麻倉もも特集|シュワワ!弾ける夏、到来!夏を全力で楽しむハッピーサマーソング

麻倉ももが11thシングル「シュワワ!」を8月16日にリリースした。

シングルの表題曲は、楽しく夏を過ごす女の子の姿を描いたサマーソング。ダンサブルなサウンドに乗せて、心を躍らせる主人公の思いを炭酸に見立てて「シュワリシュワリ」と爽快に歌い上げている。カップリングにはメロウなラブソング「嫌いになれない。」を収録。ウィスパーボイスを取り入れた、麻倉の歌唱表現が光る1曲だ。

音楽ナタリーでは麻倉にインタビューを行い、楽曲の解釈やレコーディングについて話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝

コンセプトとしての“夏”は好き

──表題曲「シュワワ!」は、わかりやすく夏の歌ですね。

まず8月に発売することが決まっていたので、「学生さんだったら夏休みの最中かな?」とかそういうことも考えつつ、真夏のシングルにしたいという思いが私にも制作チームにもありました。ただ、夏の曲といえば「Apiacere」(2022年7月発売の3rdアルバム)で「満開スケジュール」を歌ったので、それとはまた違った雰囲気になるように気を付けながら、みんなでわいわい楽しんでいる感じの曲を集めていただいて。そこから私が「いいな」と思ったものを選びました。

──その「Apiacere」のインタビューで、麻倉さんは「夏が嫌い」とおっしゃっていました。今も嫌いですか?(参照:「Apiacere」インタビュー

嫌いなんですよ(笑)。嫌いなんですけど、アートワークのコンセプトとかにはしたくなっちゃうんですよね。だから夏と明言しなくても、例えば海辺とか、夏感のあるシチュエーションでジャケ写やアー写を撮影することが多くて。なので、自分の好き嫌いとは切り離して夏を見ているというか、夏に対する憧れもあるのかもしれない。

──まあ、今日も暑いですからね。

ねえ。今年は特に、もう6月の時点で暑かったので、すでにけっこう頭がやられています。だから夏の楽しさについて考える余裕があんまりないんですけど、たぶんお祭りとかも今年からはいろいろなところで開催されると思いますし……私は行くかわからないけど。

──「私は冷房の効いた部屋にいるが、外に遊びに行きたい人は行けばいい」と。

みんなが楽しんでくれれば、それが一番です(笑)。子供たちもね、夜に堂々と外出できる機会はお祭りや花火のときぐらいだろうし、そういう夏ならではの町のにぎわいやワクワク感を味わえるのはすごくいいなとは思います。ただ、いかんせん暑いのがねえ……コンセプトとしての夏は好きなんですけど、現実の夏はなるべくおうちにいたいです。

──新しいアーティスト写真も夏らしいですね。しかも麻倉さんにしては珍しいツインテールで、メイクもピンクを基調にしていてインパクトありました。ジャケット写真はまだ拝見できていないんですが(※取材は7月初旬に実施)。

けっこう不安だったんですけどね(笑)。ジャケ写のラフ絵の時点で高めのストレートツインになっていて。今までは、髪は基本的に下ろすかちょっとふわふわさせる程度だったので、「あ、今回はそういう感じでいくんだ?」と驚きました。スタッフさん的には、初めてのツアー(2022年10月から11月にかけて行われた「LAWSON presents 麻倉もも Live Tour 2022 “Piacere!”」)が終わって、また新たな麻倉ももを見せるという意図もあったのかもしれません。

──ビジュアルに関して、麻倉さんから何かリクエストをしたりは?

私からは、せっかくメイクとかを作り込んで夏っぽくキラキラさせてくれたので、指輪をいっぱいつけて手元もゴチャゴチャさせたいと伝えました。背景も白だったし、自分自身がわりとポップというかビジュアル的にうるさくてもいいんじゃないかなって。ジャケットも、今までにない感じになっていると思います。

ハッピーな夏の日々を送る女の子の歌

──「シュワワ!」の作編曲は塩野海さんです。塩野さんはTrySailのメンバーである雨宮天さんの楽曲でおなじみの方ですね。

はい。以前、塩野さんが書かれた天の「VIPER」をカバーしたことはあるんですけど(2022年3月発売の“ミュージックレインCDコレクション企画”第三弾「シャッフル -Bright 3 Waves-」に収録)、自分のオリジナル曲を書いていただくのは初めてで。曲を選ぶときは作家さんの名前は伏せられているので、この曲に決まってから「おおー!」みたいな。

──「シュワワ!」は、例えば「ピンキーフック」(2021年8月発売の9thシングル表題曲)や「ネムイケド」(2022年3月発売の10thシングル「彩色硝子」カップリング曲)路線のディスコっぽいダンスナンバーですが、この曲を選んだ決め手は?

そもそもメロディが素敵だったというのがまずあるんですけど、この曲を聴いたときに、パッと情景が浮かんできたというか。例えば「ミュージックビデオを撮るならこんな感じかな?」とか、曲の雰囲気をつかみやすかったというのが最終的な決め手ですね。

──例えば「さよなら観覧車」(2019年2月発売の5thシングル「365×LOVE」カップリング曲)ではデモを聴いて「歌詞のストーリーが思い浮かんだ」とおっしゃっていましたが、それとは違う?(参照:「365×LOVE」インタビュー

ストーリーというよりは、イメージ映像みたいな。例えば海岸を走っていく人の姿とか、水をかけ合って光がキラキラ反射している様子とか、ざっくりした絵面が浮かんできて。そういうシーンを想像しやすいということは、たぶん歌いやすさにもつながってくると思ったんです。

──作詞は宮嶋淳子さんで、今言った「さよなら観覧車」のほか、「スマッシュ・ドロップ」(2019年5月発売の6thシングル表題曲)と「彩色硝子」を手がけてきた方ですね。「彩色硝子」では「麻倉ももにとって“幸せ”とは?」というアンケートが歌詞のベースになっていましたが(参照:「彩色硝子」インタビュー)、今回は宮嶋さんと何かやりとりはあったんですか?

「わいわい楽しい夏!」みたいなコンセプトだけお伝えしたんですけど、宮嶋さんにはずっとお世話になっていますし、いいものを書いてくださることもわかっていたので、ほぼお任せでした。

──そうでしたか。「シュワワ!」は麻倉さんが普段よく歌っているようなラブソングではないので……。

あ! それは確かにお伝えしました。そうだそうだ。私はいつも恋の歌を歌っているし今回もそういう要素があってもいいけれど、それはあくまで1つの要素で、軸足はハッピーな夏の日々を送っている女の子そのものに置いていただきたくて。私がこの曲から受け取った一番大きなイメージは、夏が本当に楽しみなワクワク感みたいなものだったので、それを歌でも描きたかったんです。

憧れを持って、主人公を演じられたんじゃないかな

──「シュワワ!」というタイトルは炭酸飲料を表す擬音ですよね。麻倉さんだったらハイボールかなと思いましたが、歌詞には「ピーチスカッシュ」と書いてあって。

うん、私ならハイボールですね(笑)。でも、たぶん「シュワワ!」の主人公はまだお酒を飲めない年頃で、私も高校生ぐらいの女の子をイメージして歌いました。歌詞に関して言えば、2番Bメロの「ムリに冷やせば 逆にほてって困るんだよ?」の、特に「?」にこの子のかわいさがすごく出ているなって思います。あとサビの「シュワリシュワリ」も、日常生活で使ったことがない言葉なんですけど、声に出して言ってみるとけっこう気持ちよくて。「ここ、いいな」と思いながら歌っていましたね。

──ハイボールとピーチスカッシュの時点でそこそこ隔たりがありますが、麻倉さんと「シュワワ!」の主人公に共通点があるとすれば?

うわあ……なんだろう?

──「うわあ……」って(笑)。

いや、あまりにも自分とは違っていて(笑)。「サンダルも脱ぎ捨てて みんな、いくよ!!」とか、周りの人を巻き込んでいくようなことは私には絶対に無理ですね。そもそも私が歌う曲の主人公に対して、自分との共通点を見つけたり共感したりすることがそんなにないんですよ。でも、だからこそ自分にはないかわいさだったり、自分の憧れだったりを歌にできるんじゃないかなって。

──「曲の主人公を演じる」というのが麻倉さんのスタイルなので、むしろ自分とはかけ離れたタイプのほうが面白かったりするのかも。

うんうん。それはあるかもしれません。

──「シュワワ!」は高校生をイメージして歌ったとのことですが、楽曲のコンセプト通りひたすら楽しげで、清々しいボーカルですね。

ずっと声を張っていなきゃいけなかったり、音域的にもわりと高いところにい続けなきゃいけなかったり、技術的に大変な部分はあったんですけど、基本的に細かいことはあんまり気にしなくていい曲だと思ったんですよ。「ここはこういうニュアンスで」みたいなことは考えずに、気持ちのままに歌うのがきっと正解なんだろうなって。だからレコーディング前のスタッフさんとの話し合いとかもあんまりせずに「とりあえずやってみよう! 楽しく歌うのが一番だよね!」ぐらいのテンションで録り始めたんですけど、結果、ちゃんと正解を出せたと思います。

──引っ張りますけど、夏が嫌いな人の歌声とは思えません。

それは、喜んでいいんですかね(笑)。

──夏のいいところ、何かないですかね。アイスが食べられる? いや、アイスは冬でも売っているし、むしろ冬のほうが……。

そうなんですよ! もう、こたつアイスが最高で。夏は、なんだろう? スイカを食べられるとか? それぐらいだから、本当にいいところがない。

──いいところがない(笑)。

逆に、私が一番好きな季節は秋なんですよ。それは過ごしやすい季節だからというのももちろんあるんですけど、夏が終わってから来る、夏までが一番遠い季節だからというのもあって。だからこそ、夏のいいところをいっぱい知っている「シュワワ!」の主人公を、憧れを持って演じられたんじゃないかな(笑)。