音楽ナタリー Power Push - 荒井岳史×三浦康嗣×村田シゲ×一瀬正和
バンドみたいなソロ第2作「プリテンダー」
誰がやってるかが大事
──「プリテンダー」というタイトルについては?
荒井 そのままの意味というか、「偽物」とか「フリをする人」ということですね。ソロアルバムですけど、自分の個性だけではない部分もけっこうあるので。
三浦 等身大だけではないってことだよね。
荒井 そうそう。“演者”って言うくらいだから、音楽をやる人は何かになってるのかなって。
三浦 「その人の人間性、ソウルが曲に出ているのが正しい音楽」みたいな風潮があるけど、長い音楽の歴史の中で見ればそれは一時期の流行りに過ぎないですからね。
荒井 俺は、「これが俺のリアルだ」なんてとてもじゃないけど言えないですね。曲の中にどういう思いがあるかというより、“誰がやっているか”のほうが実は大事だと思うんですよ。今回のアルバムもメンバーが違ってたらこういう感じになってなかっただろうし。
三浦 そういう意味では、なんとなくバンドっぽい雰囲気があったのかもね。ソロなんだけどバンドっていう。
一瀬 でも、これは俺の印象だけど、やっぱり三浦康嗣エッセンスは常にあるよ。
三浦 あ、そう?
一瀬 うん。□□□ってブッ飛んでるところとしっとりしているところがあるけど、このアルバムにも終始、しっとりした大人の感じがあるから。(三浦が)スタジオとエンジニアをチョイスした時点で、そういうことだったんじゃないの?
三浦 あ、そうかもね。そこも含めて「誰がやってるか」っていうことなのかも。
村田 荒井自身も人間ありきでやってる感じがあるからね。
三浦 人事の荒井ね。
村田 そうそう(笑)。今回のアルバムは割合でいうと荒井が40、三浦が30、うちら2人(村田、一瀬)が15、15くらいのパーセンテージでできてるというか。
荒井 うん、それは俺も思った。
三浦 益子さんも20くらいだよ。
荒井 じゃあ、120だね(笑)。
村田 普通、サポートの書いた曲が採用されることはないと思うんですよ。塾長もレコーディングの過程で「こうしたら?」っていろいろ提案してたけど、ほかの現場だったらそこまで言わないだろうし。
一瀬 言わないね。
村田 それは荒井が設定した下地が「好きにやって」ということだからだと思うんです。大船に乗せてもらって、そこでキャッキャッ言いながらやらせてもらったというか。レコーディング、めちゃくちゃ楽しかったですから。
三浦 うん、楽しかった。
村田 このバイブスはライブを観てもらえればわかると思いますね。すごいですから、ライブ。
一瀬 前回のツアーのときから、すでにこういう雰囲気だったよね。
村田 三浦なんて、寿司食いながらライブやってましたからね。YEN TOWN BANDだったら許されないでしょ?(村田はYEN TOWN BANDのライブにサポートとして参加している)
荒井 俺だって許してないからね?(笑)
──なんの話ですか?
三浦 北海道のライブのとき、鍵盤の前に寿司が置いてあったんですよ。ドラマーがサビに入る前にスティックを回すような感じで、キメのフレーズを弾いたあとに寿司を食うっていうのをやってて(笑)。
荒井 あれはね、(北海道に住んでる)村田のお母さんが持ってきてくれた寿司なんです。だから仕方ないかなって。
──どんだけ自由なんですか(笑)。「プリテンダー」のツアーもすごいことになりそうですね。
村田 バイブスはより強く出てくるんじゃないですか。
荒井 うん。アルバムの曲も何回かライブでやってるんですけど、すごくいい感じなんで。
一瀬 このアルバムを引っさげたツアーが楽しくならないわけがない!
荒井 「いいライブができてる」って手応えもあるし、もっとイケるだろうっていう可能性も感じてますからね。
──荒井さんのソロワークも続いていきそうですか?
荒井 許されるならやりたいですね。今はソロとしてもいいカタチでできているし、やっていて楽しいので。バンドではできないことをもっとやりたいし、広がりのある活動ができたらいいなと思ってます。
収録曲
- あの夏のイリュージョン
- サヨナラを君に言う
- ダンス・ウィズ・ザ・ワールド
- 玉手箱
- TMKN
- 花火
- 23:55~あきらめの街~
- あきらめの街抜けて
- 虹
- ワンモアタイム
- 荒井岳史 2nd full album”プリテンダー”release TOUR
- 2016年4月17日(日)宮城県 PARK SQUARE
- 2016年4月20日(水)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2016年5月3日(火・祝)広島県 福山Cable
- 2016年5月5日(木・祝)福岡県 Queblick
- 2016年5月7日(土)香川県 高松TOONICE
- 2016年5月12日(木)東京都 新代田FEVER
- 2016年6月5日(日)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
荒井岳史(アライタケシ)
1978年生まれ。1998年よりthe band apartのギターボーカルとして活動。伸びやかで甘いボーカルと、卓越したギタープレイで多くのリスナーを魅了する。バンド活動と並行して、2013年8月に初のソロ作品「sparklers」、2014年6月に初のソロフルアルバム「beside」を発表。2016年2月に三浦康嗣(□□□)をプロデューサーに迎えて2ndアルバム「プリテンダー」をリリース。
- 荒井岳史 Official Website
- 荒井岳史 official (@arai_takeshi_) | Twitter
- ASIAN GOTHIC LABEL -The band apart-
- the band apartの記事まとめ
三浦康嗣(ミウラコウシ)
1998年に自身が中心となり□□□を結成。歌モノ、ヒップホップ、ソウル、ハウス、テクノ、ジャズなどあらゆる音楽を取り入れた楽曲を発表し、音楽シーンの中で独自のスタンスを築き上げる。アレンジャー、プロデューサーとしても活躍しており、2014年3月に自身の作品をまとめた作品集「WORK」を発表した。
村田シゲ(ムラタシゲ)
三浦康嗣といとうせいこうとのユニット・□□□(クチロロ)や松田岳二率いるCUBISMO GRAFICO FIVE、自身がリーダーを務めるCircle Darkoで活躍する一方、FRONTIER BACKYARD、フルカワユタカ、LOW IQ 01といった多数のアーティストのサポートベーシストも務める。またUSTREAM番組「熊枠」ではVJを担当している。
一瀬正和(イチセマサカズ)
popcatcher解散後、2002年に渡邊忍、山下潤一郎とともにASPARAGUSを結成し、ライブをメインに活動を展開。細美武士を中心に結成されたthe HIATUSおよびMONOEYESのドラマーとしても活躍。また神奈川・横浜でスタジオを経営しているほか、ドラムセミナーも開催している。