ナタリー PowerPush - AZUMA HITOMI
la la larksと読み解く 1stアルバム「フォトン」の謎
コアな音楽性、ポップさ、歌唱力、そして「要塞のようだ」とまで形容される機材に囲まれた特異なライブパフォーマンスが渾然一体となった独特の音楽性を持つAZUMA HITOMI。4月24日に発売されたアルバム「フォトン」は、1stアルバムにして幼少期から作詞作曲に親しんできた彼女の集大成的な作品だ。
初回生産限定盤にはアルバムの各曲を異なるアーティストが“再構築”した「フォトン -reconstruction-」も付属している。中でも元School Food Punishmentの内村友美をボーカルに、さまざまなバンドで活躍するメンバーが集まったla la larks(ラララークス)の参加は注目を集めている。AZUMAとla la larksに集まってもらい(ドラムのターキーは欠席)、彼らの意外なつながり、今回の参加についての秘話を語ってもらった。
取材・文 / さやわか
AZUMAとの出会いは10年以上前!?
クボタケイスケ(B) 今日は、僕だけ、はじめましてですね。
AZUMA HITOMI はじめましてですね。
三井律郎(G) 僕はおそらく、最初に会ったのは2001年か2002年だと思います。僕がやってるTHE YOUTHというバンドが吉祥寺の新星堂で毎月インストアライブをやってたんですけど、それを毎回観に来る女の子がいて(笑)。それがあるとき「私、音楽やってるんです」って言って、MDを渡されたんです。そしたら僕らの、泥臭い田舎者バンドの曲をですね(笑)、彼女が打ち込みでリアレンジして歌ってたんですよ。それからの、おつきあいという感じですね。
AZUMA 恥ずかしい過去を知られている(笑)。中学校2年生の終わり頃に新星堂で初めてTHE YOUTHを見たんです。おばあちゃんと一緒にユニクロに行こうとしたら、ロックバンドが音を出してて。それからもう、毎月それを生き甲斐にしてました。
三井 音源を最初に機材車で聴いたんですけど、もう爆笑でしたね(笑)。俺らの泥臭い上京の歌とかを、東京に住んでる中学生の女の子がすごいアレンジをして歌っているという違和感(笑)。ゲラゲラ笑いながら「この子は本当にすごい」って言ってました。今や不思議ですね。もう11、12年前ということですからね。
AZUMA あの曲は4トラックのカセットMTRで録りました。エレクトーンで2ch使って、あとは歌とコーラス。それをMDに落として渡したんですよね。リズムも全部エレクトーンで作ってたんですよ。
江口亮(Key) EL-90(エレクトーン)とかが家にあったってこと?
AZUMA ああ、そうです。EL-900がありました。普通、右足はエクスプレッションペダルしか操らないんですけど、コンクールとかに出る子は両足でペダル弾くんですよ。私はその頃やったことなかったんですけど、最近はライブで足鍵盤を導入してペダルを両足で弾いてるんですよね。「あ、これだったのか」みたいな気分です。
三井 その後、2003年のTHE YOUTHのアルバムにコーラスで参加したんです。お母さんと一緒に録音に来て。でもそれは結局CDに入らなかったんですよね。だからデビューシングルの「ハリネズミ」で僕がギターを弾いて、そこで初めて仕事で絡む形になった。
AZUMA はい。2010年の11月頃レコーディングしました。
江口 そうなんだ? すごく関わり深いじゃん(笑)。
AZUMA うちの家族全員、今もう律郎さんのこと大好きなんですよね。
「今は着うただよ!」とアドバイスした
江口 僕はHITOMIちゃんの事務所に一時期在籍してたことがあったんです。最初に会ったときは、一緒に中華料理食べに行ったんだよね。そのときに音源を聴かせてもらって、「あ、この子はすごく才能がある」っていうことだけはずっと認知してたんです。それでマイクロソフトのオーディションにHITOMIちゃんが出るっていうのでエピックレコードの田口さんっていうHITOMIちゃんの今のディレクターと一緒に見に行ったんです。だけど田口さんはそのときはあんまり引っかからずに、でもなぜかCDだけ買って帰ったんだよね(笑)。
AZUMA 田口さんが買ってくれたCDも、手作りのCD-Rだったんです。それをどういうふうに作ったらいいかっていうことも、中華料理屋で江口さんに相談しましたよね。でもなんか「今は着うただよ!」みたいなことだけ言われました(笑)。
一同 (笑)。
三井 時代を感じるね。
江口 すげー時代を感じる(笑)。言いっ放しですね。
AZUMA はい。アイデアだけいただきました(笑)。
江口 むしろ僕がいろいろ聞いてしまったぐらいですね。「Logic(Apple社の音楽制作ソフト)ってどうやって使うの?」とか(笑)。
AZUMA そうでしたね。その後も電話がかかってきて「ここってどうやるの?」とか聞かれました(笑)。
内村友美(Vo) 私が初めて会ったのは前のバンドをやっていたときですね。江口さんから話はチラ聞きしていたんで、「あ、なるほどこの子か」と思った覚えがありますね。その後で曲を聞かせてもらって、すごくいいなと思いました。
AZUMA たぶん2011年になったばっかりの頃だと思います。3月にデビューする直前で。ライブにも来てくださったんですよ。
内村 そうそう、コンベンションライブに行った。そのときの衝撃がもう、本当にすごく強くて。
江口 コンベンションの金のかかり方にビックリしたとか?(笑)
内村 それもだいぶビックリしました。
一同 (笑)。
内村 でもドラムが自動で動いたときにすごくビックリしましたね。最初にドラムが1個、自動で動いていると思ったら、どんどん増えていって最後に4つ同時に動き始めたとき、私はもう度肝を抜かれましたね。仕掛けを聞いちゃいました(笑)。
AZUMA ああいうのをやりたいなっていうのは、前から思ってたんです。昔、立花ハジメさんとかもやられてたじゃないですか。あの太鼓は、工場で特別に作ってもらったやつです。
- ニューアルバム「フォトン」/ 2013年4月24日発売 / EPICレコードジャパン
- 「フォトン」
- 「フォトン」初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 3990円 / ESCL-4045~7
- 「フォトン」通常盤[CD] 3059円 / ESCL-4048
CD収録曲
- にちよう陽
- 東京
- east
- かさぶたとチェリー
- 情けない顔で
- おなじゆめ
- walk
- 太陽をみていた
- 無人島
- ハリネズミ
- 破壊者アート
- きらきら
- ドライブ
初回限定盤特典CD収録曲
- にちよう陽 -さよポニぐる~ぶバージョン-
- 東京 -生演奏バージョン(コーラスあり)-
- east -YK Soul ver.-
- かさぶたとチェリー -パエリアウェスタンバージョン-
- 情けない顔で -HALMENS LIKE ver.-
- おなじゆめ -Galileo Galilei Remix-
- walk -きゃめるver.-
- 太陽をみていた -Banvox Remix-
- 無人島 -Yoshino Yoshikawa Remix-
- ハリネズミ -DJ JIMIHENDRIXXX (a.k.a. Keiichiro Shibuya) Remix-
- 破壊者アート -KASHIWA Daisuke Remix-
- きらきら -コバルト爆弾αΩ Remix-
- ドライブ -night flight remix-
初回限定盤DVD収録内容
- ハリネズミ -MUSIC VIDEO-
- きらきら -MUSIC VIDEO-
- 「じっけんじゅんびしつ」SPECIAL
AZUMA HITOMI (あずまひとみ)
1988年東京生まれのシンガーソングライター / サウンドクリエイター。小学校高学年より曲作りを始め、中学生でデスクトップミュージック制作を開始。大学進学後にライブを中心とした本格的な音楽活動をスタートさせる。2010年12月にネットレーベル「マルチネ・レコード」より初の配信音源をリリースし、2011年3月にアニメ「フラクタル」の主題歌「ハリネズミ」でメジャーデビュー。同年8月からはUstreamスタジオ2.5Dにて自主企画イベント「ひとりじっけんしつ」を定期開催するほか、2012年5月よりUstream番組「AZUMA HITOMIのじっけんじゅんびしつ」を主に自宅から配信中。2013年4月に初のフルアルバム「フォトン」をリリースした。そのライブパフォーマンスは1人でMac、エレキベース、アナログシンセ、ペダル鍵盤、自動キックマシーン、LED照明システムまでを操る形で実施。多数の機材に囲まれた独特のセッティングは「要塞のよう」と称される。
la la larks (らららーくす)
内村友美(Vo / ex. School Food Punishment)、江口亮(Key / Stereo Fabrication of Youth、MIM)、三井律郎(G / THE YOUTH、LOST IN TIME)、クボタケイスケ(B / sads)、ターキー(Dr / ex. GO!GO!7188)からなる5人組バンド。2012年結成。同年5月に初ライブを行い、以降は都内を中心にライブ活動を継続中。