あたらよ「泡沫の夢は幻に」インタビュー+全曲解説|心の奥底まですくい取った新作 (2/2)

「泡沫の夢は幻に」全曲解説テキストあたらよコメント
あたらよ

01. 朝凪

[作詞:ひとみ / 作曲:ひとみ、Soma Genda / 編曲:あたらよ、Soma Genda]

アルバムのオープニングを飾るのは、速い四つ打ちのビート、アルペジオのシンセの音色を生かしたダンスロックナンバー。美しく広がりのある情景を描く歌詞も印象的だ。

ひとみ 作曲合宿でゼロから作った曲です。せっかく一緒にみんなで作ってるんだから、ここでしかできない何かを作ろうよという話になって。エレクトロなサウンドにチャレンジしようという発想から始まり、リズム先行で、トラックからできあがっていきました。歌詞に悩んだときには、iPhoneだけを持って外に出て散歩していました。自然に触れながら考えられたのも合宿ならではだったと思います。

02. ツキノフネ

[作詞・作曲:ひとみ / 編曲:まーしー、Soma Genda、Yusuke Koshiro]

アニメ「暗殺教室」再放送 第1弾エンディングテーマとして書き下ろされた1曲。疾走感ある曲調とアグレッシブなベースラインが聴きどころだ。

まーしー サブスクで配信されていたオリジナル版のアニメを、音量を下げて観ながら作りました。そうしたら落ち着いたものではなく、学生時代のパワフルな感じが出てきて。青春は早く終わっちゃうものだから、そのスピード感も出したいと思って、こういうトラックになりました。

たけお 曲全体ができて、最後にイントロのベースを考えたんです。かなり時間をかけました。

03. 夜空を蝕んで

[作詞:ひとみ / 作曲:ひとみ、Soma Genda / 編曲:あたらよ、Soma Genda]

繊細さと荒々しさを併せ持つギターロックナンバー。曲全体にダイナミズムをもたらすサビ前のブレイクがポイントだ。

ひとみ これは弾き語りでデモを作りました。夜中に曲を書くことが多いんですけど、曲を書いている自分自身を俯瞰で見て歌った曲ですね。結局いつも曲を作りながら自分が泣いている。そういう過去の自分自身をそのまま投影したような曲です。

まーしー アコギでひとみが弾いたストロークが、俺の中では歪んだ音に聴こえたんです。それを生かしながら、強さと繊細さ、激情と弱々しい部分のコントラストを大事にしながらアレンジしていきました。

04. 忘愛

[作詞・作曲:ひとみ / 編曲:まーしー、Soma Genda、Yusuke Koshiro]

カンテレ・フジテレビ系 火ドラ★イレブン「パラレル夫婦 死んだ“僕と妻”の真実」挿入歌。夢の中だけで会えるという2人の関係がセンチメンタルに歌われている。

ひとみ まずドラマの資料を読み込んで、思うことやリンクする部分をノートに全部書き出してから制作作業に入りました。感じたのは、うまく噛み合ってないんだけど、本当はお互いにまだ相手のことを思っているということ。その思いをしっかり曲の中でも描きたいと考えていました。この曲は素直な気持ちを吐き出す曲になったと思います。場所が記憶の鍵になっているような感覚もあります。会えなくなってしまった人の記憶が自分の中に残っていて、昔行ったことのある場所に行ってみたら、君がいないのに君がいる気がする……みたいな。そういう感覚も描けているかなと思います。

05. 溺れている

[作詞:ひとみ / 作曲:ひとみ、Soma Genda / 編曲:あたらよ、Soma Genda]

3拍子のゆったりとしたテンポから徐々に高揚し、感情を吐き出すような歌声で死生観を歌い上げるドラマティックな1曲だ。

ひとみ ピアノの弾き語りで作りました。ピアノリフから作ったんですけど、デモを作ったときは「この曲はあたらよらしくないかも」と思っていたんです。でも作曲合宿でみんなで音を出して形にしたら、ちゃんとあたらよの曲になった。私の実体験を落とし込んだ曲で、赤裸々な気持ちをただ淡々とつづったという感じです。

たけお 曲全体が3拍子で展開も多いので、Dメロでフレーズに強弱をつけることを意識しました。

06. 雫

[作詞・作曲:ひとみ / 編曲:あたらよ、Soma Genda]

カンテレ・フジテレビ系 火ドラ★イレブン「スノードロップの初恋」エンディングテーマ。軽快なリズムと聴き心地のよいメロディの曲調でありつつ、ほかの曲と呼応するような死と別れの悲しみが漂う内容になっている。

ひとみ ドラマの世界観として、主人公の女の子がクリスマスに死んでしまうことがわかっているというのが大きくて。死が近い人の話だから、そこはちゃんと匂わせたいと思って「眩しい朝日がすぐそこまで来ている」という歌詞を書きました。ドラマの世界観をそのまま言葉に書き起こすんじゃなくて、あたらよなりに変換して書いた。このミニアルバムにこのタイミングで入るべくして書かれた曲のような気がします。

07. しないで

[作詞:ひとみ / 作曲:ひとみ、Soma Genda / 編曲:あたらよ、Soma Genda]

ヘビーなギターサウンドに乗せて喪失感をまっすぐにつづるナンバー。渦巻くような感情の波が刻み込まれている。

ひとみ 去年、すごくお世話になっていた方が亡くなってしまって。3人の恩師だったんです。亡くなったという事実とか、悲しいというだけじゃない、言葉にならない感情をろくに消化もできないまま日々が過ぎていくような時期があって。それを経た今になって「当時の自分は、本当はこういうふうに心の中で叫びたかった」ということを素直に書きました。今でもまだ乗り越えられてはないんですけれど、1年以上経って、ようやく振り返ることができるようになってきた。そうやって紐解いた感情を1つひとつ言葉にしました。

08. 夢現、夏風薫る

[作詞・作曲:ひとみ / 編曲:まーしー]

ひとみが2023年に梶原岳人へ提供した楽曲のセルフカバー。まーしーがメインボーカルを担当している。

ひとみ 楽曲提供したときに私がデモを歌うとイメージしづらいと思って、まーしーに歌ってもらったんですね。それを聴いたときに「こんなにピュアでまっすぐな歌い方をできる人が近くにいたんだ」 と感動して、なぜか涙が止まらなくなって。そのときから、セルフカバーするならまーしーに歌ってもらいたいと思っていました。で、アルバムに入れる曲をみんなで話していたときに、この曲のことを思い出した。タイトルに「夢」という言葉が入っていて、しかも歌詞を改めて見返したら今回のアルバムにぴったりだったんです。当時は数年後に夢をテーマにしたアルバムを書くなんて思ってもなかったですけど、セルフカバーするならここしかないというタイミングになりました。

あたらよ

公演情報

あたらよ「夢語り Yume-gatari」TOUR 2025

  • 2025年9月19日(金)大阪府 Music Club JANUS
  • 2025年9月20日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2025年10月16日(木)北京 疆进酒・OMNI SPACE
  • 2025年10月18日(土)杭州 Mao Livehouse
  • 2025年10月19日(日)上海 万代南梦宫梦想剧场
  • 2025年10月21日(火)武汉 VOX LIVEHOUSE
  • 2025年10月23日(木)成都 小酒馆万象城店
  • 2025年10月25日(土)广州 声音共和
  • 2025年10月26日(日)深圳 HOU LIVE
  • 2025年11月7日(金)福岡県 DRUM SON
  • 2025年11月9日(日)広島県 ALMIGHTY
  • 2025年11月14日(金)台北 Zepp New Taipei
  • 2025年11月15日(土)台北 Zepp New Taipei
  • 2025年11月23日(日)ソウル Nodeul Live House
  • 2025年11月27日(木)東京都 Spotify O-EAST

プロフィール

あたらよ

ひとみ(Vo, G)、まーしー(G)、たけお(B)からなるバンド。“悲しみをたべて育つバンド。”をキャッチコピーに掲げる。グループ名は“明けるのが惜しいほど美しい夜“という意味の可惜夜に由来。2020年11月、YouTubeに楽曲を投稿し活動をスタートさせた。初のオリジナル曲「10月無口な君を忘れる」はリスナーの共感を呼び、YouTubeでの再生回数が6000万回を突破した。2024年3月に初のアジアツアー「Atarayo First Asia Tour 2024」を行い、全6公演のチケットがソールドアウト。2025年に行っている2度目のアジアツアーもチケット完売が続出するなど、アジア圏でも活躍の幅を広げている。2025年10月、ミニアルバム「泡沫の夢は幻に」をリリースした。