自分が作ったものに独りぼっちで向き合った(アイナ)
──お互いにそれぞれの曲を聴いてどう感じたかも聞かせてください。
アイナ 「夜王子と月の姫」は私のお父さんも銀杏BOYZがすごく好きなので、だからどんなふうになるんだろうってワクワクしてて。聴かせてもらったチッチの歌は原曲のきれいな部分がもっときれいになっていると言うか、チッチにしか作れない空気があって、カバーで原曲とこんなに色が変わるんだ?って思いました。
──確かにチッチさんならではの空気感がありますね。
アイナ 今回チッチはカッコいいだけじゃなくて、美しいとか儚いとかでもなくて……とにかく“チッチ”っていう感じ(笑)。リーガルリリーさんとコラボしたことでその波長が生まれた気もするので、逆にチッチが1人だったらまた違っただろうなとか、いろんな想像をしながら何回も聴いてます。
──チッチさんはアイナさんの「きえないで」を聴いていかがでしたか?
チッチ もともとこの曲のことは知ってたんです。でも今回の音源ですごく変わったなって思って。楽器が入るとこんなに変わるんだっていうのもあるし、何よりもBiSHでは見れないアイナがこの曲にいるなって。生々しいアイナを感じてゾクゾクして、真っ裸を見ちゃったみたいな感覚になりました。
アイナ 何回も見てるけどね。お風呂の中で(笑)。
チッチ しばらく見てないよ(笑)。
アイナ そうかも。3年ぶりぐらいの真っ裸だ。
──そういう意味では今回チッチさんも裸と言うか、自分の大切な部分を見せてるわけですよね。そこに抵抗はなかったですか?
チッチ 私はなんのためらいもなかったです。自分の“好き”を詰め込んでやるって決めた以上、私がちょっとでも不安に思ったらダメだなって。銀杏BOYZが好きな人って、ただ好きとかじゃなくて特別な思いがあると思うから、私がそこで中途半端なことをしたら殺されちゃう。それぐらいの気持ちでやり切りました。
──アイナさんも自分の原点をさらけ出したわけですが、ためらいはなかった?
アイナ なかったですね。心の底の底の底にあったやりたいことを初めてできた感覚。自分が作ったものに独りぼっちで向き合って、みんなの意見も聞いたけど、でも1人でやらなきゃダメだと思った。そういうの初めてだったから楽しかったですね。
この2人のバランスは奇跡的(チッチ)
──では最後にBiSHでの活動も含めて、2人にとってお互いがどういう存在なのかをそれぞれの視点で伺いたいんですが。
チッチ 私がアイナを見てて思うのは周りに影響されない人だなって。自分のやり方を持ってて、それを周りに押し付けることなく自然にやってる感じがする。
アイナ それを言うなら、チッチがいてくれるから私もアイナ・ジ・エンドでいられるんだと思う。やっぱりチッチがBiSHの歌の軸になってくれてるからメンバーみんな好きなことができるし。でもチッチはBiSHの軸でありつつ、チッチ自身も変化してるところがすごいなと思ってて。
──どういうことですか?
アイナ 初期は透明感のある声のイメージが強かったけど、どんどん変わってきて、今は芯のあるカッコいい声になってる。がむしゃらで一生懸命で、すごく美しいけど美しいだけじゃないみたいな。
チッチ 確かに自分でもめっちゃ変わっていってるって言うのは思います。
アイナ 日によっても違うしね。その日のテンションとか気分で声色が変わったり。
チッチ うん、ライブ制作の佐藤さんにも「お前が調子悪いとBiSHの士気が下がる」「お前が調子いいとみんなも調子よくなるからがんばれ」みたいに言われる(笑)。
──そうやって自分がグループの軸を担っていることは、チッチさんにとって負担にならないですか?
チッチ プレッシャーとかは全然感じてないです。歌いたくて歌ってるだけだから。いつも楽しんでやってます。
──ボーカリストとしてはお互いをどう見ています? それぞれ違う個性があると思いますが。
チッチ アイナは出会ったときから声が素晴らしいなって思ってます。私は特徴のある声じゃないから、アイナはすごいなって思う。生まれ持ったものが強いのかなって。
──チッチさんの歌声もすごく強いと思いますけど。
アイナ そうですよね。私はチッチのあとに歌うときはすごく気持ちいいと言うか、チッチの歌を体に染み込ませて、その流れで自分が歌えるって気がしてる。だからもしチッチがいなかったらBiSHの私は全然違う私になってただろうし、もしかしたらチッチもそうなのかなって思う瞬間もあるし。だからいてくれなきゃ無理です(笑)。一度チッチがBiSHから離れてしまいそうな時期があったんですけど、そのとき毎日泣いてましたからね。「いなくなるとかマジ考えられない」みたいな。それぐらい大事な人ですね。
──お互いにいい影響を与え合ってるんですね。
チッチ 私もアイナがいないのとか想像できない。「2人の声の対比がいいよね」って言われることもけっこう多くて、だから奇跡的なバランスなんだろうなって思うし、どっちかがいなかったら、とか考えるのほんとに怖い(笑)。
──今回のソロで2人の新たな魅力が見えた気がしますね。次作の予定もあったりするんでしょうか?
チッチ 今のところは未定ですね。でもアイナの曲を聴いて、自分の曲もそうだけど、BiSHは6人いるけどみんな1人ずつ全然違う世界を持ってるんだろうなって思いました。すごく楽しかったから、機会があったらまたやってみたいなって思ってます!