ナタリー PowerPush - バロック

激動経てたどり着いた、確かな“今” 怜ソロインタビュー

2011年7月、横浜赤レンガ倉庫特設ステージで行われたフリーライブをきっかけに約7年ぶりの復活を果たしたバロック。昨年1月にはシングル3作を同時リリースし、その全てがオリコンの週間インディーズチャートトップ5にランクインするなど圧倒的な存在感を発揮している彼らから、2013年最初のシングル「たとえば君と僕」が届けられた。

今回はボーカルの怜に単独取材を敢行。バンド復活当初のビジョン、メンバーの失踪事件、本作の制作プロセスから3人体制となったバロックの今後まで、たっぷりと話を聞くことができた。

取材・文 / 森朋之

自分たちで“バロック現象”を起こそう

──まずは2011年のバロックの復活から現在に至るまでを振り返ってみたいと思います。

2012年11月7日のNHKホール公演の模様。(撮影:河井彩美)

そうですね……。赤レンガのライブから1年半、ちゃんと活動し始めてからちょうど1年になるんですけど、とにかく止まらずに走り続けてましたね。復活後すぐにシングルをリリースして、ライブもずっと続けていて。メンバーとも「間髪入れず、発信し続ける1年にしよう」という話はしてたんですよ。とにかく面白いことが好きで、今のメンバーと塊になって何かをやるのが楽しいので。アクシデントもいっぱいありましたけどね。せっかく復活したのに、すぐにメンバーが見当たらなくなったり(昨年6月にベーシストの万作が失踪。その後代理人を通じて無事が確認されるも、バンドには戻っていない)。

──少しずつ聞いていきたいんですが、そもそもバロックを復活させようと決めたのはどうしてなんですか?

震災のこともあったんですけど、メンバーと会った瞬間に話したのは「やりたいと思ったらやればいい。体が動くうちに、自分たちがやりたいと思うバンドをやろう」いうことだったんです。そのとき俺と圭はkannivalism、晃と万作はboogiemanというバンドをやっていて。バロックをやると2倍大変だけど、「それ以上に(バロックを)望む気持ちがあるんだったら、全部一緒にやればいいじゃん」っていう。俺はいろんな人から「ボーカルとして(2つのバンドに対して)どう線を引くんだ?」って訊かれましたけど、自分の中では明確だったんですよね。どちらのバンドも自由というテーマは軸に、kannivalismは根本の自分だったり、精神的な部分の内側を表現する場所。バロックは自分にとって、いろんな意味で“夢”なんですよね。アーティストとしての夢でもあるし、バンドというものに対して描く夢でもあって。応援してくれる人たちに夢を見せると同時に、自分も夢を見ることができるっていうのかな。そこがハッキリしてたから、「今だったらやれるのかな」と。

──内面的な部分を表現できる場所と夢を追求できる場所がある、と。怜さんにとっては2つのバンドが存在しているからこそ、バランスが取れるのかもしれないですね。

うん、まさにそうだと思いますね。kannivalismのときもいろいろありましたからね。特に(適応障害で)入院したこともあったし……。今はどちらも表現できているので、心の状態はいいです。

──バロックは7年ぶりの活動再開だったわけですが、新しいバンドをスタートさせるような感覚もあったんでしょうか?

うーん……。最初は「バロックそのものになろう」としてたんですよね。そういう気持ちでやっていくうちに、自然と新しいバロックが見えてくるんじゃないかなって。さっき言ったように「とにかく面白いことをやろう。やれるなら今すぐやろう」という感じだったし、実際、決めたらすぐに動いて。シングル、ライブも含めて、自分たちで“バロック現象”を起こそうっていう。

──確かにすごいスピードで動いてましたからね。

うん、速かったです。とにかく曲ができたらすぐに発信するというスタイルでやりたかったので、ライブでもどんどん新曲をやってたし、シングルを500円で発売するっていう理由の1つもそうだし。なんて言うか、良い意味でも悪い意味でも“まさか”ってことが多かったですね。復活できたのも“まさか”だし、ツアーの直前に万ちゃんが急にいなくなるのも“まさか”だったし。

ニューシングル「たとえば君と僕」 / 2013年1月23日発売 Warner Music Japan
初回限定盤A[CD+DVD] 1000円 WPZL-30547/8
初回限定盤B[CD+DVD] 1000円 WPZL-30549/50
通常盤[CD] 500円 WPCL-11268
CD収録曲
  1. たとえば君と僕
初回限定盤A DVD収録内容
  • 「たとえば君と僕」ミュージック・ビデオ
初回限定盤B DVD収録内容
  • 「メロウホロウ」ミュージック・ビデオ
バロック

怜(Vo)、圭(G)、晃(G)からなるヴィジュアル系ロックバンド。2001年に結成。瞬く間に人気を獲得して2003年にシングル「我伐道」でメジャーデビューし、同年8月に初の日本武道館ライブを成功させるも、2004年12月25日にZepp Tokyoでのライブをもって解散する。その後、怜と圭はkannivalism、晃はboogiemanのメンバーとして活動。2011年7月に横浜赤レンガ倉庫野外特設ステージでフリーライブを行い、本格的な活動再開を発表。2012年からは、1月に完全復活第1弾シングル3タイトルを同時発売するなど、精力的なリリースやライブ活動を続けている。なお2012年6月にメンバーの万作(B)が行方不明になり、その後代理人を通じて体調不良による契約解除の申し出があったため、現在は3人で活動中。


2013年1月31日更新