音楽ナタリー Power Push - AKINO with bless4
4人兄妹の揺るがぬ絆とハーモニー
bless4にとっての、“cross the line”した瞬間とは?
──皆さんのこれまでの人生で、“cross the line”した、一線を越えた瞬間はありましたか?
AKASHI たぶんみんなそれぞれあると思うんですけど、1つ言えるのは、2年前にAIKIがボランティア活動をするためにアメリカへ行く決心をしたとき。AIKIにとってはその決断自体が一線を越えるものでしたし。
AIKI 確かに、2年間もグループを離れるというのは難しい決断ではありましたね。兄妹でbless4として音楽活動を始めたのが2003年だから、グループとしては10年以上、家族としては生まれてからずっと一緒に過ごしてきたわけですから。当然、不安や恐れもあったんですけど、やっぱり自分もアメリカで成長したいし、たぶん自分がbless4を離れることによってお互いにいい刺激になるんじゃないかと、自分のコンフォートゾーン(安心できる場所)から一歩踏み出ることができました。
KANASA AIKIがその決断をすることによって、残された私たちも一線を越えざるを得ない状況になったんですよね。
AKASHI 今までは、お互いに信頼しきっている反面、ちょっと頼りすぎてたところがあるんですよね。でも、AIKIの決断によってそれじゃダメなんだってことに気付かされたというか。で、それぞれが自分の限界を少しずつ越えていって、AIKIがいない分を補うことができたと思うし、2年間経ってAIKIが帰ってきたので、またこれからbless4として新たな一線を越えていかないといけないなと。たぶん、4人だともっとすごい一線を越えられると思います。
AKINOの成長が「cross the line」を完成させた
──MV撮影でロックのビートに合わせるのは難しいというお話をされましたが、レコーディングの際に大変だったことはありましたか?
AKINO 意外に苦労しました。まず最初にデモ音源を聴いて、「こういうふうに歌いたいな」っていうイメージはすぐに浮かんだんですね。でも実際に歌ってみると、それじゃあ曲に合わないなって。だから、例えばもっとコブシを回したり、優しく歌ったり、いろんな歌い方を自分なりに試してみたんですよ。そこですごく悩んだんですけど、結局レコーディングスタジオに入ってマイクの前に立ったら、自然体で、思うがままに歌うのが正解なのかなって。
AKASHI 普段はレコーディングする前に一旦AKINOの歌を聴いて、アドバイスをしてあげることが多かったんですよ。AKINOはコブシをめちゃくちゃ効かせたり、フェイクを入れたりする癖があって、もちろんそれがハマるときは素晴らしい歌になるんですけど、ときにはもっとシンプルに歌ったほうがいいケースもあるので。でも、今回はそういうアドバイスは一切なしで、歌はAKINOに全部任せました。
──なぜ今回はAKINOさんへのアドバイスが不要だと思われたんですか?
AKASHI ひと言で言えば、AKINOが成長したということですよね。自分1人の力で曲を解釈して、そのイメージや雰囲気を生かすことを考えて歌えるようになったんだと思います。
KANASA これはAKINOにとって大きなチャレンジだったと思うんです。新しいジャンルの曲をどう歌えばいいのか、AKINO自身が考えて悩んで答えを出した。そこにAKINOの成長も見られたし、その成長のおかげでこの「cross the line」が完成したとも言えますね。
「もう1テイク録ってよかったね」は最高の褒め言葉
──過去のインタビュー記事などを見るに、AKINOさんはレコーディングのとき、プロデューサーからOKが出ても、「もっとできます」とテイクを重ねるタイプだと。
AKINO そうですね。今回のレコーディングでも何回かOKをもらったんですけど、やっぱり自分が納得するまでやりたいし、理想とするイメージがあるので。
AKASHI 僕ら4人とも、昔からお父さんとお母さんに「妥協はするな」って言われて育ってますので。もちろん、たまに妥協することもなくはないんですけど、必ずあとで「もっとがんばっておけばよかった」って後悔します。
AKINO がんばったほうが絶対にいいんですよね。私がレコーディングで一番うれしいのは、OKが出たあとに自分のわがままでもう1テイク録ってもらって、それを聴いたみんなが「もう1回やってよかったね」って言ってくれたときなんですよ。
AKASHI AKINOは、歌えば歌うほど声が出るし伸びるんですよ。一般的なボーカリストは歌い続けると疲れてきちゃうので、1stテイクかそれに近いテイクがベストになることが多いと思うんですけど、AKINOの場合は逆に、最後の最後に最高のテイクを出してくるタイプですね。
AIKI お姉ちゃん(AKINO)は昔からすごく努力家で、それは家族全員が知っているんです。新しい曲をやるときは1人でずっと練習して、いつまでもその曲ばかり聴いていて、本当に入り込んでいく。その一生懸命な姿勢から、力強い声や曲のイメージに合った歌が滲み出てくるんじゃないかと思います。
AKASHI でも、たまに止めないといけないときもあるから。
AKINO それは昔の話でしょ!(笑)
AKASHI 前はストイックすぎて、自分がKOされちゃうこともあったんですけど、最近はやっと加減がわかってきましたね。
KANASA 息抜きも必要だよねってことだよね。
4歳のとき、お兄ちゃんに無理やりバク転させられた
──普通の感想なんですけど、4人共非常に仲良しですよね。兄妹間のパワーバランスは子供のときから変わらないですか?
一同 変わらないですね。
AKASHI やっぱり、長男の僕が一番強い。
KANASA お兄ちゃんは、これでもずいぶん優しくなったんですよ。昔は超スパルタで、テコンドーをやってたから武闘派で、みんなを巻き込んで。
──bless4の皆さんは全員テコンドーをやられていますが、それはAKASHIさんの影響、というか強制?
AIKI 両方だと思います(笑)。
AKASHI テコンドーの練習が終わるまで妹たちに晩ごはんを食べさせなかったりしましたね。
AKINO 私は5歳のときに無理やりバク転させられた。
AIKI 僕は4歳だったかな。
AKASHI AIKIはまだ小さかったから、頭と腕の長さが同じくらいだったんですよ(笑)。だからバク転させると頭が地面とぶつかるかぶつからないか、すれすれな感じで。でも、「とりあえずやってみろ!」と僕が体をつかんでそのままひっくり返す。今はさすがにそんなことしませんけど。
KANASA お兄ちゃんは「自分ができることはみんなもできる」って思ってるから(笑)。
AKINO あのときお兄ちゃんは13、14歳だっけ? 自分のことを「お兄ちゃん」て呼ばせるようになったのもその頃だよね?
AKASHI そう。当時アニメに影響されてて、「ドラゴンボール」が大好きだったんです。アメリカでは兄妹同士はファーストネームで呼び合うのが普通なんですけど、「ドラゴンボール」で孫悟飯の弟の孫悟天が、悟飯のことを「お兄ちゃん」ってずっと呼んでるんです。で、「お兄ちゃんってなんなの?」ってお父さんに聞いたら「big brotherのことだよ」っていうから、その日を境に「今日から俺のことは『お兄ちゃん』と呼びなさい」と(笑)。
KANASA AIKIはなかなか呼ぼうとしないから、ぶたれたこともあったよね。
AKASHI なので、たぶんAIKIは「ドラゴンボール」好きじゃないよね?
AIKI 大好きだよ。「ドラゴンボール」はね(笑)。
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収録曲
- cross the line
[作詞:山本メーコ / 作・編曲:IKUO] - I Got This
[作詞:KANASA / 作・編曲:鴇沢直] - cross the line(Instrumental)
- I Got This(Instrumental)
AKINO with bless4(アキノウィズブレスフォー)
長男AKASHI、長女KANASA、次女AKINO、次男AIKIの4人兄妹からなるボーカル&ダンスユニット。アメリカで生まれ育ち、1997年より親の母国である日本でユニットとしての活動を始める。2003年にフジテレビ系メジャーリーグ中継のテーマソング「Good Morning! Mr.Sunshine」でメジャーデビューを果たした。2005年にはAKINOがソロで歌唱したテレビ東京系アニメ「創聖のアクエリオン」の主題歌「創聖のアクエリオン」が大ヒットを記録。2012年に放送された同アニメの続編「アクエリオンEVOL」では、AKINO with bless4による楽曲「君の神話~アクエリオン第二章」がオープニングテーマに採用された。2014年にAIKIがボランティア活動のため渡米し、しばらく3人で活動していたが、2016年秋より4人での活動を再開。11月にニューシングル「cross the line」をリリースした。