ナタリー PowerPush - AZUMA HITOMI
la la larksと読み解く 1stアルバム「フォトン」の謎
「ハリネズミ」の思い出
内村 アルバムの曲だと、私は1曲目の「にちよう陽」が一番好き。セルフライナーノーツも見てたんですけど、「君に会いたい」っていう、言ってしまえば「よくある曲」なんだけど、それを人とは違う表現で言えたり、それがダサくなく聞こえるようにしたいというのは私もよく思うんです。私は自分で作るものでも、人の歌詞でもそうなんですけど、個人的な感じがするのに誰でも感じたことがあるものをポンと書かれると、すごくドキッとするんですよ。そういう瞬間がある曲が好きなんですけど、今回のアルバムの中ではそれが1曲目で「君に会いたい」っていう気持ちを書く形で出されて、すごくいいなと思いました。
AZUMA おお、うれしいー。うれしすぎて……「ああー」っていう感じになる。
江口 僕はもう、全曲よかったです(笑)。全曲推し曲です! なんか前からやってる曲とかも入ってて、集大成じゃないですか。僕はやっぱりフルアルバムが一番好きで、それも1stアルバムが一番好きなんですよ。けっこう昔からやってた曲から入ってるよね?
AZUMA そうですね。それこそ中学校のときに作った曲もあるし。
江口 そういう感じが出ててよかったです。制作期間1年とかで作ったアルバムじゃないっていうのがわかる。うわー、濃い!みたいな(笑)。
AZUMA いかにも1stアルバムっぽいですよね。
三井 僕は「ハリネズミ」でギターを弾かせていただいているんですけど、アルバムで聴くとずいぶん懐かしい感じがしますね。細海魚さんも参加してて、僕はそのとき初めてお仕事という意味では一緒にやったので、それがすごく感動的だったんです。そのイメージがやっぱり曲にも詰まってる感じがします。中学生から知っている女の子と、僕らみたいな汗臭い、いわゆるロックバンドをやってきた人間と、あとはミュージシャンとして、アーティストとして、すごく有名だしリスペクトしている魚さんとで、1曲を一緒に作れるっていうことなんてめったにないと思うんですよね。それがこの曲でよかったなと思いました。
AZUMA 私も「ハリネズミ」は少し色が違うというか、ずっと前のことのように感じます。デビューシングルで、アニメの主題歌だったので、「こういう曲を作ってください」っていう監督のイメージとかもそれを取り入れながら作った曲なんです。そういう作り方をしたことってそれまでになかったし、そういう意味でも「ハリネズミ」はほかの曲と印象が違うんですよ。最初は「ハリネズミ」がアルバム内で浮くんじゃないかなと思ったくらいで。でも今までずっと作ってきた曲を1枚にまとめるっていう考え方で進めると、どの曲が浮くという気持ちはなくなりましたね。リコンストラクションのほうの曲順もオリジナル盤と同じになってるんですが、そっちは前半をバンドの方にお願いして、後半になるにつれてコアなリミックスになるのがいいなっていうイメージがありました。実際にできあがったらすごく流れができていてよかったです。
ブックレットで顔を出した理由
クボタ アルバムを通して聴いて思ったのは「すごい子がいるんだな」っていうことでしたね。顔を出していないというのもそうだし、面白い向き合い方だなと。少なくとも僕の周りにはいなかった雰囲気があるというか、匂いがするというか。すごく新鮮で、でも聴きやすくて、かつ自分の中に残るっていうのは自分にとって発見だった。だからすごくいい出会いだったなって思いました。
AZUMA 顔は今回、ブックレットの中で少しだけ出てるんですよね。Ustreamでも配信している自分の部屋の写真なんですけど。
江口 2.5DのUstreamでは顔出してたよね?
AZUMA こないだのライブのやつですね。以前はライブのネット配信で顔を出してなかったんですけど、4月10日にやった2.5Dのライブでは出しちゃいました。
江口 出しっぱなしだったよね。「あれ?」って思った(笑)。
AZUMA 特に「今日から顔を出します!」みたいなことを考えていたわけではないんです。だけど顔をまったく出さないってことにこだわっている人になってもしょうがないっていうのもあるし。デビューシングルからCDのアートワークをお願いしてるマンガ家の西島大介さんが、今回もすごくビジュアルに関してプロデュースしてくださったんですよ。そこで「この先どんな環境で音楽をやるにしても、顔を出したときにリスナーが違和感を持ってしまうような形にするのはあまりよくない」と言ってくださったんです。1stアルバムのときから自然にやろうね、と。デビューする前からずっとやってきた曲の集大成でもあるけど、もちろんこれからの出発の最初のアルバムでもあるんですよね。だからブックレットで「ハリネズミ」や「きらきら」のシングルで使ったモチーフを出して過去を振り返りながら、でもこの写真を入れることで未来も見ていこうと思いました。
江口 僕がHITOMIちゃんのことをすごく好きなのは、自分で楽曲制作ができて、しかもコードワークがちゃんとしてることがほかの人と違うと思うんですよ。しかもそれに加えてパフォームができる。DJじゃなくて楽器演奏としてやってるんですよね。ああいうスタンスはぜひ貫いてほしいな。生でやれることを、ちゃんとやっていってほしいと思います。
- ニューアルバム「フォトン」/ 2013年4月24日発売 / EPICレコードジャパン
- 「フォトン」
- 「フォトン」初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 3990円 / ESCL-4045~7
- 「フォトン」通常盤[CD] 3059円 / ESCL-4048
CD収録曲
- にちよう陽
- 東京
- east
- かさぶたとチェリー
- 情けない顔で
- おなじゆめ
- walk
- 太陽をみていた
- 無人島
- ハリネズミ
- 破壊者アート
- きらきら
- ドライブ
初回限定盤特典CD収録曲
- にちよう陽 -さよポニぐる~ぶバージョン-
- 東京 -生演奏バージョン(コーラスあり)-
- east -YK Soul ver.-
- かさぶたとチェリー -パエリアウェスタンバージョン-
- 情けない顔で -HALMENS LIKE ver.-
- おなじゆめ -Galileo Galilei Remix-
- walk -きゃめるver.-
- 太陽をみていた -Banvox Remix-
- 無人島 -Yoshino Yoshikawa Remix-
- ハリネズミ -DJ JIMIHENDRIXXX (a.k.a. Keiichiro Shibuya) Remix-
- 破壊者アート -KASHIWA Daisuke Remix-
- きらきら -コバルト爆弾αΩ Remix-
- ドライブ -night flight remix-
初回限定盤DVD収録内容
- ハリネズミ -MUSIC VIDEO-
- きらきら -MUSIC VIDEO-
- 「じっけんじゅんびしつ」SPECIAL
AZUMA HITOMI (あずまひとみ)
1988年東京生まれのシンガーソングライター / サウンドクリエイター。小学校高学年より曲作りを始め、中学生でデスクトップミュージック制作を開始。大学進学後にライブを中心とした本格的な音楽活動をスタートさせる。2010年12月にネットレーベル「マルチネ・レコード」より初の配信音源をリリースし、2011年3月にアニメ「フラクタル」の主題歌「ハリネズミ」でメジャーデビュー。同年8月からはUstreamスタジオ2.5Dにて自主企画イベント「ひとりじっけんしつ」を定期開催するほか、2012年5月よりUstream番組「AZUMA HITOMIのじっけんじゅんびしつ」を主に自宅から配信中。2013年4月に初のフルアルバム「フォトン」をリリースした。そのライブパフォーマンスは1人でMac、エレキベース、アナログシンセ、ペダル鍵盤、自動キックマシーン、LED照明システムまでを操る形で実施。多数の機材に囲まれた独特のセッティングは「要塞のよう」と称される。
la la larks (らららーくす)
内村友美(Vo / ex. School Food Punishment)、江口亮(Key / Stereo Fabrication of Youth、MIM)、三井律郎(G / THE YOUTH、LOST IN TIME)、クボタケイスケ(B / sads)、ターキー(Dr / ex. GO!GO!7188)からなる5人組バンド。2012年結成。同年5月に初ライブを行い、以降は都内を中心にライブ活動を継続中。