音楽ナタリー Power Push - BAND-MAID
世界中の“ご主人様”を熱狂させるメイドたちの多忙すぎる日々
初の海外公演、メジャーデビュー、ワールドツアーと次々に新たなトピックが発表され、BAND-MAIDにとって2016年はまさに激動の1年となった。そんな彼女たちが2017年の幕開けと共に、初のフルアルバム「Just Bring It」をリリース。多くの楽曲をメンバーが自ら制作し、演奏力も格段に向上した今作は、バンドのネクストステージを感じさせる1枚だ。
取り巻く環境が短期間に一変し、しっかり掴まっていないと振り落とされそうなほどのスピード感で急成長を続けているBAND-MAID。彼女たちがこの1年で見てきたものはなんだったのか、5人のメンバーにたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 後藤壮太郎
目標を着実に達成できてることを感じる
──今年はBAND-MAIDにとって怒涛の1年だったと思います。まず、2016年の春に“当面の目標”として語っていたワールドツアーが、それから1年も経たない10月に実現してしまいました。
小鳩ミク(G, Vo) (拍手をしながら)実現したっぽー。
彩姫(Vo) ワールドツアーは予期せぬことだったので、決まったときはだいぶびっくりしました。「絶対うそだ!」みたいな(笑)。
──当然、バンドの人気や成長に合わせて組まれたツアーだったと思うんですが、そういう実感ってありますか?
KANAMI(G) 目の前のお客さんの数がちょっとずつ増えてきたけれど、海外にも本当にご主人様やお嬢様(それぞれBAND-MAIDの男性ファン、女性ファンの総称)がいるのかな?っていう不安はありました。でも実際に行ってみたら本当にいたので、バンドがちょっと前に進めているって実感できました。
AKANE(Dr) 国内のワンマンもソールドアウトできましたし、ワールドツアーができたこともそうですし、メンバー全員で目標を着実に達成できてることは感じてます。
──MISAさんはステージでウイスキーを飲んでるうちに……。
MISA(B) 1年終わってました(笑)。刺激が多すぎてあっという間に。人生で一番忙しい1年でした。
──皆さんにとって、ワールドツアーは今年の大きなトピックの1つだったと思います。
小鳩 KANAMIが言っていたように、行く前は不安が大きかったんですけど、実際に行ってみていろんな経験ができたし、海外のいろんなご主人様やお嬢様と触れ合うことができたので本当に行ってよかったと思いました。さらにいろんな国を回れたらいいなっていう気持ちが強まりましたっぽ。
メキシコでは開演40分前から「BAND-MAID!」コール
──中でもメキシコは大盛り上がりだったそうで。
小鳩 すごかったですっぽ! 楽しかったですね。
KANAMI ご主人様とお嬢様がいっぱい来てくださいました。
──1000人ぐらい集まったとか。
小鳩 そうです。日本でも経験のない規模の会場でたくさんのご主人様とお嬢様が盛り上がってくださったのは本当に感動しましたっぽ。
──以前メキシコに行ったときに感じたんですが、メキシコ人はメキシコシティの街で歩いているのを見かける限りはおとなしそうに見えるのに、ライブになるととんでもなく熱狂しますよね。
小鳩 ライブ中も「大丈夫かな?」って思ったっぽね。
──それはどういうことですか?
彩姫 オープンからスタートまで1時間あったんですけど、オープンしてちょっと人が集まってきたぐらいから「BAND-MAID! BAND-MAID!」ってコールが起こって、「あれ? もうライブ始まるっけ?」「いや、あと40分あるよ」ってビックリしました。しばらくすると一旦落ち着くんですけど、また「キャー!」って歓声が上がって、「BAND-MAID! BAND-MAID!」って。だから「ライブ始まったら疲れちゃってるんじゃない?」って心配してたんですけど、90分のライブの間ずっと盛り上がりがピークでしたね。小鳩もMCで「ちゃんと休んでね」って言うぐらい。
小鳩 心配になっちゃって(笑)。倒れる人が出てきちゃうんじゃないかなっていう。
──日本ではあまり知られてないけど、メキシコの人たちって日本のカルチャーに詳しいんですよね。
彩姫 ツアー前にマネージャーからメキシコが一番熱いっていうことを聞いてたので自分でも調べたてみたら、「今、日本のカルチャーが人気だ」って書いてあって。
──メキシコシティには中野ブロードウェイみたいな日本のカルチャーの発信基地がありますからね。
彩姫 現地の人も言ってました。みんなそこに集まって日本のグッズを買ったりするって。ライブ会場の外には露店が出てて、BAND-MAIDの“オフィシャルじゃないグッズ”もたくさん売ってたし。
小鳩 すごかったですっぽ! クオリティが高いのもあって。
彩姫 背中にBAND-MAIDのロゴが入ったライダースジャケットを作ってる人もいて(笑)。
小鳩 あれはすごかったよねえ。
彩姫 海外のご主人様・お嬢様の中にもそういうグッズを着てる人がいたけど、オフィシャルじゃないからこっちは何も反応できないっていう(笑)。
ドイツとポーランドでファンから受けたサプライズ
──海外だと曲に対する反応も日本と違っていたと思います。
彩姫 そうですね。海外だとメジャーデビュー以降の曲よりも、インディーズで出した「New Beginning」の曲が人気で。特に、日本だとそこまで盛り上がらない「Arcadia Girl」をやると「フォー!」って会場が沸きます。
小鳩 演奏前にタイトルを言ったりイントロを演奏したりしたときのテンションの上がり方がすごくて。BAND-MAIDには珍しいスローな曲なんですけど、海外だとひたすら盛り上がりますね。
彩姫 あと、「Before Yesterday」って曲はイントロのSEが流れた瞬間にみんなざわつきだすんですよ。
小鳩 そこからギターの音が入ると、「ヒュー!」って(笑)。
彩姫 その2曲が海外だと人気ですね。日本とは全然違います。
──わかりやすい反応を示してくれると気持ちをキャッチしやすいですよね。
小鳩 そうですね。伝わりますっぽ。一緒に歌ってくれるし、「スゴーイ!」とか「カッコイイ!」とか曲中にも声を上げてくれるんで。
彩姫 間奏で「スバラシイ!」とか(笑)。
──「ブラボー!」みたいな感覚で(笑)。ほかに今回のワールドツアーで印象的だった出来事はありますか?
小鳩 ツアー中に私とMISAが誕生日を迎えたんですけど、ライブでサプライズをしてもらって。
MISA 私の誕生日だったドイツ公演で、ライブ前にご主人様が大きな「ジャック ダニエル」のボトルをアンプの上に置いてくださってて、すごくびっくりしました。
──小鳩さんは?
小鳩 ポーランドでのお給仕(BAND-MAIDのライブのこと)中にご主人様とお嬢様が急にサッカーの応援歌みたいな曲を歌い始めて、「なんだなんだ? 勝手に盛り上がり始めちゃった!」って思ってたら、最後に「ミク、ハッピーバースデイ!」って言ってくださって。あとで聞いたらポーランドの誕生日の歌だったみたいで、びっくりしましたっぽ。
──AKANEさんは何か印象的な出来事はありましたか?
AKANE お給仕はもちろんですけど、オフ日も楽しみました。ドイツではケルン大聖堂に行ったり、スペインではサグラダ・ファミリアに行ったり。その国の料理を食べたりしたのも楽しかったです。
──ヨーロッパは移動が大変だったと思います。
小鳩 車移動だったので、すごく大変でしたっぽ。
彩姫 しかも、ミニバスに機材や物販で売るグッズも全部乗っけて、みんな体育座りで。
小鳩 その状態で6、7時間移動(笑)。
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- メジャー1stアルバム「Just Bring It」 2017年1月11日発売 / 日本クラウン
- 初回限定盤 [CD+フォトブック] 3700円 / CRCP-40485
- 通常盤 [CD] 2900円 / CRCP-40486
収録曲
- Don't you tell ME
- Puzzle
- モラトリアム
- YOLO
- CROSS
- OOPARTS
- Take me higher!!
- So,What?
- TIME
- you.
- Awkward
- decided by myself
- secret My lips
BAND-MAID(バンドメイド)
2013年7月に秋葉原のメイド喫茶で働いていた小鳩ミク(Vo, G)を中心に、KANAMI(G)、AKANE(Dr)、MISA(B)の4人で結成されたガールズロックバンド。結成から1カ月後に彩姫(Vo)が加入し5人編成となる。メイド服を身にまとい、ライブを“お給仕”、ファンを“ご主人さま”、“お嬢さま”と呼ぶスタイルで活動している。2014年1月に1stミニアルバム「MAID IN JAPAN」をリリース。4月に東京・Shibuya Milkywayにて初のワンマンお給仕を開催し、2015年7月に東京・Shibuya eggmanで行った2度目の単独お給仕ではチケットを完売させる。同年11月に2ndミニアルバム「New Beginning」を発表し、同作はiTunes Storeにて海外配信。2016年3月にアメリカ・シアトルで実施された日本文化のコンベンションイベント「SAKURA-CON」に出演し、約3000人の観客を前にパフォーマンスを行った。5月18日に3rdミニアルバム「Brand New MAID」を日本クラウンよりリリースしメジャーデビュー。6月に国内で初の全国ツアーを行い、10月からはメキシコ、イギリス、ドイツ、フランス、ポーランド、イタリア、スペイン、香港をめぐるワールドツアーを成功させた。2017年1月には初のフルアルバム「Just Bring It」を発表した。