音楽ナタリー Power Push - KONAMI「BEMANI NEW FACE コンテスト」特集

kz(livetune+)インタビュー

プレッシャーを感じながら作ることは楽しい

──もしkzさんが公募に参加するとしたら、どの機種で、どういう曲をイメージして作りますか?

「MÚSECA」をプレイするkz(livetune+)。

やっぱり僕は「MÚSECA」が気になりますね。これって見た目はダンスミュージックが鳴りそうなゲーム機なんですけど、実際にプレイしてみたらいろんなジャンルの曲に合うゲームだなと思いました。そもそもボタンがパーカッションに似てますし、押すだけじゃなくて回す動作もあるのが肝ですよね。例えばシンバルのキメの音と回す動作を合わせても面白そうですし、回したらピアノのグリッサンドが鳴ったりするのも気持ちよさそうですし。

──実際にゲームをプレイしたときの気持ちよさを意識した曲作りをするということですね。

そうですね。単純に回す動作が楽しいので、僕だったら「ここで回してほしい」みたいなポイントを押さえた、キメの音がある曲を書きたいですね。公募では「ジャンル問わず」とありますが、やっぱり「SOUND VOLTEX」や「pop'n music」にも、それぞれそのゲーム機ならではの空気感がありますから、自分が好きなゲーム機の曲作りに挑戦してもらうのがいいと思います。

──ちなみにkzさん自身はこれまで公募に参加したことはあるんですか?

実はないんですよ。僕が駆け出しの頃はまだ公募の企画自体があんまりなかったんですよね。今はこういった公募企画が世の中にいくつもありますから、音楽を仕事にしたい人はガンガン応募したほうがいいと思っています。最近だと動画サイトで楽曲を公開することができますけど、動画で公開することと公募に参加することはけっこう意識が違うはずなので。例えば「BEMANI」シリーズの公募だったら、選ばれると全国のお客さんがお金を払って楽曲を遊ぶことになるわけですよね。そういうプレッシャーを感じながら作るってことが、実は楽しいことだと思うんです。しかも公募ってまだ仕事までは行き着いていないわけですから、プレッシャーに負けちゃってもいいんですよ。採用されたらうれしいけど、仕事ほどカッチリしたものではない。音楽を仕事にしたい人の入り口としては最適な場所だと思います。

──アマチュアの発表の場として動画サイトが注目されていますが、インスト曲は歌モノに比べて注目されない傾向にあると感じています。

そうなんです。インストはよっぽどのことがない限り、ランキングに上がることはありませんから。基本的に人気が出るのは歌モノばかり。だから「BEMANI」シリーズの公募はインスト曲を作るトラックメーカーにとっては貴重な発表の場として機能していると思います。全然知らない人からしたら「ゲームミュージックでしょ」って思われがちなんですけど、「BEMANI」に曲を提供することからプロになった人が作る音ってメチャクチャカッコいいんですよ。ゲームミュージックだけを専門としてるわけじゃなくて、ちゃんとアーティストとしてほかのフィールドでも活動してる人たちがいるっていうことが、やっぱり次世代のクリエイターにとっても心強いことだと思うので。なので「音ゲーへの公募」というところに抵抗感がある人がいるかもしれませんけど、その先にあるものまでしっかり意識して、こういう公募に踏み出してほしいですね。

ゲーセンでの音ゲーは楽器屋で高いギターを弾く感覚

──最後に音楽ゲームのシーンについてもお話を伺えればなと思います。ゲームセンターだけではなく、近年はアプリで音楽ゲームを楽しむユーザーが増えています。

kz(livetune+)

スマホで音ゲーをやる人はメチャクチャ増えましたね。ちょっと前まで、音ゲーって少しコア化している印象があったんですけど、キャラクターの力だったり、スマホの普及だったりで、音ゲーの普及が一気に広まった印象があります。個人的にはこれをきっかけにゲームセンターの音ゲーとかにも触れてくれればいいのになって思いますけど。

──スマートフォンで画面をタッチして音を出すのと、少し大きめのボタンを押して音を出すのとでは臨場感が違いますからね。

例えばパーカッションとかドラムとかって、単純に叩いたときに音が出るのが楽しいんですよね。なので、音楽の根本的な楽しみ方に近いのはやっぱりゲームセンターにある音楽ゲームだと思うんです。昔、僕は家庭用の専用コントローラーで「beatmania」をやり込んでましたけど、やっぱりゲーセンでプレイしたほうが気持ちよかったんです。それってたぶん、家で安いギターを弾いてから楽器屋で高いギターを弾く、みたいな感覚に近いんだろうなあと思っていて。僕自身、今日はひさびさに新しい音ゲーに触れてみましたけど、やっぱりプレイしているときの高揚感はスマホとは違いましたから。ぜひもっといろんな人にゲーセンの音ゲーにも触れてほしいですね。

kz(livetune / livetune+)(ケーゼット)

アニメソング、ゲーム音楽、J-POPなど幅広いジャンルの楽曲制作および編曲を手がける音楽プロデューサー。DJとしても活躍し「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」「ULTRA JAPAN」「ニコニコ超会議」などさまざまなフェスやイベントに出演している。ワーナーミュージック・ジャパンとASOBISYSTEMが手がけるイベント「YYY」では、中田ヤスタカ、tofubeats、banvoxらとともにレジデントDJを務める。ソロプロジェクトのlivetune名義では「Google Chrome-初音ミク篇-」のCM曲「Tell Your World」や初音ミク関連のイベント「マジカルミライ2015」のテーマソング「Hand in Hand」などVOCALOID楽曲を発表しているほか、SEKAI NO OWARIのFukase、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔といったボーカリストとのコラボ曲もリリースしている。また2015年10月には、ボーカリストにやのあんなを迎えた新ユニットlivetune+を始動させた。