音楽ナタリー Power Push - BAND-MAID

世界中の“ご主人様”を熱狂させるメイドたちの多忙すぎる日々

忙しすぎて機材車の中でもLINEで会話

──今年は日本でも初の全国ツアーがありましたが、そこでの経験が今作の制作にフィードバックされた部分はありますか?

小鳩 実は全国ツアー中にアルバムの制作をしていたので、けっこう追い詰められてましたっぽ(笑)。

──ああ、やっぱりそうでしたか。皆さんの今年のスケジュールを確認したんですけど、ライブが多すぎて「いったい、いつレコーディングしたんだろう?」と疑問に思ってたんですよ。

小鳩 あはは!(笑) ツアーを回って地方から帰ってきた日にレコーディングしてましたっぽ。

──それはキツいですねえ。

彩姫 ライブに対する生の反応を感じられた状態でレコーディングできたので、そういう意味ではよかったですけど、もうやりたくないです(笑)。

一同 あはは(笑)。

──ライブの翌日って体だけじゃなくて耳も疲れてるから、レコーディングするにはなかなか厳しい状態ですよね。

AKANE(Dr)

AKANE はい。ミクは機材車の中でがんばって歌詞を書いてたし。

小鳩 そうなんですよ。車に揺られながら「うーん……」って(笑)。でも、そうやって追い詰められた中でできた作品なので、自分たちの成長につながったのかなって思います。

──普通は2週間なり3週間なりまとまった時間の中で集中して録るものですもんね。

彩姫 今回はライブとレコーディングのスイッチを切り替えながらやってました。

小鳩 「昨日はあの曲のレコーディングをがんばったけど、今日はライブだあ!」とか(笑)。

──歌詞は書かなきゃいけないし、ライブのセットリストも考えなきゃいけないし。

小鳩 「MCもやらなきゃっぽー!」って。

彩姫 「今日は何日?」ってずっと言ってたもんね(笑)。時間が全然ないから、移動中の機材車でもみんなイヤフォンして、レコーディングした曲を聴いたりしてた。

小鳩 その様子だけ見たら仲悪いバンドみたい(笑)。車の中でもLINEで会話してたもんね。

──ああ、みんなの邪魔をしちゃいけないから。そんな余裕のない状態で作られた「Just Bring It」ですけど、作品全体から感じるのはバンドの楽しさや楽器を弾く喜びなんですよね。

彩姫 うん、毎日音楽に触れてたから楽しかったよね。

BAND-MAIDの曲ができるまで

──そして今作の大きな特徴は、収録曲の3分の2を自分たちで作詞・作曲しているということ。

小鳩 最初の頃はスタッフからダメ出しばかりされていたし、自分たちで全部の曲を作れるようになることを目標にしてたので、うれしいなって思いますっぽ。

──曲作りはどうやって進めたんですか?

小鳩 曲の基盤はKANAMIが作って、それをメンバーに投げるっていう形が多いですっぽ。

──KANAMIさんはどういうことを意識してデモを作っているんでしょうか?

AKANE(Dr)

KANAMI BAND-MAIDはメロディを重視しているので、とりあえずメロのアイデアをめっちゃ出します。ドラムとベースと簡単なギターのリフを入れたものを何十曲もメンバーに持っていって、みんなで選別して、そこからパートごとにイメージを膨らませてアンサンブルができていきます。

──あくまでも骨組みだけを用意すると。

KANAMI はい。そこから今度はボーカルに投げて、歌詞に合わせてメロディを変更してみたり。

──「ここは譲れない」みたいなことはないんですか?

KANAMI あまりないんですよ。やっぱりバンドの曲はみんなで作っていくものだと思うので。

彩姫 でも、絶対にギターソロは入れるよね。

KANAMI あ、そこはあるかもしれないです! ギターソロは「入れとくからね?」って(笑)。

──歌詞に関してはどうですか?

小鳩 基本的に小鳩が歌詞を全部書いてるんですけど、さいちゃん(彩姫)が大まかなイメージをくれる曲もあります。でもそうなると大変で。書いて、見せて、「違う」って言われたら書き直しになるから。共作の歌詞も小鳩が大まかなものを作るんですけど、「ここの部分はどういうイメージ?」ってさいちゃんに聞いてもなかなか返事が戻ってこなかったり。「ま、ま、まだですか、先生……?」「うーん、わかんないや!」みたいな(笑)。「じゃあ、文章でいいから送ってください」ってお願いすると、3文字ぐらいしか言葉を入れられないところに20文字ぐらいの文が入って返ってきたりするので、言葉を探してそれをうまく歌詞に組み込んでいくっていう作業が今回は多かったですっぽ。

──作家先生と編集者の関係みたいな。

小鳩 そうなんです、本当に!

──先生、どうなんですか?

彩姫(Vo)

彩姫 いや……そんなことは、ないです。小鳩は言葉で表現することに長けているので、私はイメージだけを伝えて、「歌詞にしてもらっていいですか?」ってお願いすることができるんです。

小鳩 今回はシングル用の曲も同時期に作ってたから、3曲分の歌詞を一気に書いてたときは機材車で死にそうな顔してたっぽ。

──移動中は休む時間なんですけどね。

小鳩 そうですっぽ! 機材車では寝たいんですけど。

彩姫 ずっと、「うーん、違う……。うーん、違うなあ」って言ってたよね(笑)。

小鳩 サービスエリアに着いたら、途中までできたものをさいちゃんに送って見てもらったり。

──本当はトイレ休憩の時間なんですけどね。

小鳩 そうなんですっぽ(笑)。歌詞を送るための時間になってました。

ここまでツインペダルを踏むことになるとは思いませんでした

──ところで、今回のレコーディングは前作と同じスタジオでやったんですか?

KANAMI 同じところでも録ったし、違うところでも録りました。

──というのも、前作と比べて演奏のテンションとパワーが全然違うなと思って。

KANAMI 音色はけっこう変わりましたね。機材が変わりましたし。

──今作はリズム隊の活躍がかなり大きいですよね。特に「モラトリアム」なんて、爆走ロックンロールじゃないですか。

AKANE この曲は私、集中力との勝負でした。

──AKANEさんはツインペダルを踏みまくってます。

AKANE ちょっとでも集中力が切れたら演奏が崩れちゃうから、切らさないように努力しました。体力勝負でもある曲ですし。

KANAMI 基本的にメロディ先行の曲が多いんですけど、この曲だけはバックトラックを先に作ってあとでメロディを乗せたんですよ。勢いが出てるのはそういうことなのかなと思います。

──仮にこの曲が1年前にあったとしても、ここまでカッコよくはなってなかったかもしれないですね。

AKANE(Dr)

AKANE 技術的な部分でここまではできなかったと思います。この1年で足がかなり強化されたので。

小鳩 足、太くなったっぽね(笑)。

AKANE うん(笑)。太くなったし、今回のアルバムではほかにもけっこう足技を使ってます。

──前作のタイミングで「ツインペダルを導入したのでこれからも踏んでいきたい」という話をしてましたけど。

AKANE ここまで踏むことになるとは思いませんでした。でも、(彩姫を見ながら)メンバーから求められる部分もあったし、自分でも入れたいと思ってたので「やってやろう!」という欲が出て、こんなことになりました。

──今の視線から推測すると、歌詞だけじゃなくサウンドや曲の構成の面でも彩姫さんの意見が多く採り入れられているみたいですね。

小鳩 メンバーの中にサウンドプロデューサーがいるって感じです。歌詞もそうですけど、曲に関しても「ここはもっとドコドコ入れたらいいんじゃない?」とか。

KANAMI 「ここのAメロの部分はもっと静かめにして。ズンズンしたヤツはいらないから」って言われて、「あ、はい。じゃあ、作り直すんでまた聴いてください」みたいになることは多いですね。

彩姫 聴いたときに、「これはこう」みたいな感覚が自然と湧いてきて、言葉にするのが得意ではないのですごく抽象的な説明になってしまうんですけど、メンバーがうまく汲み取ってくれます。

──彩姫さんみたいな存在がいるのは楽曲制作の上でかなり大きいですね。

KANAMI 本当に。感覚的にすごく優れているし、説明は抽象的なんですけど、「あ、なるほどね!」ってちゃんと伝わってくるんですよ。こういうアイデアマンがいるので新しいタイプの曲が作れているんだと思います。

メジャー1stアルバム「Just Bring It」 2017年1月11日発売 / 日本クラウン
Just Bring It
初回限定盤 [CD+フォトブック] 3700円 / CRCP-40485
通常盤 [CD] 2900円 / CRCP-40486
収録曲
  1. Don't you tell ME
  2. Puzzle
  3. モラトリアム
  4. YOLO
  5. CROSS
  6. OOPARTS
  7. Take me higher!!
  8. So,What?
  9. TIME
  10. you.
  11. Awkward
  12. decided by myself
  13. secret My lips
BAND-MAID(バンドメイド)
BAND-MAID

2013年7月に秋葉原のメイド喫茶で働いていた小鳩ミク(Vo, G)を中心に、KANAMI(G)、AKANE(Dr)、MISA(B)の4人で結成されたガールズロックバンド。結成から1カ月後に彩姫(Vo)が加入し5人編成となる。メイド服を身にまとい、ライブを“お給仕”、ファンを“ご主人さま”、“お嬢さま”と呼ぶスタイルで活動している。2014年1月に1stミニアルバム「MAID IN JAPAN」をリリース。4月に東京・Shibuya Milkywayにて初のワンマンお給仕を開催し、2015年7月に東京・Shibuya eggmanで行った2度目の単独お給仕ではチケットを完売させる。同年11月に2ndミニアルバム「New Beginning」を発表し、同作はiTunes Storeにて海外配信。2016年3月にアメリカ・シアトルで実施された日本文化のコンベンションイベント「SAKURA-CON」に出演し、約3000人の観客を前にパフォーマンスを行った。5月18日に3rdミニアルバム「Brand New MAID」を日本クラウンよりリリースしメジャーデビュー。6月に国内で初の全国ツアーを行い、10月からはメキシコ、イギリス、ドイツ、フランス、ポーランド、イタリア、スペイン、香港をめぐるワールドツアーを成功させた。2017年1月には初のフルアルバム「Just Bring It」を発表した。