示する」をタップすれば、パッと歌詞が見られますしね。1回聴いただけではわからないような感じ、何周か聴いてやっと理解してもらえるようなギミックにしているので、「あ、こういうことだったんだ」とわかるまでの過程を楽しんでほしいなと思います。

来年、再来年には海外でのライブを実現させたい

──カップリングには、「ポラリス」をアメリカ出身のDJスラッシーがリミックスした「ポラリス(Slushii Remix)-Sakura Chill Beats Singles」が収録されます。原曲からかなり変化していますが、皆さんはどんな感想を持ちましたか?

辻村勇太(B)

辻村 僕は好きですし、面白いなと思いました。僕らはもちろん原曲の「ポラリス」を知っているから、曲の展開は知っていますが、「そう行くのね!?」みたいな驚きがあって。その驚きは違和感とも言えるんですけど、聴いていくうちにだんだん理解できるようになってきて、とても気持ちよく感じるようになるんですよね。

──「ポラリス」はテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期のオープニングテーマで、ブルエンの曲の中でも特に海外のリスナーにもたくさん聴かれている曲だそうですね。

田邊 この曲がきっかけで海外の方がすごく聴いてくれるようになったんですよ。去年は本来、海外でのライブが4本決まっていたんですけど、残念ながら全部中止になってしまいました。とはいえ、せっかくできた海外との架け橋を絶やしたくないなと思っていたところ、ソニーの方から、YouTubeでSakura Chill Beatsというチャンネルが最近人気だという話を聞いて。こうして「ポラリス」に新たな解釈をしてもらうことで、リミックスもオリジナルも最高じゃんと思ってもらえたらうれしいですね。そして来年、再来年には海外でのライブを実現させたいです。

──最後に、現在開催中のツアー「BLUE ENCOUNT tour 2021 ?Q.E.D : INITIALIZE?」の手応えについて聞かせてください。

高村 今回のツアーでは、今まであまり気にしていなかった細かいところや、見て見ぬふりをしていたようなところにまで注意を配りながらライブをやっているんですよ。なので、毎回100点ではないにせよ、ここまでの12本、本当に意味のあるツアーをまわれているなと思っていますし、僕らがどういうバンドでどういうライブがしたいのかということを、来てくれた人にもちゃんと見せられている気がしています。全力で挑んでいる分、悔しい思いをすることももちろんありますが、今までで一番大事なツアーになりそうです。

BLUE ENCOUNT

ツアー情報

BLUE ENCOUNT tour 2021 ~Q.E.D : INITIALIZE~
  • 2021年9月9日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2021年9月10日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2021年9月15日(水)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2021年9月16日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2021年9月23日(木・祝)北海道 サッポロファクトリーホール
  • 2021年9月27日(月)東京都 Zepp Tokyo
  • 2021年9月28日(火)東京都 Zepp Tokyo
  • 2021年10月2日(土)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2021年10月9日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2021年10月10日(日)香川県 高松festhalle
  • 2021年10月18日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2021年10月19日(火)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2021年10月24日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2021年10月26日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2021年10月27日(水)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2021年11月6日(土)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2021年11月7日(日)福岡県 LIVE SPOT WOW!
  • 2021年11月9日(火)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2021年11月18日(木)岩手県 Club Change WAVE
  • 2021年11月20日(土)秋田県 Club SWINDLE
  • 2021年11月21日(日)宮城県 石巻BLUE RESISTANCE
  • 2021年11月27日(土)沖縄県 桜坂セントラル
  • 2021年12月1日(水)富山県 MAIRO
  • 2021年12月2日(木)石川県 金沢EIGHT HALL
BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント)
BLUE ENCOUNT
田邊駿一(Vo, G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年、田邊、江口、高村によって地元熊本で結成され、2009年に3人の進学先である東京の音楽専門学校で辻村が加わり現体制となる。2010年に1stミニアルバム「the beginning of the beginning」をリリースし、この頃よりライブハウスシーンで頭角を現すように。2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」を発売した。同年9月にキューンミュージックより4曲入りCD「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。2015年7月にメジャー1stフルアルバム「≒」を発表。2016年10月に初の東京・日本武道館単独公演を行い成功を収める。2017年1月に2ndアルバム「THE END」を発表し、本作を携えてバンド史上最大規模となる全国ツアーを開催した。2018年3月に3rdアルバム「VECTOR」をリリース。2021年9月に日本テレビ系土曜ドラマ「ボイスII 110緊急指令室」の主題歌を表題曲としたシングル「囮囚」(ばけもの)をリリース。10月にはライブ映像作品「『BLUE ENCOUNT ~Q.E.D : INITIALIZE~』2021.04.18 at YOKOHAMA ARENA」を発売する。6月から12月にかけて全国ツアー「BLUE ENCOUNT tour 2021 ~Q.E.D : INITIALIZE~」を開催中。