ASP「Hyper Cracker」インタビュー|WACKの急先鋒グループがメジャーデビュー!7人の今に迫る

ASPが8月31日にニューシングル「Hyper Cracker」でavex traxからのメジャーデビューを果たした。ASPは2021年3月に始動し、5月に1stアルバム「ANAL SEX PENiS」、今年1月に2ndアルバム「PLACEBO」を発表。AKB48の柏木由紀とのコラボなどを挟みつつこれまでに6本のツアーを開催し、5月にメジャーデビューを発表したあと、長きにわたって「全国“ご縁”結び」と称した店舗訪問を行い、各地で“ならず者”(ASPファンの呼称)とコミュニケーションを取ってきた。

ASPにマチルダー・ツインズ、ウォンカー・ツインズの双子が加入したのは昨年11月。そして今年3月にはチッチチチーチーチー、リオンタウンが加わった。7人体制でメジャーデビューを迎えるにあたって、ニューシングルの仕上がりやグループの現状を読者に伝えるべく、話を聞いた。

取材・文 / 田中和宏撮影 / 星野耕作

新メンバーは恵みの大豪雨ですよ!

──チッチチチーチーチーさんとリオンタウンさんは3月の「WACK合同オーディション2022」で合格し、ASPに加入しました。お二人は音楽ナタリー初登場ということで、自己紹介からお願いします。

チッチチチーチーチー チッチチチーチーチーです、よろしくお願いします。加入から4カ月くらい経ってようやくASPに馴染めるようになってきました。「変なことで笑うね」と昔はよく言われていて、変な人扱いされてたんですが、ASPでは変な目で見られないのがうれしいです。

チッチチチーチーチー

チッチチチーチーチー

ナ前ナ以 そういう目で見てるけどね……言わないだけで。

チーチー えっ、うそ!(笑)

リオンタウン リオンタウンです。よろしくお願いします。最近はだんだん慣れてきてメンバーとの会話が多くなりました。最初はそんなにしゃべれなかったんですけど、ツアーを回るうちに楽屋で笑い合うことが多くなりました。チーチーが同期なのでずっと話してますけど、最近はユメカちゃんが笑わせてくれます。双子にも慣れました(笑)。合宿の最終日に初めて会って、双子に変なところがあるのはわかってたんですけど、今はそれが心地よいです。

リオンタウン

リオンタウン

──新メンバーの活躍ぶりは既存メンバーから見ていかがですか?

ユメカ・ナウカナ? 大・大・大・活躍ですね! 「新しい風が吹く」とか言いますけど、本当に新メンバーが入ってきて大豪雨!みたいな感じです。

ナ前ナ以 雨が降ってるの?

ユメカ 風を超えて、恵みの大豪雨! 嵐です! やっぱり人数が増えたのもあって、楽屋の雰囲気がよくて、どこからか笑い声が聞こえてきます。チーチーとリオンはがんばり屋なので、ASP全体のケツを叩いてくれている感じで最高です!

モグ・ライアン 自分に厳しい2人ですね。自分がASPのメンバーとして、ASPに何が必要なのかを常に考えてやってくれているのですごいです。

ナ前ナ以 特にチーチーはいろいろ意見を出してくれます。4カ月経ちますから、2人とも新メンバーという感じがもはやないです。

ハイパーなメジャーデビュー曲

──改めてメジャーデビューおめでとうございます。ユメカさんを昔から見ている身からすると、なんだかうれしいです(笑)。

ユメカ ありがとうございます!(笑) 今は笑えるんですけど、本当に笑えない時期があったのでASPでメジャーデビューできて本当にうれしいです。

ユメカ・ナウカナ?

ユメカ・ナウカナ?

──メジャーデビューを飾る「Hyper Cracker」はYohji Igarashiさん、Pecori(ODD Foot Works)さんによる提供楽曲で、これまで90'sロックサウンドをメインとしていたASPとは一線を画す、現代的なポップチューンです。

ユメカ ASPのメジャーデビューを記念した、メンバー7人と渡辺(淳之介 / WACK代表)さんのソロインタビュー動画をYouTubeで毎週出していたんですけど、その中で渡辺さんが言っていたように「今っぽさ」がありますよね。WACKに入ってからこれまでで私は挑戦したことないジャンルの曲だったので、驚きはありつつ、1人ひとりレコーディングを重ねて完成形を聴いたときに「めちゃくちゃカッコいい!」と思いました。こういうサウンドの曲もASPは表現できるんだなって。夏のキラキラ感もあれば少しさびしい感じもあって、いろんな見え方をする曲ですね。夏に聴いたら楽しいし、夏以外でも夏が楽しみになるような曲でメジャーデビューさせていただけて、ASPの今も、その先も輝かせてくれるような1曲になりました。

ウォンカー・ツインズ 最初に電車の中でデモ音源を聴いたときは、びっくりしました。ASPがこんなジャンルでも表現できることがすごいなって驚いたし、幅が広がるということはもっといろんな人に聴いていただくチャンスでもある。ラップは初めてだったので歌えるか少し不安はありましたけど、滑舌が悪いので“滑舌チャレンジ”ができたなって。

マチルダー・ツインズ 私も最初に聴いたときはびっくりしました。これまで聴いたことのないジャンルの曲だったので、自分が歌うことにも驚きました。ジャンルが広がれば興味を持ってライブに足を運んでくれる人の数も多くなるはずなので、今後もいろいろなジャンルに挑戦してみたいなと思いました。

マチルダー・ツインズ

マチルダー・ツインズ

──現代らしいとは言え、どこか懐かしさもあるんですよね。ジャンル的にはハイパーポップ的な要素があると思うのですが。

ユメカ そう言ってくれている人もいました。なんか懐かしい感じもするって。

モグ 私はこういう曲調、好きでした。1980~90年代のカラフルなファッションとか音楽は前から見聞きしていて、当時の画像とかも調べては保存してました。だからそういう過去の要素とか海外のレトロっぽい要素を取り入れた現代的な音楽をASPで表現できるのはうれしいです。

リオン ラップパートは力を抜いて歌いました。聴いてくれる方の耳にスーッと入っていくように。

チーチー キー設定が2パターン用意されてたので、「このキーとこのキーが候補であります」という状態でのレコーディングになりまして。2つのキーで歌入れするのは初めてで難しかったです。ラップはほかのアーティストの歌を参考に、見様見真似で歌ったので難しかったです。

──ラップは皆さん初めてだったみたいですが、リズムにいかに乗れるかといった部分を要求されそうですね。

ユメカ そこはPecoriさんとIgarashiさんに細かくディレクションしていただきました。お二人とも活躍されている方ですし、すごく素敵な方々で。お二人には裏のリズムに乗れるようにとか、3連符を意識するとかいろいろポイントを教えていただいて、自分なりに解釈して。覚えていくうちに気持ちよくはまる部分があったのは発見でした。

ナ前ナ以 リズムの取り方はモグちゃんが本当に上手でした。私は普通に歌ってるときから1音1音でリズムを取っちゃうクセがあるんですけど、リオンが言ったみたいに力を抜いて歌ったほうがよかった。自分が課題としていた歌唱ポイントがギューッと詰まった曲だったので、苦戦しました。

ナ前ナ以

ナ前ナ以

カップリングは“怪獣”みたいな声にも注目

──カップリング曲の「Why don't you KiLL me??」は、BiSHをはじめWACK所属グループの楽曲を多数手がける松隈ケンタさんの作曲です。この曲もまたこれまでのWACKにない雰囲気ですよね。パワフルなオルタナティブポップロックといった雰囲気で。

ユメカ 松隈さんって本当にすごいですよね。こんな曲も作れるのかって驚きました。

モグ 1曲目の「Hyper Cracker」が現代的だから、メジャーデビューシングルのこの2曲を比べると、「Why don't you KiLL me??」は今までのWACKらしい雰囲気はあるんですよね。でももし1曲目がハイパーポップ系じゃなかったら、もっと過去作品とギャップを感じたかもしれない。

モグ・ライアン

モグ・ライアン

マチルダー 「Why don't you KiLL me??」は洒落てますね! 歌い方が面白くて、くねくねしてるんですけど、サビでリオンちゃんと歌うところはくねくねしてない。怪獣みたいな迫力のある声を出しているので、声にも注目してもらいたいです。

ナ前ナ以 作詞は竜宮寺育さんで、WACKらしいメッセージだなと。曲的にはあるイタリアのロックバンドのオマージュも入ってる感じ。チルちゃんが言ってた、くねくねした歌い方はレコーディングの現場でやってみようということになったんです。

ユメカ そのイタリアのロックバンドみたいにしたいと渡辺さんが話していたので、ミュージックビデオを観たら、生々しいというか、ちょっと気持ち悪い感じなんですよね。ハマってずっと聴いてたので、イメージしやすかったです。レコーディングするにあたって、この歌のキャラクターに入り込んで、脳みそがぶっ飛んだ感じで体を動かしながら歌いました。7人それぞれが自分たちなりに曲を解釈して“気持ち悪い感じ”で歌ったんですけど、バラバラにならずに案外まとまりのある面白い1曲になってます。

生まれ変わった代表曲

──メジャーデビューシングルにはさらに代表曲の再録バージョン「A Song of Punk 2022」も入ります。

ウォンカー 「Why don't you KiLL me??」と同じ日に録りました。メンバー全員の新しいボーカルテイクが使われてます。

ウォンカー・ツインズ

ウォンカー・ツインズ

モグ 「A Song of Punk」はASPにとって始まりの曲でもあるし、WACKの曲によく出てくる「行かなくちゃ」という歌詞が入っています。私自身、ASPとして最初に聴いた曲ですし、歌詞には物事を続けることは難しいけど、活動するうえで大事にしたいという思いが込められています。メジャーデビューという大きな節目にあたって、新メンバーを迎えたこの7人で歌い直す曲が「A Song of Punk」でよかったと思います。

チーチー 私は加入前からずっとASPを聴いてきて、この曲に何度も背中を押されました。今回7人全員でもう1回録り直すことになって、素直にうれしかったです。今のASPの声で音源を世に出せるということで、ASPの一員になれたという気持ちがこみ上げてきました。