ナタリー PowerPush - V.A.「ASOBITUNES」

聴いて遊ぼう!イベント連動型コンピレーション!ASOBISYSTEMプロデュースCD解剖

「ブーム」と「カルチャー」

───ASOBISYSTEMは、きゃりーぱみゅぱみゅのヒットがあっても最初からのクラブイベント事業や原宿という地域に根付いた活動をやめず、姿勢を変えないですよね。この“成功例”を応用してしっかりした芸能事務所になったっていいのに。

あははは(笑)。そうですね。でもきゃりーの二番煎じはしちゃいけないし、まだまだいろんなものをまだ作っていきたいので。しかし今“きゃりーの会社”って思われることが僕にとっては……ここから1つ2つ抜けていきたいなって思うところですね。逆にある意味プレッシャーです。

──会社の企業理念に「ブームを作ることよりも、カルチャーを創る」とありますね。これについて少し説明していただけますか?

僕らが考えるに、「ブーム」は「消費」とすごく近いと思うんですよ。例えば5万枚売れてたものが、次は1万枚に減ったり、300枚になっちゃったり。伸びるのも早いし沈むのも早い。カルチャーっていうのはそうじゃなくて、例えばきゃりーぱみゅぱみゅという存在で音楽もファッションも見せて、アーティストとしての幅を増やしていくことによって太く長く生きていけるのかなって思うんですよね。「原宿」というキーワードがあったときに、ブームっていう瞬間風速の“面”で見ちゃうんじゃなくて、“ボール”になっていろんな角度から見ていきたい。そういうことが大事なのかなって考えてます。

──なるほど。

きゃりーぱみゅぱみゅ

だからきゃりーが薄っぺらい面じゃなくて立体的に見えてくることが、カルチャーを作るってことだと思うんです。で、それは音を作る中田くんだったり、アート面を作る人、PV作る人、ファッションを担当する人を含めた“チームきゃりー”が大きな1つの形になることで。

──さまざまな要素を複合的に見せていくのが大切ということですね。

はい。今、CDの売れる絶対数が減ってきてるぶん、音楽にファッションとかがリンクしやすくなってると思うんです。実際に海外のアーティストってすごく音楽とファッションがリンクしてるじゃないですか。

──音楽もアート表現の1つ、みたいな。

そうですね。日本はそこが弱いなと思ってて、音楽業界って独立した業界みたいな感じですよね。自分らのできることって、そこを飛び越えて独自のカルチャーを作ってくとか、細かくイベントをやってコツコツファンを増やしていくとか、複合的な魅力をきちんと見せていくとか、そういうことなのかなと思ってます。

アイドルじゃなくてアイコンを作りたい

TEMPURA KIDZ

──今はきゃりーぱみゅぱみゅのほか、CAPSULE、RAM RIDER、Yun*chi、Una、TEMPURA KIDZ、アスタラビスタ、近藤夏子といったアーティストのマネジメントをしていますが、「うちでやろう」と思う決め手なんかはありますか?

「売れそうだからやろう」っていうことじゃなくて、「この人と一緒にチームを作れるか」ってことが一番大事ですね。会社がイベントから始まってるのと同じで、人と人とのつながりがすごい好きだから、ちゃんと人と向き合ってできることをしていきたいなっていう気持ちがあって。今いるアーティストもモデルも、もともと友達だったり、すごくフィーリングが合ったり。感覚でしかないんですよね。

──つまり一緒に“アソビ”ができそうかどうか。

だから、ジャンルの縛りはないんです。「うちはこういうジャンルしかやりません」「バンドはやりません」とか特に言うつもりはなくて、言ってしまえば「ジャンルはASOBISYSTEMです」みたいな。

──私から見ると、今所属している人たちはみんな、アーティスト自身がたくましい創作意欲を持っていて、新しいものを取り入れるのが好きなところが共通していると思います。

2013年7月にフランス・パリで行われた「Japan Expo」に出演したUna。

そうですね。僕らとしては“作る”じゃなくて“一緒に作っていく”って感覚なんですよ。かわいい子がいたら、その子に赤い服着させて、ロック歌わせて、こういうメイクさせて、こういうジャケットにして、こういうCD売ろうっていうやり方は“作る”だと思うんです。要は素材ありき。それに対して僕らは、その子自身が発信して作っていきたいものを一緒に考えて作ってくっていうスタンス。その子の発信力と僕らのアイデアを重ねていく方法がいいんです。簡単に言うとアイドルじゃなくてアイコンを作りたいんですよね。

おしゃれ過ぎずダサ過ぎない薄いライン

──ところで「ASOBITUNES」は“イベント連動型コンピレーションアルバム”と銘打って、CDには今作のリリースツアーの会場で缶バッジとドリンクに引き換えられる券が封入、という施策も行われています。

はい。

──中川さんは、CDを買う人とクラブイベントに行く人はほぼイコールと考えていますか?

2013年4月29日に東急東横線渋谷駅ホームの跡地を利用したSHIBUYA ekiatoで行われた「TAKENOKO!!! -GW SPECIAL-」のエントランス。

イコールにしていかないといけないなって思ってるんです。で、クラブカルチャーってものがちょっと元気がなくなってきてる今、間口が広がって人が集まってくることが大事だなと思って。例えば「TAKENOKO!!!」は、CDを買った若い子でも来れるように夏休み期間にすごくたくさんやるんですよ。学生の頃、初めてクラブミュージックに触れて楽しいって思う感覚をフロアで体感してほしいんですよね。だからイベントとCDがニコイチになればいいなと思ってます。もっと売上が伸びてくれば全国で昼間のイベントと夜のイベントを両方したいくらい。

──それほど未成年のオーディエンスのことを常々考えてるんですね。

そうですね。クラブミュージックって、クラブに若い子が入れないから狭まっちゃってるってこともちょっと感じるんですよね。もっともっと若い層にも広がっていけばジャンルとしても盛り上がるし、ひいては音楽業界ももっと盛り上がると思う。若い子のライフスタイルにイベントに行くってことが浸透すればいいなと。僕らはその入門になれればと思ってるんですよ。

──入門?

僕、おしゃれ過ぎずダサ過ぎない、一番薄いラインが好きなんですよ。一般の人から見たら「とがっててカッコいい」。でもホントにとがってる人からすると「ちょっとポップすぎてダサいよね」っていう。さらに、そこが一番ビジネスになる、人に広がりやすいと勝手に思ってて。例えばきゃりーも一般層から見たら「かわいくておしゃれでとがってるよね」っていうイメージでも、コアなファッショニスタとかヘアメイクの中には「ああいう存在でテレビ出ちゃってダサいよね」っていうアンチの人もいっぱいいると思うんです。でも、それが世界中から注目されると、オセロみたいに状況が変わってくる。その現象がすごい好きです。

──ああ、「ASOBITUNES」のラインナップは確かにそういうラインですね。この人の曲を聴いていれば間違いないっていう実力のあるDJばかりなんですけど、玄人からしたら有名どころ、人気どころを集めた印象があるかもしれない。

2013年4月29日に東急東横線渋谷駅ホームの跡地を利用したSHIBUYA ekiatoで行われた「TAKENOKO!!! -GW SPECIAL-」の模様。

そうなんですよ。だから「クラブミュージックへようこそ」的な、知るきっかけになってもらえればなって。この先にもっとコアな部分にハマってもらえたらうれしいし。でも、その上澄み部分ってすごく大事だと思ってるんです。

──未着手の領域で、かつ人に受け入れられやすいという。

僕らも、クリエイティブすぎちゃいけないって思ってるんです。そもそもおしゃれなこと好きな人が多いから、会社としての雰囲気だったり、社屋だったり、何もかもがちょっとおしゃれぶっちゃうんですけど(笑)。クリエイティブすぎると、やっぱりビジネスにならないし自己満で終わっちゃうから、“ぶっちゃう”レベルがちょうどいいと思うんですよね。

V.A.「ASOBITUNES」2013年7月31日発売 / 2730円 / unBORDE / WPCL-11225
V.A.「ASOBITUNES」
収録曲
  1. Rainbow / capsule
  2. 熱帯夜 -Yasutaka Nakata (capsule) Remix- / RIP SLYME
  3. PONPONPON -extended mix- / きゃりーぱみゅぱみゅ
  4. カルテル(amigo edit)/ アスタラビスタ
  5. SECRET ADVENTURE / MEG
  6. JUICY JUICY -Teki Latex Remix- / Una
  7. sign / livetune adding Yun*chi
  8. GALAXY / RAM RIDER
  9. MIDNIGHT SEVENSTARS / DEXPISTOLS
  10. ERUPTION / THE LOWBROWS
  11. RED STAR / 80KIDZ
  12. SAX@ARENA / DAISHI DANCE×SHINJI TAKEDA
  13. Keep Love Together feat.The BIG ROOM Family a.k.a Mika Arisaka & Ryohei with SAWA, Mika Sawabe / Kentaro Takizawa
  14. Lotta Love / m-flo ▼ MINMI/(※▼はハートマーク)
  15. Without You / FPM
「ASOBITUNES」×「ASOBITUNES RELEASE TOUR」連動キャンペーン
ツアー来場者にもれなく「ASOBITUNES オリジナル缶バッジ」と「ワンドリンクチケット」をプレゼントする引き換え券をCDに封入!!
引換方法:11月8日まで開催される全国の「ASOBITUNES RELEASE TOUR」各公演に「ASOBITUNES」の初回プレス分に封入されている引き換え券をお持ちください。各引き換え券1枚につき「ASOBITUNES オリジナル缶バッジ」1つ、「ワンドリンクチケット」1枚と交換できます。
「ASOBITUNES」リリース記念プレゼントキャンペーン

V.A.「ASOBITUNES」

「ASOBITUNES」収録アーティストがデザインした超レアなASOBITUNES Tシャツを抽選で合計555名にプレゼント!!
対象賞品:中田ヤスタカ(CAPSULE)デザインTシャツ 185名 / きゃりーぱみゅぱみゅ デザインTシャツ 185名 / RAM RIDER デザインTシャツ 185名
※Tシャツのデザイン・仕様は予告なく変更となる場合があります。
ASOBISYSTEM(あそびしすてむ)

プロモーション事業、イベント事業、マネジメント事業、クリエイティブ制作事業を行う株式会社。2007年6月設立。日本独自の文化である“原宿カルチャー”に焦点を当て、ファッション、音楽、ライフスタイルといった原宿の街が生み出すコンテンツをサポートして成長させ、国内はもとより世界に向けて発信するための活動をしている。現在、アーティストとしてCAPSULE、きゃりーぱみゅぱみゅ、RAM RIDER、Yun*chi、TEMPURA KIDZら、モデルとして武智志穂、池田泉、青柳文子、瀬戸あゆみらが所属している。