音楽ナタリー Power Push - AKINO with bless4
4人兄妹の揺るがぬ絆とハーモニー
負けん気の強さが出たKANASAの歌詞
──シングルに話を戻して、カップリング曲の「I Got This」は、KANASAさんが作詞をなさっていますね。
KANASA はい。鴇沢直さんに曲を作っていただいて、それを聴いた瞬間にモーターレースが思い浮かんだので、じゃあレースの曲にしようってすぐに決めて。と同時に、「I Got This」(私はできる)という力強い言葉も浮かんだので、それを軸に詞を書いていきました。
──「連敗続きは流石に辛い」けれども、「何度心折れたって 走り続けるよ」「勝利をつかんでも休みはしない」と、貪欲かつアグレッシブに上を目指す人の歌ですよね。
AKASHI KANASAは昔から負けん気の強い子だったんですよ。レースとは関係ないんですけど、腕相撲ではAIKIが17歳になるまでずっと勝ってたし、町の腕相撲大会で優勝して商品をもらって帰ってきり。だからそういう部分が歌詞に表れてるんだと思います。
KANASA そうですね(笑)。
──歌詞の中にも「思い描く:I'm #1」という一節が見られたり。
KANASA 聴いてくださる方にとって、ナンバーワンはそれぞれ違う意味を持つと思うんですよね。それこそ町の腕相撲大会で1番になるでもいいし、世界タイトルを獲るでもいいし、そこはリスナーの皆さんに委ねて。いずれにしても、それぞれの思うナンバーワンに近付く過程で最高の自分が作られていくはずなので、どんな逆境にあっても自信を持って、自分にとってのナンバーワンを目指して欲しいっていう願いを込めて書きました。
──で、1番のサビでは「君と僕のrace」だったのが、2番のサビでは「僕対ボクのrace」になる。
KANASA 自分にとっての最大の敵は自分自身。っていうことはたぶん皆さんもわかってらっしゃると思うんですけど、自分自身に勝つことができれば、ほかの誰にも負けることはないんだって。
AKASHI KANASAの歌詞について、普段はあまり掘り下げて話すことはないので新鮮ですね。もちろん、歌詞を読めばKANASAが伝えたいことはわかるんですけど、その裏にどんな思いがあるのかまでは聞かないですし。
AKINO お姉ちゃんはけっこう面白い歌詞を書くんですよ。たまに面白すぎて「え? どういうこと?」みたいに混乱することもあるんですけど、この「I Got This」はテーマもクリアで、みんなも「いいねえ!」って感じだったよね。
AKASHI AKINOの歌と同様に、KANASAの詞に対してもみんなで「ここは直したほうがいいんじゃない?」みたいなアドバイスをすることが多かったんですけど、今回はそれがなくて。だから、AKINOは「cross the line」で、KANASAは「I Got This」で、それぞれ歌と詞を自分1人で表現しきったことになりますね。
AKINOは本番前に風邪を引き、AIKIは帰国した翌朝にレコーディング
──「I Got This」は、ハードロック的なギターリフが挿入されたりはするものの、曲調としてはいわゆるダンスナンバーですよね。その意味では皆さんなじみのあるリズムだったと思われますが、こちらのレコーディングはいかがでした?
KANASA 実はレコーディングの数日前にAKINOが風邪を引いてしまって、本番まで声が出せなかったんです。
AKINO デモを何回も聴いてイメージトレーニングはしていたんですけど、いざ本番で初めて思い切り声を出したら、自分が想像してたよりかなりふらついた、不安定な声だったんですよ。
──「cross the line」のときとはまた違う形で、イメージ通りの歌にならなかったと。
AKINO 「こんな声じゃなかったのに!」って。だからすごくショックで、一瞬ダウンしかけたんですけど、歌詞を見るとサビの最後に「I Got This!」って書いてあるんですね。それを読んでいるうちに、私もここで負けられないと思って、「I Got This... I Got This... I Got This... I Got This!!!」みたいな(笑)。
──半ば自己暗示をかけるように(笑)。
AKINO お姉ちゃんの歌詞に助けられましたね。そうやって念じてるうちに声もだんだんきれいに出るようになっていって、レコーディング終盤はすごく楽しんで歌うことができました。だから、ほんとに気持ちって大事だなって思いました。
AKASHI あと、実はAIKIが日本に帰ってきた次の日が、「I Got This」のレコーディングだったんですよ。なので、AIKIは曲を聴かずに翌朝現場に行って、ハーモニーを録ってるんです。
──4人中2人がぶっつけ本番ってことですよね(笑)。
AKINO お兄ちゃんは、いつも1週間に1回はAIKIにメールするんですよ。だから、いつレコーディングなのかを前もって伝えるべきだったんですけど……。
AIKI 僕が帰ってきたらお兄ちゃんが「明日レコーディングだよ」って。それに対して僕が「そうなんだ。がんばってね」って返したら、「違うよ、AIKIも行くんだよ」って(笑)。でも、ひさしぶりのレコーディングは楽しかったです。たぶん、ハーモニーも大丈夫だったと思うんですけど……。
AKASHI みんなAIKIの才能を信じてますし、実際、本番前にちょっと練習したらもうバッチリでしたね。
AKINO 2年間のブランクがまったくない。
AIKI ありますあります。
AKASHI そう思ってるのはAIKIだけで、むしろ昔よりパワーアップしてると感じたくらいです。
将来的にはAKINO with bless16くらいになる可能性も?
──今回「cross the line」で一線を越えたわけですが、次の一線も見据えています?
AKINO さっきお兄ちゃんも言ったように、2年ぶりにAIKIが帰ってきたので、ここからがbless4にとっての新たなスタートだと思うんですよね。なので4人の絆をもっと深めて、個々の実力もさらにアップさせて、たくさんの人に私たちのパフォーマンスを届けられたらいいなって思います。
AKASHI bless4としての活動だけでなく、例えばAIKIは振り付けをしたり、AKINOはファッションのデザインをしたり、KANASAは作詞や講演をしたり、僕は音楽を作ったりと、それぞれほかにもやってることがあるんですね。そうやって別の分野でも個性を伸ばして、成長した4人が集まったときに、それが何十倍、何百倍になると思うので、そうなれるようにがんばっていきたいなと。あと世界に向けて、今ちょっと企画を考えたりも。
──皆さん帰国子女で母語は英語ですので、世界に向けてダイレクトに投げられる言葉をお持ちですもんね。
AKINO 私たちは、自分たちのスクールで子供たちに歌やダンスを教えてもいるんですね。なので、その生徒たちを私たちと同じステージに立たせたり、彼らと一緒に海外に行ったりとか、将来的にはそういうことも目指してます。
AKASHI 偉そうに言うと後進の育成っていうやつですね。今は自分たちが先陣を切って、子供たちに背中を見せている段階です。
──KANASAさんは?
KANASA えっ?
──えっ?
AKASHI ごめん! 僕がだいたいしゃべっちゃったかな(笑)。でも、KANASAが越えるべき一線はこういうことだよね?(親指を立てながら)
KANASA そうですね、だんだん齢も重ねてきて、私たち4人もずっと独身ではいられないので……何を言わせるの!(笑)
AKASHI そのうちみんな結婚して、子供ができてbless16とかになったりね(笑)。
KANASA 今は4人そろって活動していますけど、例えば2年前にAIKIが単身アメリカへ渡ったように、それぞれが別の道を歩き出す日も来ると思うんですよね。でも、おじいちゃんおばあちゃんになったらまた集まってハーモニーできたらいいなって。そういう夢はありますね。
AIKI 自分たちがほかのグループと大きく違うのは、1つは兄妹で活動している点だと思うんですよね。だからその兄妹、家族の絆を軸に、みんなで一緒に夢を叶えていくっていうのがこの先やりたいことなのかなって。叶える夢というのは、bless4としての夢はもちろん、個々人の夢も、そしてお客さんの夢もです。僕らを支えてくれるお客さんがいるからこそ、僕らも夢を叶えられるわけじゃないですか。だったら、僕らも自分たちのエンタテインメントを通してお客さんの夢を叶える応援をしたい。そうやってみんなで夢に向かって進んでいけるような空気感を、この4人で作っていきたいですね。
収録曲
- cross the line
[作詞:山本メーコ / 作・編曲:IKUO] - I Got This
[作詞:KANASA / 作・編曲:鴇沢直] - cross the line(Instrumental)
- I Got This(Instrumental)
AKINO with bless4(アキノウィズブレスフォー)
長男AKASHI、長女KANASA、次女AKINO、次男AIKIの4人兄妹からなるボーカル&ダンスユニット。アメリカで生まれ育ち、1997年より親の母国である日本でユニットとしての活動を始める。2003年にフジテレビ系メジャーリーグ中継のテーマソング「Good Morning! Mr.Sunshine」でメジャーデビューを果たした。2005年にはAKINOがソロで歌唱したテレビ東京系アニメ「創聖のアクエリオン」の主題歌「創聖のアクエリオン」が大ヒットを記録。2012年に放送された同アニメの続編「アクエリオンEVOL」では、AKINO with bless4による楽曲「君の神話~アクエリオン第二章」がオープニングテーマに採用された。2014年にAIKIがボランティア活動のため渡米し、しばらく3人で活動していたが、2016年秋より4人での活動を再開。11月にニューシングル「cross the line」をリリースした。