BiS|覚悟決めた9人が駆け抜ける11分24秒

BiSが3月20日にニューシングル「Are you ready?」をリリースした。

メジャー第4弾シングルとなる本作には、Queenを題材にした映画「ボヘミアン・ラプソディ」に感銘を受けて制作されたという表題曲と、2016年のBiS再始動時に発表された「BiSBiS」の現体制バージョンを収録。ファン投票企画「BiS.LEAGUE」が廃止され、9人で新たなスタートを切るBiSの決意が込められたシングルとなっている。

音楽ナタリーではメンバー9人へのインタビューを実施。11分24秒にわたる長編となった新曲の制作エピソードや、昨年末に“戦力外通告”を受けた4人の心境、69時間にわたるリリースイベントや全国ツアーへの意気込みなどを聞いた。

取材 / 田中和宏 文 / 三浦良純 撮影 / 宇佐美亮

私たちアイドルっぽいですか?

──「Are you ready?」はQueenのオマージュもありつつ、11分24秒におよぶ超編曲でアイドルソングとして類を見ない構成です。最初に曲をもらったときは驚いたんじゃないですか?

ゴ・ジーラ 驚きました。

アヤ・エイトプリンス 笑っちゃった。

ムロパナコ 今「アイドルソング」って聞いて、私たちはアイドルで、この曲ってアイドルソングなんだ……って思っちゃった。

パン・ルナリーフィ 確かに。アイドルとは……。

ペリ・ウブ 忘れてましたよ。自分たちアイドルなんだって感じで。

パン アイドルは戦車に乗らないし(笑)。逆に私たちアイドルっぽいですか? ってめんどくさい女の人みたいになった(笑)。

──新しいアイドル像を切り開こうとしているのがBiSなのかなと。楽曲に対して具体的にどんな印象を持ったのかそれぞれ聞かせてください。

ペリ 私、実はQueenをあまり知らなかったんですけど、今回Queenのオマージュがあるということでメンバーそれぞれ「ボヘミアン・ラプソディ」を観に行ったり、めっちゃ勉強したりしたんですよね。それで私もQueenのすごさを知りました。「Are you ready?」は、まったく違うさまざまな曲のサビが1曲に詰め込まれたみたいでめっちゃ面白かったです。

ムロ 私はたまたまQueenの曲にハマってたところで「ボヘミアン・ラプソディ」が公開されて、この曲をいただいてという流れがあったんです。この曲は私が好きなマキシマム ザ ホルモンっぽいパートもあって楽しいなって思いました。

キカ・フロント・フロンタール こういう長い曲を作ることは事前に聞いてたんですけど、予想以上にコロコロと曲調が展開する曲でした。11分もある曲を覚えられるのかなとも思ったんですけど、聴いていたら11分をあっという間に感じるような素敵な曲だと思います。

左からキカ・フロント・フロンタール、アヤ・エイトプリンス、ムロパナコ。 左からキカ・フロント・フロンタール、アヤ・エイトプリンス、ムロパナコ。

──Queenのオマージュに始まり、メタルコアに展開してみんなで叫ぶパートがあって、キラキラしたかわいいパートがあって、壮大なラストを迎えるという。オーケストラのような構成で聴き応えがありました。それぞれのパートごとにコンセプトは違うんですか?

トリアエズ・ハナ 曲をもらったとき、パートごとに題名がついていたんです。最初のQueenのところは「パパ」、次は歌詞から取って「ナマステ」、かわいい部分は「変なとこ」みたいな。おかげで歌うときにイメージしやすかったです。

YUiNA EMPiRE 普段はレコーディング時に歌割りが決まってなくて、全部歌ってから割り振られるんですけど、今回は歌割りが最初から決まっていて。松隈(ケンタ / 音楽プロデューサー)さんがそれぞれのセクションのイメージに合いそうな子を予想して振り分けてくれました。

キカ 今までにないパターンでしたね。声のキャラクターによって割り振ってくださって。

ムロ でも、急遽録ったところが使われることもありました。

YUiNA 「私はね 平穏を願うの」ってパートがお気に入りです。私もホントに願ってるので。

一同 (笑)。

ペリ 地球の平和かな。

YUiNA そう。地球の平和。

ムロ 女神みたいだね(笑)。

「ナゲット割って父ちゃん」をそのまま

──歌詞は独特で面白い響きのフレーズが多いですが、歌い方についてディレクションされたんですか?

ゴ・ジーラ 「こういうふうに歌って」と指示を受けつつ、歌詞カードを見ながら歌いました。でも、英語の部分とか英語で歌ってなくて、「now you do what they told ya」というフレーズは「ナゲット割って父ちゃん」って空耳をホントにそのまま歌ってたりします。

キカ 私は英語でめっちゃ練習してからレコーディングに臨んだんですよ。そしたら「日本語で“ナゲット割って父ちゃん”って歌って」と言われて。「タモリ倶楽部」の空耳アワーが元ネタらしいです。

ハナ みんなでレコーディングのときに「タモリ俱楽部」の映像を観て。

キカ けっこうそういう言葉遊びをしてますね。

パン 「今ラジオ」って歌詞とかもそう。

──そういえば、この曲は松隈さんのラジオでフル尺が初公開されたんですよね。30分の番組でまるごとってなかなかできないことですよ。

キカ 番組の3分の1がこの曲ですからね(笑)。

ゴ・ジーラ ありがたい。

左からトリアエズ・ハナ、ゴ・ジーラ、ミュークラブ。 左からトリアエズ・ハナ、ゴ・ジーラ、ミュークラブ。

──リリース前にラジオで流すというのもQueenのオマージュなんですかね。

ムロ この曲は長すぎて本当はラジオで流せないけど、仲良しだから流しちゃおう、乾杯!みたいなシーンが「ボヘミアン・ラプソディ」でもありましたね。そういうことなのかも。

──新衣装にもフレディー・マーキュリーへのリスペクトを感じます。

アヤ スター感ありますよね。

ハナ 錦野旦さんっぽく感じることもありますけど。

──「ボヘミアン・ラプソディ」は皆さん観たとおっしゃってましたね。

ペリ 個人的にそれぞれ行きました。

パン みんなTwitterに半券の写真をあげていたからオタクのみんなは新曲を聴いて「あっ!」ってなったと思います(笑)。

ムロ 渡辺淳之介さんも「ボヘミアン・ラプソディ」を観に行って、その日に松隈さんに電話をかけたらしいんです。「これやろう」って。そしたら松隈さんもたまたま同じ日に観ていたらしくて。そんなことからできた曲をBiSに歌わせてくれて、ありがたいです。

作曲して500円もらった

──今回レコーディングで新たな発見はありますか?

ゴ・ジーラ パンが作曲したよね?

パン そうなんです。「鳴りやまない頭の声だけ」というフレーズのメロディが最初は「We Will Rock You」のメロディのままだったんですけど、著作権的にアウトだから使えなくて。そのフレーズを割り振られていた私が松隈さんに言われて、その場でメロディを作ることになったんです。ありがたいことに500円もらいました。

ペリ 作曲料だ(笑)。

パン ほかにもレコーディングスタジオの近くの金物屋さんで買ってきた鍋を叩いて音を作ったり、「アゲンストザペイン」(2018年1月発売のシングル)からトランシーバーの音を持ってきたり、ライブ映像の拍手を使ったり、いろいろ組み合わせて作られた感じです。長いだけじゃなくて、こだわりがめちゃくちゃあってキュンとしました。

左からパン・ルナリーフィ、YUiNA EMPiRE、ペリ・ウブ。 左からパン・ルナリーフィ、YUiNA EMPiRE、ペリ・ウブ。

キカ あと今回コーラスが多いよね。何回も何回も録っていて。

アヤ Queenと同じでハモリがすごい。

パン みんなで1本のマイクに向かったりもして。楽しかった。

──ライブではフル尺でパフォーマンスするんですか?

一同 やりたい!

──振り付けは今回どなたが?

ムロ 我らがペリ・ウブ師匠です。がんばってくださいました。

ペリ 振り付けって普段は1番だけ作ったら終わりなんですよ。2番は同じことやって。でも、これは全部が違う曲のサビみたいだから、いろんなパターンの振り付けを作るのにすごく苦戦しました。1つこだわった部分として「ここから行くぞ!」という決意を私は表現したいと思って、「BiSBiS」「SOCiALiSM」「WHOLE LOTTA LOVE」「Don't miss it!!」とかBiSの体制が変わるタイミングの楽曲の振り付けや、EMPiREの楽曲の振り付けを各所に隠しているんです。そこを見てほしいです。