ナタリー PowerPush - the ARROWS

穏やかで美しい10曲が示す5人の新たな世界観

オオヤユウスケ(Polaris/ohana)が、プロデューサーという立場から「アロイ」とアロウズを語る。彼から見た現在の5人の姿とは……?

「自分たちって何なんだろう」みたいなものを

——オオヤさんがアロウズのメンバーと最初に知り合ったのはいつ頃ですか?

オオヤ 僕が自分のバンドのツアーで名古屋に行ったとき、打ち上げで連れて行ってもらったバーのバーテンが竜二だったんですよ。そこで知り合ったのが最初で、あとは名古屋に行くたびに一緒に飲んだり、家に遊びに行くようになって。ミュージシャン同士なんだけど、最初は完全に普通の友達づきあいでしたね。ちゃんと音楽の話をゆっくりできるようになったのは、それこそ去年ぐらいからなんじゃないかな。

——なるほど。その間にも音源を聴いたり、ライブを観たりはしてたんですよね。

オオヤ そうですね。最初は「なんか変なバンドだな」っていう印象で(笑)。今まで聴いたことのない、明るく混沌としているような音楽で、自分だったら作れないなと思っていたので「何考えて作ってるんだろう」みたいな興味はありましたね。

——いちばん最初にプロデュースを手がけたのは、去年のミニアルバムのときですか。

オオヤ はい。前々から何か一緒にやろうっていう話はもらっていて、こちらも楽しみにしてたんで「ついに来た!」って感じでしたね。そのときはカルテットのラップパートが入った、彼ら単独とはまた違ったナンバーだったので、純粋なアロウズの音楽をいつかやりたいなあっていう話をしてました。

——実際にオオヤさんがアルバム1枚をまるまるプロデュースすることが決まったとき、もう方向性みたいなものは見えていましたか?

オオヤ 彼らの作品って、毎回毎回そのとき考えていることが自然とアウトプットされているようなものが多かったんですよ。でもメンバーと話をしていると「自分たちがやってきたことを一度整理してみたい」って考えていることがわかってきて、「自分たちって何なんだろう」みたいなものをレコーディングしながら作っていけたら面白いんじゃないか、って考えて。それでこういう作品になっていきましたね。

オオヤユウスケ 写真

30歳過ぎの男子5人組と向き合わなきゃいけない

——今回オオヤさんからはメンバーに対して、特に竜二さんに対して「オオヤさん縛り」があったって聞いたんですけども(笑)。

オオヤ ちょっと言いましたね(笑)。例えばレコーディング中に新しい曲ができた場合、今まで作って練って消化してきた曲よりもそっちのほうがよく見えるんで、「アルバムに新しい曲を入れよう」みたいな話になっちゃったりするんです。でも新曲ができたならそれは次の作品に入れればいいんじゃないか、今あるものをしっかり考えましょう、みたいな方向にはしましたね。

——収録曲を10曲にするというのもオオヤさんからの提案で。

オオヤ 10曲という数自体はたまたま言ったものなんですけど。今回のアルバムの雰囲気から言うと、たくさん収録しておなかいっぱいにしてしまうよりも、1曲1曲を大事にしてそれぞれを楽しめるようにしたかったんですね。10曲通して聴いて、その後余韻に浸ってぼんやりするぐらいがちょうどいいんじゃないかなって。

——その甲斐あって、最初の「ABCD」からラストの「15years」まで、10曲で1曲みたいな世界観ができましたよね。それぞれの曲に対する思い入れはいかがですか?

オオヤ どの曲も思い入れあるんですけど、特に「夜明けのRhapsody」と「15years」は、このアルバムを象徴してる曲じゃないかと思いますね。ラブソングとはまた違った形でキュンとさせるというか……。最初はテーマがかぶるから歌詞を変えようか、って話もあったんですけど、今のアロウズが大事にしている5人のバンドらしさみたいなものを表現するには欠かせない曲だったので。

——バンドの仲間意識が伝わってくるアルバムなんですよね。

オオヤ ね。なかなかそういうのって曲にしづらいんですけども。

——その仲間意識の強いバンドにプロデューサーとして関わるのは、どんな感じだったんでしょうか。

オオヤ 彼らの結束って本当にすごくて、阿吽の呼吸なんかも完璧なんですよ。だから最初はそんなバンドに、それも30歳過ぎの男子5人組と向き合わなきゃいけないっていう点で「大丈夫かなあ」って思ってました(笑)。だから、最初はそれぞれがどういう風に音を作ってるのかなっていうのを、ずっと観察するようにしてました。プリプロの中でそのへんの感じがわかってきたので、レコーディングのときにはちゃんと仲間に入れたと思います(笑)。

——アルバムが完成して、オオヤさんから見たアロウズはどのように変化しましたか?

オオヤ 実際、音楽的にすごくタフになったんじゃないかなと思います。やっぱりドラムがサポートだったっていうのはバンドにとって大変な部分だったはずなんですけど、リズム隊が固定されてしっかりしてきましたね。あと、彼らがそれぞれの曲をきっちり向き合って作れていたのは大きな成果でした。今後はどんな曲をやっても、アッパーな曲でもアコースティックな曲でも、ちゃんとアロウズの音楽になるんじゃないかって感じています。

ニューアルバム『アロイ』 / 2009年2月18日発売 / 2520円(税込) / PCCA-2855 / PONY CANYON

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CD収録曲
  1. ABCD
  2. 夜明けのRhapsody
  3. すきなひと
  4. W.O.O.D.P.E.C.K.E.R
  5. からだのV
  6. 女の謎
  7. 灯 [tou]
  8. 繋がりながら僕らは
  9. 君と幾年
  10. 15 years
LIVE INFOMATION
the ARROWS presents アルバム発売記念ライブ「アロい四感」
アロい四感~予感A
2009/02/16(月)下北沢CLUB Que
出演:the ARROWS/POMERANIANS
OPEN 18:30 / START 19:00
アロい四感~予感B
2009/02/17(火)下北沢CLUB Que
出演:the ARROWS/LEO今井
OPEN 18:30 / START 19:00
アロい四感~予感C
2009/02/23(月)名古屋TOKUZO
出演:the ARROWS/アナログフィッシュ
ゲスト:オオヤユウスケ
OPEN 18:00 / START 19:00
アロい四感~予感D
2009/02/25(水)名古屋TOKUZO
出演:the ARROWS/セカイイチ
ゲスト:オオヤユウスケ
OPEN 18:00 / START 19:00
前売り ¥2,800(D代別)
当日 ¥3,300(D代別)
the ARROWS(あろうず)

1999年名古屋で結成。インディーズで発表した3枚のアルバムが話題を集め、2006年にポニーキャニオンよりシングル「ナイトコール」でメジャーデビューを果たす。ポップさとノスタルジーを合わせ持つメロディライン、ダンサブルなグルーヴで注目を浴び、精力的なライブ活動や全国各地の夏フェス・イベントでの活躍を通じて人気を獲得。2007年に発表したフルアルバム「GUIDANCE FOR LOVERS」では“踊れて泣けるロックバンド”としての集大成を提示した。2008年、結成当初のメンバーだった鵜飼孝治(Dr)が復活再加入。バンドとしての結束をますます固いものにし、ダンスチューンにとどまらない幅広い音楽性を開拓し続けている。